作戦決行! ピンチを切り抜けろ!
「これは私達小規模ギルドの特権、私達に出きる最適な作戦なんだけど、ギルドマスターのユキを取り囲むようにして団子になってこの拠点を突っ切る!」
つ、突っ切る……?!
いやいや……。
「そうじゃな」
わたしの考えに反し、エルちゃんはわたしの前方に立ってもはや団子になる気満々でそう言った。
わたしはすかさず口を開く。
「だ、大丈夫なの?!」
聞いた沙希ちゃんはわたしの右に立ってから顔だけこちらへ向けた。
「それしかないなぁ。ここで茂みの方に逃げても遠距離魔法で狙撃されるし、何よりここを突っ切りつつ、たくさんいる人のうちの10人くらい削れれば一気にポイントゲットや!」
沙希ちゃんのそんな声を耳に入れると、わたしを取り囲むように陣形を作っていたみんなは頷く。
どうやら一番消極的になっていたのはわたし自身らしい。ギルドマスターでありながら……。
こんなんじゃダメ!!
そんなことに気が付いて、わたしは一度大きく息を吐き、そして吸い、大きく唇を動かした。
「行こう!」
次の瞬間、わたしたちがそろって走り出すと共にこちらの動きを見た『黄金のわっか』の魔法使いたちが次々に詠唱を始め直径一メートル程度の火球を放つ。
火球は放物線上に弧を描き、ごうと燃え上がる炎の尾を引き走るわたし達の陣の右翼側から迫りくる。
が、こちらも負けじとわたしの右にいる沙希ちゃんが火球の方向へと手をかざした。
同時、沙希ちゃんの手の先を中心として半径三メートルほどの大きな魔法陣が形成されて、それに直撃した火球たちは次々に元の弧を描き術者のもとへと着弾していく。
しかしさすがは大規模ギルド、一人人数が減っただけで戦略的にも全てが崩壊するこちらとは違い、魔法使いを数人倒した程度、さほど気にする様子もなしに今度は前方から片手直剣を持った『黄金のわっか』のギルドメンバーが走りこちらへ向かって来る。
するとわたしの背後から、レイとミナホが飛び出した。
二人はあっという間に前方の敵を片付ける。
それを見て、わたし達はさらに全力で足を動かす。
もう少し。
そう、草むらまであと5メートル程度。
がその時、不意に背後を警戒するように顔だけをこちらへ向けたエルちゃんの瞳孔が収縮する。
「ユキ! 背後じゃッ!」
即座、わたしが刀を抜きながらに右回転で振り返ると、そこには青髪長髪で両手剣のプレイヤーがいた。
茂みからエルちゃんが『黄金のわっか』のリーダーだと言っていたプレイヤー……。
わたしは瞬時に未来視を発動するが、その未来には既に彼女が斬りかかってくる未来が映っている。
来る……!
すぐさまわたしは刀を頭上で左倒しに構えて、彼女の右手剣での一撃を受け止めた。
しかし彼女はそのまま体を左回転させ、側転の要領でわたしの頭上を飛び越える。刹那、わたしの背筋には大きな衝撃が走り、それと同時に視界右端にHP損傷の警告が出た。
前方で攻撃を加えて、これに対処している間に背後に回り込んで攻撃……?! 強い!
あまりの衝撃にわたしの体を前方に倒れこみ、わたしはすぐに体を裏返し、仰向けになった。
するとそこには右手の剣の振り上げるクラウンさん。
ヤバ……!!
とそう思ったとほぼ同時、クラウンさんが剣を振り下ろしたその先に、走りエルちゃんが入りこんだ。
「第四章三節[絶対障壁]」
エルちゃんはその声と共に展開されたバリアによって、エルちゃん自身とわたしを守るとクラウンさんに口を開く。
「久しぶりじゃの。クラウン」
「久しぶり。エル。でも悪いが、ここでゲームオーバーだ」
クラウンさんは冷静なその目でそう言った。
そして同時に、左手の剣でエルちゃんのバリアを砕いたと思うと、右手の剣がすでにエルちゃんの首へ迫る。
どうしよう……。いやそっか!!
わたしはとっさの判断で体勢を整えつつも
「行くよエルちゃん!」
そう叫ぶと共にこの五日間で手に入れたうちの一つのスキルを発動した。
『神速』
発動と同時にわたしの体は事前に脳内で決めた経路に沿って高速で動く。
まるで風にでもなった気分。
わたしはすぐに左手でエルちゃんの腕をつかみながらも右手の剣でクラウンさんを攻撃。
そしてその高速まま茂みへと飛び込んだ。
わたしが茂みに入ると同時、皆も茂みに入り、『黄金のわっか』の拠点から走り逃げ去って行く。
そうして走る中、隣を走るエルちゃんが言う。
「あんなスキルをゲットしておったとは……。それにわしを助けるどころかクラウンに攻撃までしおるとは、なかなかやるのう!」
そんなエルちゃんの笑顔の言葉に、わたしは「まぁ」と言いつつ言葉を作った。
「実はクラウンさんには、ギリギリでかわされちゃったんだけどね」
「でも、全員生還! これが一番や!」
若干残念そうにするわたしに、沙希ちゃんはそう言って親指を立てた。
「大丈夫ですか?! ギルドマスター!」
雪モヨウが逃げ去ってすぐ、クラウンのもとには肩までの黒髪の魔術師が寄ってきた。
彼女は回復術師である。
しかしクラウンは首を振ってから唇を動かす。
「問題ない。それより、ダメージを負ったものを手当てしろ」
「はい!」
まるで無邪気な小学生の様な返事をした彼女が、長いローブの所為で若干たどたどしい足取りではあるが走りダメージを受けたもののところへと行くのを見届け、クラウンは一人茂みの方を向き、そしてギラリと犬歯をむき出すように笑みを作った。
「かわしたつもりだったがな。確か……。[光の天使]ユキ、と言ったか。覚えておこう」
そう言い剣をしまった彼女が、右手親指でこすった頬には、三センチ程度のダメージエフェクトがあった。
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