幸せになりたいんです。
今日は、20歳の誕生日の2日前。
私は、目の不自由な12歳の妹と、買い物をして家まで歩いていた。
信号は確かに青だった。
しっかりとこの目で見た。
それを確認してから、妹の手を引き、進んだ。
だが、進むと周りの人達の大きな悲鳴が聞こえた。
その1秒後、
本当に一瞬の出来事だった。
私は、大量の血を流して横断歩道のど真ん中で横たわっていた。
痛みも何も感じない。何も聞こえない。
ただ、1台の車が猛スピードで過ぎ去っていった事が朦朧とした意識の中でわかった。
最後の瞬間。最後の瞬間だけは、せめて妹の顔を見たかった。
私のせいで妹は怪我をしていないか、妹は泣いていないか、パニックに陥っていないか。それを知りたかった。
だが、その前に力つき、そのまま意識を失った、
パッと目が覚めた。
そこは一面真っ白な空間だった。
ここはどこかは分からないが、なぜか自分が死んだという事はわかった。
何も考えずにただただ歩いた。
すると目の前に1人の男が立ってた。
すらっと脚の長い長身の男性だった。
顔立ちもカッコいいというより美しいに近い。綺麗な人だった。
その人に話しかけるわけでもなく、ただじっと顔を見つめていた。
19年間生きてきた中でこんなに綺麗な男性は初めてだった。
もう死んでるんだけども。
すると痺れを切らし向こうから、
「いつまで黙って突っ立ってるんだ。」
その声にハッとして、急いで返事をした。
「あ、、えっ!はい!」
やれやれと呆れながらまその人は、何かの紙を見ながら、口を開いた。
「石橋 加奈。19歳。両親は離婚し、酒浸りで働かない母親の代わりに高校にも通わず、働き、目の不自由な妹と母親を養ってきた。」
「!?!?何で!私の個人情報っ、!」
その人は構わず紙を見続けながら、
「……お前。ろくな人生歩んで来なかったんだな。友達も居ないなんてな。しかも、」
バッと、その人はいきなり私の服の袖を捲ってきた。
「ちょっと!!何すんの。」
「母親の彼氏から暴力か……。」
「……何でそんなことまで。あんた誰なの?」
「神様だよ。神」
「………はぁ。そうですか。」
「信じてない返事だな、。じゃあ証明してやるよ。」
「どうやって?」
「お前に人生をやり直すチャンスをやる。」
「え!!!本当に?どうゆう事?」
「そのまんまさ。地上に残った妹が心配だろ。」
「うん!!いや、はい!!心配です。お願いします。」
「いいだろう地上に戻してやる。
ただし、石橋 加奈としてじゃない。」
「……どういう、」
「他人の人生を奪うチャンスを与えてやる。」
「………はい?」
「一度で理解しろ。二度も言わせるな。」
「……ちょっと待って。私は完全に死んだことなってて、他人の体に入るみたいな??」
「……なんだ、意外に理解能力があるじゃないか。」
「じゃあ!じゃあその人は?その人はどうなるの?」
「体っていうのは1つの魂しか入れない。お前の魂が誰かの体に入れば、元の魂は、行き場がなくなって石橋 加奈の体に入る。」
「それって、私の、、代わりに死んでもらうって事?」
「そう。」
平然と男は答えた。
その姿に腹が立った。
「………何言ってんの?そんな事出来るわけないでしょ??人殺しのようなものじゃない!何の罪もない人の命を奪うなんて。」
男は、顔色ひとつ変えずに静かに言った
「……罪があるやつなんて地上には五万といる。」
「それはそうだけど……でもだからって!」
「お前は憎くないのか?」
「え?」
「お前を轢き殺した奴が。」
「あっ……」
今の今まで、自分が轢き殺された事を忘れていた。
「お前が何も知らなさすぎる。」
「……どういうこと?」
「地上では、もう時が過ぎている。」
「どれくらい?」
「2週間だ。」
「え!?そんなに?私何してたの?」
「人は死ぬと過去の幸せだった記憶の中に入るんだ。人によって長さは違う。長い奴は、地上の時で言うと10年以上記憶の中にいることがある。
お前は、幸せな記憶が少なかったから、俺の知る限り最短で出てきたよ。」
「……幸せな記憶か。」
逆に2週間もあった事に驚いていた。
幼少期の頃は、自分は幸せだったのかな?
幸せって、いつの事なんだろう。
そんな風に考えていると男は続けた。
「……2週間の間、犯人は捕まり、刑務所に入って、事件は収集した。」
「……そっか。よかった。」
「……いいわけないさ。これは世の中の大半の奴は知らない事だが、お前を轢いた犯人は他にいる。」
「……え?」
「お前を轢いた車に乗っていたのは、大企業の会長の娘だったんだよ。」
「………」
「金で揉み消されたんだ。」
「………」
「やっぱり、人生ってのはさ金なんだろうな。それが全てだ。愛だのなんだの言う奴がいるが、そんなの綺麗事さ、」
「………」
驚きで何も発することが出来ない。
そしてそいつは続けた、
「……あの事故でお前の妹も大怪我をした。今も意識がない。」
「なっ……ほんと、に?」
「ああ。そうさ。お前ら姉妹は何でここまで不幸なんだろうな。」
「……なんっで、」
怒り。だけじゃない。自分が哀れすぎて涙が溢れてきた。
私だけじゃなくて妹まで、何で。何でこんな辛い思いをしなくちゃならないの?
「……お前ら姉妹がどんなに不幸でも、あいつらは、今も善人づらして表舞台に立って、金儲けして、毎日笑って過ごしてるよ。」
「………」
「……どうする??他人の人生で人生やり直してみたら??」