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誰がために僕は希う。  作者: 蓮見いち
第1幕
15/16

014 不恰好な一撃

以前投稿した14話ですが、今後の展開を踏まえほぼ新規での描き直しとなりました。そのため、こちらに差し替えとなります。読んでいただいた皆様、ありがとうございました。

それは一滴の冷水を、首筋に垂らされたかのように。唐突に、急速に、確かな怖気となって僕の身体を硬らせた。


超常の現象。守りたい存在。がむしゃらに、ただ目の前のことだけを見て、文字通り死に物狂いで走り続けた。泥臭く「生きる」ということをただ続けるためだけに。最初は思いの外余裕があるように感じていた。年甲斐もなくわくわくと心躍らせたことも事実だ。けれど時をおかずして命懸けの状況が頻発して、知らずそんな気持ちは霧散していた。

そもそも、だ。意識してそうしていたわけではないのだ。冷静になって思い返せば、寂しかったのだろう。怖かったのだろう。空元気と言ってもいい。何もわからず、アテもなく。ただ状況が考える暇を与えてくれなかっただけだ。


だが今はその時間がある。できてしまった、という方が正確なのかもしれない。まるで0時の鐘を聞いた灰被り姫の心境だ。

「はは…」

魔法は解けた。この世界で初めて庇護を受けてしまったから。張り詰めていた精神の糸がぷっつりと切れてしまい、うまく力が入らない。


そう、僕は僕だ。何か特別な力があるわけでも、飛び抜けた才能がある訳でもない。どこまでも、僕でしかないのだーー…。


ーーーーー


「ふっ、ふっ、ふっ」

パウルとの打ち合いを終え、少し道程を進めた後。あたりは早々に暗くなった。こんな中で進むべきではないとキャンプを設営することになってから数時間は経過しただろうか。一通り食事も済ませ、見張りの一番手に名乗りを上げて今に至る。内心では見張り半分、思考逃避半分といった塩梅だったがーー。


既に皆眠りにつき、聞こえるのはピークを超え穏やかにパチリパチリと弾ける焚き火の音と、風に揺られる葉擦れの音だけだ。流石に3人の寝息までは聞き取れない距離だった。しかし、そんな微かな音でさえ耳障りなのだと言わんばかりに、カツキが握る剣からは乱雑な風切り音が奔っている。それはかつてカツキが1人で繰り返していた丁寧な数回とは似ても似つかない。振るたびに音が変わり、切先は歪な軌跡を描くーーそんな棒振りの繰り返しだ。


つい数時間ほど前に、意気込んで臨んだパウルとの初訓練。だがそんな出鼻を挫くかのように、パウルはあっさりと打ち切りを宣言した。ーーなぜ止めたのか、その理由に至るまでは実践を禁じるというおまけ付きで。

(くそ…っ、時間を無駄にしたくないから教えを乞うことにしたってのにーー…!!)

ある程度訓練を重ねた上で、こうした振り返りの時間を設けられるのであれば納得もいく。だが、まだ始まったばかり…いや、始まってすらいなかった。これでは解決のためのとっかかりすら掴めない。まして、旅は続くのだ。いきなりこのような事態になってしまったからこそ、他ならないパウル自身と密に過ごさざるを得ないこの状況に酷く居心地の悪さを感じていることが一番問題だった。

(わかってる。僕はまだまだひよっこだ。でも、だからこそ早く戦い方を覚えなければならないのに…っ!!)

そんな行き場のない感情が頭の中で渦巻いていた。だが、夢中で剣を振ったことで得られた疲労感のおかげか、それとも原因であるパウルが寝付いたためか。徐々に思考が落ち着き始めていた。

(いや、違う。教えを乞うと決めた。見捨てられたわけでもない。)

気づけば剣を降ろし、足元をぼんやりと眺めていた。

「今やるべきことは、おっさんを信じて自分のことを見つめ直すことか…」

強く瞼を閉じ、拳を握りしめてようやく剣を下ろす。悪いのはあくまで僕だ。きっと、彼の中にある“戦士”というものの前提とする何かが僕には足りないのだろう。

(わからない…。それを理解するためにも、訓練だけはさせて欲しいんだけどな…。)

闇雲に剣を振ったせいか、呼吸は乱れ汗が吹き出していた。腕の筋肉もパンパンに張り詰めており、何もかもが億劫であると同時に、どこかしらで安心感を感じている部分もあるのだからタチが悪い。目に垂れてくる汗を拭うのが面倒臭い。そう思いながらぼんやりと空を見上げてみれば、眩しいほどに星々が輝いている。気ままに輝くだけのそんなものが、嫌にギラついて映るのは何故だろうか。

(知ってる星座なんてないんだろうな)

元の星座にそこまで詳しくないため、そもそも比較するには有名という言葉では片付かないレベルの星座が現れる時期でないと意味がないのだが、そんなことはどうでもいい。すぐに目を離し、意識は再び手元の剣へ。


「よし、もう少しだけーー…」


それは不幸中の幸いだった。

おびただしく煌めく星々の光を踏んだんに吸い込み、それでもようやく鈍く光る程度のその刀身。その僅かな反射の中で()()()()()()のだ。


「…ッッ!!」


それは恐怖心に突き動かされた反射的な動きだった。咄嗟に剣を後ろに振り抜く。

「…ッ!?」

敵も気づかれているとは思わなかったのだろう。刃が敵を撫でることこそなかったものの、咄嗟の回避に音を立てた。

(いる…っ!)

しかしその音は敵の存在を僕に確信させると同時に、敵()が穏便に事を済ませることを放棄する開戦の合図となってしまう。

ガサガサガサーー…!!

存在を隠すことは諦めた一方で、正確な位置を掴ませるほど甘い連中ではないらしい。周囲の草木が忙しなく擦れ出す一方で、決してその気配を掴ませない。

(多分、少なくとも2、3人はいるーー…!!)

だが、わからない。いるはずなのにいない。そんな気持ちの悪い状況に吐き気が込み上げてくる。

剣を構え、忙しなく眼球を左右に動かして警戒する。しかしこの行動に一体どれだけの意味があるのか。瞬きするだけで次の瞬間には死んでしまいそうな恐怖にハァ、ハァと息が上がり、呼吸をしても思うように酸素が入って来ない。加えていえば、自らの心臓がまるで耳元に添えられているかのように、鼓動の音がうるさかった。

(まだか?まだかーー…!!?)

今にも緊張がピークに達するかと思われたその刹那。右斜め後ろから、一際大きな音がした。

ガサッ!

「…うっ!!?」

それはもうただがむしゃらに、音に反応しただけの行為だ。ガキィン、と硬質な音を立てた剣はその刃先を数センチ地面に食い込ませているだけだ。


(いない…っ!!?)


はっとして後ろを振り向くが、首の動きはあまりにも遅い。眼球だけが滑るように先行し、視界の端でその影を捉えた。それはまるで死刑宣告のようだった。決して間に合うはずのない凶刃の到来をまざまざと見せつけるかのような、そんな拷問に近い引き伸ばされた一瞬の出来事。いるーー…間違いなくそこに敵はいた。しかも3人まとめて襲いかかって来ていた。しかしそれが解ったところでどうにもならない。すでに動き出しているこの身体はあまりにも緩慢だ。眼、首、肩ーー下半身にかけて、部位を跨ぐごとに稼働速度が急激に落ちているように感じるほどに。剣を握るその腕が、そしてその先にあるその刃が。目的の場所に到達するのは、一体どれほど先の話になるのだろうか。


あぁ、と思わず笑いが溢れてしまう。スローモーションで流れる時間の中で、腕の重さを後悔したからだ。それが無闇に剣を振るいなんの意味もない自己満足のために、今この瞬間真に剣を必要とする場面で、防げたかもしれない一撃の可能性を潰してしまっていたことに気づいたから。なんと愚かなことだろうと自嘲するくらいの本当に僅かな時間だけが、僕の余命だった。

「ほんと、無駄遣いだーー…」


浸り浸りと確実に迫る死の眼前で、辛うじて首だけが回転を終え、死神の代行者たる敵3人を視界に捕らえることに成功した。どうやら賊のそれぞれが閃かせる短剣が、頭蓋、首、心臓と悉く急所を狙って来ているようだ。

(あぁ、せめて、即死だったらなぁー…)

首一つ動かすのが限界のこの状況で、どうにか避けられて頭蓋の一撃だ。首と心臓は守れない。ならせめて苦しみがありませんように…。そんなささやかな願いを捧げてみれば、ぴちゃりと温かいものが頬にかかる。

(雨ーー…?)

しかしそれが思い違いであることに気づくのもまた瞬刻のことだった。


「ったくよォ、だから実践はすんなっつっただろうが」


そう、死神はもっと理不尽な存在によってその命を刈り取られていたのだった。文字通り、横一線に。泣き別れた半身は計6つ。すっかり倍の数に膨れ上がった死神達は、もっと手酷い()()の化身によって苦痛を味わう間もなくその命を散らしていた。

「…ーーは?」

先ほどまで身体中を針のように刺していた緊迫感が霧散して、まるで萎んでいく風船のように穿たれた穴から力が抜けていく。しかしパウルは鋭く周囲を睨め付けると、僕を覆うようにして位置取りを整える。

「チィッ!」

その巨木のような両足が再び地面を踏みしめると同時、ガッ、キンッと飛来する何かを大剣で弾く。

(まだいたのか!?)

「しゃらくせぇんだよッッ!!」

パウルは一瞬で藪の中に突っ込んでいき、ほぼ同時に悲鳴が響き渡り始めた。パウルはその動物的な感覚で正確に敵の位置を捉えているようで、右かと思えば左、左かと思えば正面と、ものすごい移動速度で敵を屠っている。

(こいつら一体なんだったんだ…?)

へたり、と腰を抜かして深呼吸すれば、ゆっくりと頭が回転しだす。ようやく終わった緊張に身体はすっかり弛緩して動かない。

「というかこれだけ騒がしい中でウィズとディディはよく寝れるな」

絶対的な安心感のまま、逆立った心を立て直すために冗談めかしててそう呟き、ふとテントの方を見て驚愕する。

「…っ!?」

まだ安心などできなかった。パウルがどれだけ強かろうが、その身体は一つだけなのだから。ーーそう、そこには今まさに、テントに忍び寄ろうとしている賊がいたのだ。

「く、、っそ!!」

パウルは残党に対処している最中だ。今度こそワイルドカードは存在しない。火事場の馬鹿力か、無理矢理身体を起こしてフラつきながらも立ち上がった。剣は振り上げるのも難しい状態ではあったが、腰で柄を支えるようにして勢いのままに突進を敢行するー…!!

「ああああああああ!!!!!」

気合一閃。獲物はこちらだとあえて主張するようにして、裂帛の叫びとともに決死の一撃を敢行するーー!!

「…っ!!?」

ギィンッ、とあたりに甲高い音が響き渡った。敵がほんの少し、意識の比重をテントに傾けていたおかげで辛うじて不意をつけたらしい。不自然な姿勢では、短剣でいなし切るのは難しかったのだろう。その手から短剣を取りこぼし、僕の剣先が勢いのままに賊の腹部に向かって行った。


「ーーッ!!」


しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

(ハッ、ハッ、ハッ!!)

剣を持つ手が震え、脂汗が噴き出てくる。心なしか、口の中が酸っぱいと感じた。

「…ごっこ遊びのガキめ、いや、今は感謝しなくてはな」

そのためらいが致命的となった。敵の僅かな意識の傾きによって辛うじてもたらされたアドバンテージは、一瞬のうちに覆された。賊は的確にこの隙をつき、僕は腹部を蹴りとばされた。数メートル飛ばされた先で、その苦痛に思わずえづく。込み上げる胃酸を抑え込みつつ目線だけは外さない様に耐えるが、予想に反して賊は追撃ではなくおもむろに懐に手を入れ始めた。

(ペンダントーー…いや、ロザリオみたいなものか??)

取り出されたのは銀に輝く派手な首飾りだった。彼はそのまま、およそ盗賊の類が身につけるにはふさわしくない装飾具を丁寧に手で包み込み、祈る様に叫び出す。


「 神イマトルスの恩寵よ、我が信仰に応え、求めに応じ、その救済の形を示し給えッッ!!」


(なんだ?詠唱なのか?魔法ーー…とは違う?)

まるで誓願のような叫びと同時、賊の身体からは魔力が噴き出し、それらが彼の手元に収束し始めた。魔法は詠唱の後に現象を具現化するものだと理解している。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。実際、ディディと魔法を使う時にも、ウィズが魔法を使う際にも、発動前に似たようなタメはあっても魔力そのものが蠢く様など見たことがない。

「お前、一体何をしようとしてるんだ!!」

「くひゃひゃひゃひゃ!!」

賊は狂った様に下卑た笑い声を上げると、ついに魔力の靄が晴れ、賊の右手に誓願の結果が具現化する。

「感謝しろ、クソガキ。お前はこれより救われるのだ。我らが神の御意志により、その命を世界のために捧げることができるのだから」

その手に現れたのは大鎌だった。正しく人の命を刈り取るための凶悪なフォルム。しかし神の御意志とはよく言ったもので、あくまでその意匠は金銀に輝く神々しいものが施されていた。あまりにちぐはぐなその有り様が、歪な信仰を形作っているようで嫌悪感が湧き上がる。

「付き合ってられるかよ…っ、盲信者の類はどこの世界でも変わんねぇな…!!」

思わず言い返せば賊はピクリと反応を示し、次の瞬間こちらに突っ込んできた。よほど敬虔な信徒だったのだろう。逆鱗に触れた竜の如き憤怒を迸らせて突貫をかけてきた。

「死ね、クソがキィィィイイ!!!」

多少なりとも休めたお陰で、辛うじて立ち上がることができた足を早速酷使して踏ん張り耐える。

(刃をまともに受けても切っ先に背後を取られるし、側面を叩こうにも刃が長すぎて滑り抜けてくるし…やりづらいッッ!!)

その変則的な形状は、ただ受けるだけのことが難しかった。鎌の内側に潜り込めば、刃の包容を受ける形になるのもいただけない。

「神の意向を無視して生きながらえることなど、決して許されはしないッッ!大人しくその首を差し出すのだ!!」

「クソ、が…っ!!」

正面から斬りかかられているのに、実際の刃は側面から背面からと立体的に襲いかかってくる。加えて狂信者の放つおぞましい空気感が、少なからず身体を強張らせる。

(どうして躊躇った。あいつは敵だ。しかも、2人を手にかけようとしたクソ野郎だ。それなのに、なんでーー…ッッ!!)

明らかな悪意を持つ敵と、命のやり取りが当たり前に行われているこの世界に来てなお殺しを忌避する自分に苛立ちすら感じ始める。

(パウルが言ってたのは、このことだったのか…っ)

だとしたら納得どころか止められて当たり前だと頭のひとつくらい下げたくなってしまう。殺し合いで相手にとどめを刺せないのなら、それはただの自殺のようなものだ。だが、このままではやられる。やられてしまう。そして、その先に待つのは2人の死だ。僕がこの場を耐え凌ぐだけで、少なくとも2人は救われるのだ。


やれ、やれ、やれーー…っ!!


ふー、ふーと獣のように息を荒げ、両手でしっかりと剣を握りしめる。思い浮かべるのは守りたいと願った2人のことだけ。

(今ここで覚悟を決められなくてどうするって言うんだーー…ッッ!!!)

心でそう叫び叱咤すると同時、地面を爪先で蹴り上げ、賊の顔面を目掛けて土を飛ばす。そして無理矢理覚悟した勢いそのままに、()()()()()()()()こちらから突進していった。

「ガッ!!!」

結果として、運よく賭けは成功した。賊は前のめりに切りかかってきていたことで低姿勢だったこともあり、うまく目潰しに成功したようだ。敵は思わず顔を防ぐような体勢を取ってしまったようだ。

「う、うぁああああああ!!!!」

叫び、半泣きになりながら力任せに剣を振り下ろす。それは僅かにも練習した素振りの型もなければ、安定した剣線を描くでもない。あまりにも不恰好な一撃だった。

「ぎゃあああああ!!!!」

そんな一撃では綺麗に切断することもできなかった。ぷっ、と一瞬だけ張り詰めた皮膚が裂け、直後に血の滑りとぶちぶちと繊維を引き裂くような、刃が肉に侵入する感触が伝わってきた。しかし未熟な一撃は生来人の持つ骨の硬さと反射的な筋組織の収縮によりガッチリと押さえつけられてしまい、これ以上の侵入を許さない。

(ぶぇ…っ)

剣越しに伝わってくる殺しの感触に体の芯から震えが走り、連動して胃からものが逆流してきた。半分吐きながら、その生々しい感覚の全てに半狂乱に陥ってしまう。

「あ、うぁ、うぁあああああ!!!!!」

剣を押し込むことをやめ、一度引き抜きすぐさま振り下ろした。何度も、何度も繰り返した。その光景はまるで鈍器で殴りつけるのと大差なく、急所に届かないことで悪戯に敵の絶命を赦さない。何度も傷口を抉られる痛みと、打ち付けられるたびに揺さぶられる骨越しの苦痛に、しばらくして敵は反応しなくなった。だが、カツキはそれに気づかない。

「ああ!うぁああ!!あああああああ!!!!」

少年は涙と吐瀉物でぐちゃぐちゃになりながら、それでも剣を打ち据える。心は摩耗し、腕ははち切れそうなほど力が込められており、痙攣すら引き起こしているにもかかわらず、だ。


「カツキ君ーー…??」


しかし、そんな獣の産声を上げつつあった少年の中に、すっかり聞き馴染んだ透き通るような声だけが、すぅっと身体に染み渡った。幼い獣はぴたりと腕を止めて、カランと剣は地面に落ちた。

「ぁ…ぅぁ…」

ギリギリと、壊れた人形のように振り向けば、そこにはウィズが立っていた。

「カツキ君…っ!!」

彼女は僕とその眼前に転がる惨状を交互に見て、はっと両手で口元を覆う。その後慌てて僕に駆け寄ると、そのまま僕を抱きしめた。

「ありがとう…ありがとう…っ。それに、嫌なことをさせちゃってごめんね…っ」

彼女の頬から僕の頬へ。涙が滴り、地面を清める。どうして彼女が泣くのだろう。そんなことをぼんやりと考えながら、それでも確かな温もりの中で、少年は“カツキ“を取り戻し始める。しかし心身共に限界を超えていた状態のためか、急速に眠気が襲って来た。

「うぃ…なん…」

「え?」

抗うことのできない強烈な意識の断絶の合間に、けれど確かに存在する目の前の大事なものに微笑を浮かべて、ほんの少しだけ、口が動いた。


「あぁ、まもれた…」


自覚もないままにそう呟き、僕の意識は闇に飲まれたーー。

カツキ君、意識途切れがち。

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