50.応報
フィールは精根尽き果てたレラーナとガルスを肩に担いでいた。ちょっと前まで一介の見習いに過ぎなかった自分が王女殿下を助けているなんて、夢を見ているようにした思えない。
バルイやエリアたちも王女のパーティの冒険者たちを支えて、皆で上階への転送陣へ向かっているところだった。王女のスキルの効果がまだ続いており、正面からしか敵はやってくることはなく、満身創痍の冒険者たちを抱えていてもなんとか一歩一歩進むことが出来た。
何とか王女のいる部屋まで辿り着いたあのとき。部屋の中には強力なアンデッドがたむろしていて、突っ込んだらエリアとバルイを守り切ることはできなかった。かといって二人を置いて単身突っ込もうにも、隣の部屋にも十分強いゾンビたちがいて、二人を置いていくことはできなかった。
だが自分たちに気づいた王女がスキルを使ってくれたおかげで、四方八方から襲い掛かってくるはずのアンデッドたちはフィールの正面からしかやって来なくなり、三人は一気に駆け抜けて王女のところまで辿り着くことができたのだった。
王女もほかのパーティメンバーたちも今は意識を失っている。バルイが一応回復魔法をかけたが、彼の力量では応急措置程度にしかならず、かなりの深手を負ったメンバーもいたため、急いで地上に戻る必要があった。おまけに王女のスキルもいつまでもつかわからない。彼女のスキルが切れてしまえば、往路ほど身軽に動けないフィール達は窮地に陥る危険もあった。
そんなフィール達の帰路を防ぐ影があった。
「よぉフィール、いったいどんな手品を使ったんや?まさかあんたらが王女殿下を助け出すなんてなぁ」
にやりと笑うのは、かつてのフィールのリーダー、ベルル。
「ベルル、そこをどいて……王女殿下を早く地上に連れて行かないと……ほかの人たちも、傷だらけで治療が必要だ……」
「おお、まったくもってその通りやな、せやけど、その役目を負うんはあんたらやない、この八十二階層の担当であるうちらや」
そう言って、ベルルとほかのパーティメンバーたちは一斉に武器を抜き、フィール達に突きつけた。
「王女さんはここで置いてってもらいましょか」
「なぁぁぁぁぁっ?てめぇどこまで腐ってやがるんだ!トロメ以上に腐りやすい奴がいるなんて想像もしなかったぜ!」
「それにあなたたちが運んで行っても、実際に助けたのは別の人だって王女殿下が証言すればすぐにばれることよ!いいからどいて!」
バルイとエリアにそう言われてもベルルは動じない。
「いやいや、結局世の中は信用と外面やからなぁ。それに王女様は心も体もボロボロみたいやないか。記憶の混同があったんやろって言われたら、そらそうかもなってなるところやで
――さ、どんな手品使うたんかは知らんけど、ネタも切れたころやろ、ほないくで」
そしてベルルは仲間と一斉に攻撃をかける――
――つもりが、ベルル一人だけがフィールの前に飛び出してきた。
「へ?」
間抜けな声を上げるベルルの顔に、フィールは今までの恨みをすべて詰め込んだ渾身のストレートをお見舞いした。
「ぎゃあああああああああああああっっっっ?!?!?!!!!!!!!!!!」
情けない声を上げながらベルルが吹き飛んでいく。
「リ、リーダー!!」
「フィールのくせに!やっちまえ!!」
そう言うベルルのパーティメンバーだが、レラーナのスキルの効果のおかげで一人ずつしかフィールの前に出てくることができない。
「あれ!?なんだこれ体が!!」
「ちょっと、何が起こってるの!?」
混乱する彼らをフィールは一人ずつ順番にちぎっては投げ、ちぎっては投げていった。
「いいねぇフィール、そのままこのクソトロメ野郎どもにとどめを差しちまおうぜ!!」
「今はそんなことしてる余裕ないでしょ!一刻も早く上に上がらないと!」
そうしてフィール達はベルルとその仲間を薙ぎ払い、遂に上階への転送陣に辿り着いたのだった。




