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素晴らしいこの世界の片隅で。

優しい風

作者: ニチニチ
掲載日:2021/10/09

優しい風が吹く。

それは、誰かの優しさを乗せて流れていく。



僕の住んでいる場所の近所に、お弁当屋さんがあった。

土日になると、たまに買いに行っていた。


ボリューム満点で、手作りだから美味しかった。


そこは、いつも結構忙しそうだった。

店の人は、全員がおじいさんとおばあさんだけだった。

だから、出来上がりがすごく遅い。


予約をしないと待たされる。

それは分かっているのだけれど。

店内には、いつも優しい空気が流れていた。


何だかとても心地よい感じがしてて。

物心が付くぐらい昭和を生きてはいないけど。


そこには、確かに過去が存在していた。

少しでも昔に触れていたくて。

いつもいつも、予約をせずに、ただただ待っていた。





そんなステキな居場所。

でも、未曾有のウイルスが世界を覆う。





久しぶりに、お弁当屋さんに足を向けてみた。

そうしたら、いつもの看板が見当たらない。

入り口のガラスに、空き店舗という看板が貼ってあった。





僕は、しばらくその場に佇んだ。

ただただ、待っていた。





けれど、やっぱり店内は空っぽで、誰もいなかった。

たまたま、店の人に遭遇することはなかった。

偶然、常連さんに会うこともなかった。





あの、優しい空気はどこへ行ってしまったのだろう。





それ以来、近くを通るとき、必ず立ち寄ってみる。

ひょっとしたら何かの間違いで、いつも通りになっているんじゃないか。




僕は、待っている。

何も出来ることはないから、ただただ待っている。

限りある時間を垂れ流しながら。




今日も、小さな町に優しい風が吹き抜けていく。

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