序、序盤からもうピンチぃ……
「どうする?」
ひっそりと息をひそめるように出したその声に、レイも小声で口を開く。
「運に任せて殴り込みってのはどう?」
「いやダメでしょ!」/「ダメやろ!」
ミナホと沙希ちゃんの音速のツッコミが入った。
ところで、そうして会話をするわたし達は今どこにいるか。
正解は、茂みの中!
陣地を持たないことに決めたわたし達は、全員で進み始めたところまでは良かったんだけど、すぐに見つけたのが、森の一部の開けた場所に作られた大きなギルドの拠点。
そんなこんなでわたし達は茂みに隠れてそのギルドの様子を窺い始めたってわけ!
するとエルちゃんが小さく声を出す。
「あれは……このNeo-play-onlineでもトップの大規模ギルド『黄金のわっか』じゃな。最初はこの『雪モヨウ』の様に超小規模ギルドだったんじゃが、月日と共に今や人数130人越えの超大規模ギルドじゃ。ギルドマスターの名はクラウン。両手剣使いの青髪長髪じゃ」
そう言ってエルちゃんの指す拠点中央には緑の瞳に青髪長髪の二本の剣をクロスさせるように背負った女の子がいる。
年で言うと……わたしより一つか二つ上くらいかな。
そんなことを考えつつもわたしはエルちゃんに質問を投げる。
「強さ的にはどれくらい?」
エルちゃんは、わたしの疑問に数秒悩んだ後で唇を動かした。
「そうじゃな……、まぁざっと見積もってレッドドラゴン30体前後かのう。とはいえギルドメンバー全員がそろってるはずもないから、まぁ今はレッドドラゴン5~10体くらいじゃ」
「ごめん、その『レッドドラゴン』って単位がよくわかんない……。けど、ドラゴン10体って強いよね……?!」
だってドラゴンだよ! あの伝説の……!
強いに決まってる……! 殴り込みなんてしたら一息で吹き飛ばされちゃうよ~。
と、そうして多分顔を真っ青にしてるであろうわたしに、エルちゃんは「まぁ」と言って言葉を続けた。
「全員揃っておっても、Play-online時代にはシアに壊滅させられてたがなー」
「壊滅?!」
130人以上を相手に……?!
さすがシアさん、やっぱりすごい……。
ってやば! 今の声、大きすぎたッ!
思ったと同時、『黄金のわっか』のメンバーの内の数人がこちらに気づき、勘を抜いたかと思うと茂みへと飛び込んできた。
がその瞬間、エルちゃんの周囲に五冊ほどの辞書程度の本が浮かび、同時に口を動かす。
「第三章一章[空間衝撃]」
刹那、辺りの空間が波のように歪んだかと思うと、茂みへと入ってきた周囲の敵は瞬時にして『黄金のわっか』の拠点の方向へと吹き飛ばされた。
するとすぐさまレイは茂みを飛び出して、こちらへ視線を送る。
「みんなも早く」
聞いてわたし達もレイに続くような形で茂みを飛び出した。
しかし、わたしはその場で硬直した。
目の前の敵陣には、少なくとも50人以上の敵がいる。その上彼らが一点に敵意を向けている相手のわたし達はたったの五人。
この場で天使を発動しても、もはや勝てる予感がしてこない。
序、序盤からもうピンチぃ……。
流石のエルちゃんの額からも、大粒の汗が落ちるのが見てわかる。
とその時、敵の動きに視線を注ぎつつも、ミナホが敵に聞こえないように小声でゆっくり口を開く。
「私に、一つだけ作戦があるんだけど……」
「なんや? もうこの際や、失敗してもなんでもええから言ってみ」
沙希ちゃんが相槌を打つ。
「これは私達小規模ギルドの特権、私達に出きる最適な作戦なんだけど——
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