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第2-7話 F作業でドラゴン退治

 

「こらっ、イオニ!」

「アンタ、せっかく胸とお尻に余分なお肉がついてるんだから、もっと美味しそうな動きをしなさい!」

「島の人たちのためでしょ!」


「セーラちゃん! これなんかおかしくない? おかしくないっ!?」


「…………」


 早朝から出港し、シードラゴン生息域の海までやって来た伊402。

 連中、午前中はあまり活動しないという情報を聞いたからなんだけど、相手は”魔の海”に巣食う凶悪モンスター。


 いつ襲われるか、緊張しまくりな僕の前で、お構いなしに騒いでいるふたり。


 セーラは艦の前部に備えつけられた大型クレーンの根元に仁王立ちすると、僕の魔力を使って操作している。


 特に変わった作業ではない……クレーンからぶら下がるワイヤーの先に、イオニがぶら下げられていることを除けば。


 ”F作業”って、まさか?


「……え~とセーラ、念のために聞くんだけど、コレって”釣り”?」


「ふふん! そのしーどらごんって肉食なんでしょ?」

「寝起きにお腹を減らしたヤツらが”エサ”につられてふらふらと浮かんできたところを、後甲板の14㎝砲でズドンよ! 25㎜機銃もあるし!」


「ああ、心配しないで! イオニはこれでも潜水艦よ! ちょっと噛みつかれるくらい、なんともないわよ!」


「なんともある! ぷにぷにだからわたし!」

「あ~、わかった! セーラちゃん胸もお尻もない寸胴だからし~どらごんも寄ってこない……」



 ばしゃん!



 ワイヤーの先でぶんぶんと両手両足を振って抗議するイオニ。

 反論しかけるも、最後まで言い切ることは許されず、セーラによって海面に叩き落される。


 そんなふうにやかましくしていると、本当にヤツらはやってくるもので……。


「!! イオニ、セーラ!」

「海中からシードラゴンが上がってくる……3、5……成獣が7体!」


 あらかじめ仕掛けておいた探査魔法が、水中から浮かび上がる巨大な影を捉える。


「きたっ! イオニ、14㎝砲の照準!」

「あたしは25㎜3連装機銃を操作するわ!」

「まず機銃で傷を負わせて……14㎝砲でとどめを刺すわよ!」


「ぷはっ!? もうこうなったらヤケだ~っ!」

「フェドくんかんちょ~! タイミング指示お願いっ!」


 再び空中に引き上げられたイオニが僕の魔力を使い、後甲板に備え付けられた14㎝砲を動かす。

 同時に、司令塔の前に装備された3連装機銃が動き出し、海上の1点を照準する。


 シードラゴンが浮かび上がるタイミングが重要……責任重大である。

 僕は彼女たちのために魔力を放出しつつ、探査魔法を研ぎ澄まし、シードラゴンの動きを探る。


 1つの魔法を使い続けながら魔力を放出する……”ギフト”の操作と同時に魔法を使う技術は僕が習得したユニークスキルである。


 ……ギルドで冷遇されていたせいで、ワンオペ・トランスポーターな事が多かったから仕方なく身に着けたスキルだけど……。

 なんか悲しくなってきたので探査魔法に集中する。


「深度50……40……30……」

「目標はフタとゴの二群に分離……ヒト群とフタ群の距離二○、浮上予想時刻はほぼ同時!」


 セーラに教わった用語を頑張って使い、シードラゴンの位置を報告する。

 エサ役であるイオニが落とされた場所を中心に、二群で囲むつもりらしい。


「ありがと、フェド!」


「イオニ、14㎝には榴弾装填! ヒト群を一撃でヤルわよ!」


「あいっ! 榴弾装填します」


「フタ群は25㎜機銃の一斉射で動きを止めるから、14㎝砲の次射で仕留める事!」


「イオニ了解! 即応弾ヨシ!」


 セーラの的確な指示に合わせ、急速に戦闘準備を進めていくイオニ。

 ……クレーンにぶら下げられたままの姿が少しシュールだけれど。


 ごくり、緊張で喉を鳴らしながら、僕はカウントダウンを継続する。


「深度10……5……3……敵獣見ゆっ!」



「て~~~っ!」



 ズドオンッ!

 ダダダダダッ!



 僕の合図と同時に、火を噴く14㎝砲と25㎜機銃。


 腹に響く爆音を残して、後甲板に赤い炎が踊る。

 同じくして、艦橋上部の機銃座からは、曳光弾が花火のように海上の一点に飛ぶ。



 ギャオオオオオオオンッ!?

 ドバアッ!!



 シードラゴンたちは何が起きたか分からなかっただろう。

 食事をしようと浮上した瞬間、鋼鉄の皮膚をやすやすと貫く炎の雨に見舞われたのだから。


 14㎝砲の初弾で2匹のシードラゴンが文字通り吹き飛び……機銃弾に傷つけられた残りの5匹が水上でのたうつ。


 よし、次の一撃で全滅だっ!

 僕は勝利を確信したのだけれど。


「!?!? セーラちゃんっ! 逆探に感ありっ!」

「フェドくん、急速潜航っっ!!」


 何かを感じたのか、血相を変えたイオニがワイヤーを引き千切り甲板に着地する。

 突然のイオニの行動に、面食らった僕は知らなかった。


 無敵と思われた潜水艦に、恐るべき敵が近づいていたことを。


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