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第5-3話 洋上給油とセーラの疑問

 

「周囲200㎞に敵性反応なし……殿下、大丈夫かと思われます!」


「ふむ……それでは、フィル君への補給を開始してくれたまえ」


「御意っ!」


 電探……電波という魔法波?を使ってはるか遠くまで見通す機械をのぞき込んでいたイオニの報告に合わせ、イレーネ殿下が指示を飛ばす。



 ザザァアアアッ



 艦の外側から海水の流れ落ちる音が聞こえる。

 どうやら海上に浮上したようだ。


「それでは殿下、あたしは直掩に上がります」


「うむ、頼むよセーラ君」


「フェドくんかんちょー! 給油管を伸ばすからもっと魔力ちょうだい!」


「了解!」


 晴嵐に乗り込むため格納庫へ向かうセーラの後を追い、艦の心臓部である発令所から甲板に繋がる昇降筒のはしごを駆けあがりながら返事をする。


「ふっ……よしっ!」


 いつも通り、深呼吸と共に下腹部に力を入れると、キラキラと光る僕の魔力が伊402の艦体を包んでゆく。



 ガコン!



 ハッチを開け、甲板に飛び降りると、目の前のカタパルトから晴嵐参号機がものすごい勢いで撃ち出されていくのが見えた。


「がんばって、セーラ!」


 絹製のマフラーを撒き、かっこつけて人差し指を振るセーラに両手を振り返す。

 給油中は無防備になるため、セーラの晴嵐が上空警護をしてくれるのだ。


「フィルの船は……いたいた」


 風は強いが、波は魔の海にしては比較的穏やかだ。

 大きく上下する波頭の影から、駆逐艦フレッチャーの姿が見えた。


 伊402が先行し、周辺海域を偵察していたのだ。


「”横曳き給油”で行くよっ! フィルちん! 速力5ノットでわたしの横に着けてっ!」


 給油の準備を終えたのか、赤白の手旗を持ってイオニが艦内から飛び出してくる。


 こういう時は専門家に任せるに限る。

 僕は魔力を放出しながら興味深くその様子を観察していたのだが……。


「うはっ!? フィルちんはアメちゃん海軍だから”イロハ”じゃなくてモールス信号で送らなきゃだよね……ってモールスってどうするんだったっけ?」


「ううっ、無線機を取りに行ってたら間に合わないよ~」


 どうやら二本の旗を組み合わせて意思疎通を図ろうとしているみたいだが、イオニとフィルは元の所属が違うからか上手く伝わってないようだ。


 駆逐艦フレッチャーの艦上では、フィルが首をかしげているのが見える。


「……取り込み中のところ悪いけど、あれくらいの距離なら魔法で直接話せるよ?」


「無線機いらずっ!? またフェドくんの反則魔法!」


 見かねた僕は、遠話魔法で彼女たちを手伝うことにしたのだった。



 ***  ***


「まったく……モールスを忘れるなんて。 後で特訓ね」


 ヘッドセットから聞こえてくるフェドとイオニの会話を聞いて苦笑を漏らすセーラ。

 雲量は多いが視界は悪くなく、もんすたーの姿もない。


 上空から見ると、小さな木の葉のようにしか見えない伊402から、細い給油管が伸ばされ、フレッチャーに接続される。


 その様子を何とはなしに眺めながら、セーラはふと脳内に浮かんだ疑問を口に出す。


「あたしたちの兵装は、フェドの魔力で動かしてんのよね?」


「機関はともかく、フィルの兵装はどうやって動かしてるのかしら……まほーつかいが乗ってる様子もなかったし?」


 お伽噺のようなこの世界のことだ……いろいろと反則な仕組みがあるのだろう。


 そう思いなおして直掩飛行に戻るセーラだが、なぜかその疑問は脳裏に残り続けるのだった。


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