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第5-7話 旅路の果てに

 

『!! 2時の方向に陸地が見えるわ!

 大地から虹色の光が……すごく綺麗。 殿下、もしかしてアレが?』


「まちがいない。 ”神の王国”と言われる魔法皇国レヴィンだ」

「私もこの目で見るのは初めてだが」


「や、やっと着いたぁ~~。 おもかじ二点回頭!」


 偵察に出ているセーラからの通信に、満足げに頷くイレーネ殿下。

 緊張から解放されたのか、ぺたんと甲板に座り込み、伊402の艦首をレヴィン皇国の方角に向けるイオニ。


 かくいう僕も、目頭が熱くなるのを抑えることが出来なかった。


 なにしろ……。



 ***  ***


 アビスホールの中心部で”暗黒球”を目撃した直後、ドラゴンの大群に襲われてしまった僕たち。

 半日に及ぶ熾烈な対空戦闘のすえ、命からがら切り抜けることが出来たものの、現在位置を見失ってしまう。


 暗黒球の影響なのか、ダイレクション (方向指示)の魔法も調子が悪く、魔の海のど真ん中で立往生だ。


 セーラと予備の晴嵐弐号機に乗って偵察に出た結果、近くに休息ポイントとなりそうな小島を発見。

 戦闘で負ったダメージの修理も兼ね、しばらくその小島に滞在することに。


 無謀な突撃を敢行したアルバン皇太子にイレーネ殿下が厳重に抗議、相変わらず幼女扱いしてくる皇太子にキレる殿下というハプニングはあったものの、しばらく無人島生活が続いた。


 僕? ひたすら破損個所をコンバージョンしてたので、背中にじんましんが出来たよ。

 ただ、フレッチャーの破損個所の修理とエンジン不調の原因を調べようとしても、なぜかアルバン皇太子が頑なにエンジンルームの奥には入らせてくれなかった。

 なにやら、()()()()()()()()()を使っている部分があるらしく、フィルですらソイツを見たことが無いらしい。


 そんなこんなで1か月後、毎日まめに偵察に出ていたセーラのお陰で脱出ルートが見つかる。


 1週間ほどかけてアビスホールの領域を脱出し、ダイレクションの魔法を使ったところ、なんとびっくり当初のルートより数千キロほど南にずれてしまっていた。


 その後も不規則に現れる魔の海領域を回避したりモンスターの襲撃を撃退したりと、最初の予定を大幅に超過し半年近い時間を掛けて目的地であるレヴィン皇国にたどり着いたのだ。


「ううっ、最後らへんは食料の残りが怪しくなってきたから、配給が2割カットという地獄だったよ……早くお腹いっぱい食べた~い!」


「……おかわり5杯を4杯に制限したのは確かに2割カットだったけども」


「アンタ、長期航海で運動不足なんだからいい加減にしとかないと、マジで太るわよ」

「ふむ……あたしの高精度偵察アイによれば、この1か月で胴回りプラス3、排水量プラス7って所じゃない?」


 ぷにっ!


「がび~ん!! セーラちゃん、何とかなんない!?」


「……レヴィン皇国に着いたらセーラ謹製、極限地獄水練10セットね」


「あっ……やっぱいいです」


「問答無用!」


「ひぃ~っ!!」


 出発前と比較してよりぷにぷにしたイオニと、体重管理は完璧なセーラがじゃれ合うのを微笑ましく眺めている間にも伊402はレヴィン皇国へ近づいてゆく。


 水平線の向こうから巨大な大陸が迫ってくる。

 書物で読んだとおり、大地のあちこちから虹色の光が立ち上り、ここからでも膨大な魔力を感じ取ることが出来る。


 ”マジックマテリアル”という莫大な魔力を帯びたマテリアルの上位結晶が大地に埋まっており、あのような光を発するらしい。


 そして、このレヴィン皇国を統べるのは……。


 レヴィン皇国の首都であるレヴィンの街が近づくにつれ、赤・蒼・黄色、色鮮やかな屋根に彩られたどこかファンシーな建物が目に入ってくる。


 港の波止場には、僕たちを歓迎してくれているのか、数百人の人だかり。

 みんな皇国のシンボルである、純白の法衣を身に着けている。

 彼ら彼女らの身長は高く、とてもスレンダーだ。


 なにより、レヴィン皇国の住民たちを特徴づけているのは、ぴんと先の尖った両耳で……。


「親愛なる西方諸国の方々、大変お久しぶりでございます」

「それに……」


 人だかりの中から、ひときわ背の高い女性が歩み出る。

 純白の法衣からは七色の魔力が湧き上がり、彼女の一挙手一投足が圧倒的な存在感を醸し出す。

 僕たちの国ではもはや伝説的な存在……純血のハイエルフの女王。


「お目に掛かれて恐悦至極に存じます、始祖様」

「太古の昔、御血を分け頂きましたジェント族が一子、イレーネにございます」


 正装に身を固めたイレーネ殿下が、最敬礼の姿勢を取る。


 そうか。 殿下にはハイエルフの血が入っていると言われていた。

 ジェント王国の皇族の系譜をたどると、レヴィン皇国に繋がるのかもしれない。


 荘厳なレヴィン皇国の国歌が演奏される中、僕たちの船は静かに港に入港したのだった。


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