46.八十二層へ
「落とし物を見つけてな、見覚えのあるパーティのものだ、そんなに深いところを担当しているパーティでもないし、ちょっくら届けに行ってもいいか?」
「ああ、了解、このへんは人が余ってるくらいだし、全然大丈夫ですよ」
バルイがそう言うと、『馬と羊の恋人』のリーダーは驚くほどあっさりとOKを出してくれた。ちょっと拍子抜けに思いながらも、三人は転送陣へと向かう。転送魔法が発動すると同時に、三人は『ミノレ蓑』を被る。エリアが蓑の中で何やらごそごそとあちこちを撫でた。フィールには詳しいことはわからないが、どうやらそうすることで透明になる機能が有効になるのだろう。
次の階層に移ると、いきなり目の前に二人の男性が現れた。思わず声が出そうになるところを、フィールはなんとか押しとどめる。
「いやぁ、しかしこの辺りは暇だねぇ」
「これで報酬もらえるんだから、そりゃぁ強制召集されても文句はねぇよなあ」
二人の男はフィール達にまったく気づいたそぶりもなく、そのまま和やかに話を続けていた。
フィールの肩がつんつん、と叩かれる。後ろのエリアが、顎で早く行け、と指示を出した。先頭のフィールが動かないといけないので、そろりそろりと歩き出す。そのまま音を立てないように気をつけながら、次の転送陣のある部屋へと向かった。
そのまま三人は一つずつ階層を下がっていく。フィールが迷いそうなときはバルイが後ろから方向を示してくれた。転送魔法を利用した時にもしかしたら存在がばれたかもしれないが、それ以外には何も危ないところもなく、三人は五十一階層まで到達した。
五十階層までは先行して入ったパーティの誰かが転送箇所にいたが、この階層ではそれがない。三人はようやく声を出すことができた。
「ふぅ……なんとかここまでは来れたね」
「ああ、だが上の階層まではパーティの役目が露払いだが、ここからは探索が入ってくる。すべてのパーティが通り過ぎた後は、階層担当のパーティも探索をしているはずだから、守りがおろそかに――」
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!
最後までバルイが言い終わる前に、小型のドラゴンか大型のトカゲのような生き物がフィール達めがけて襲い掛かってきた。フィールは慌てて片手ではじく。
「やっぱり、気配の消えるマントの方がいいかもしれないわね……」
エリアがぽつりと呟いた。
「もう声を出さないってわけにはいかねーだろうな。運悪く鉢合わせたら力ずくでも次に進むことにして、ここからは蓑は脱いでいこうぜ」
「ええ、それでいいと思うわ」
エリアは『ミノレ蓑』をたたんで手に持った。バルイの先導に従って、三人は次の階層へ向かって走り出す。モンスターが迫ってきたらフィールが次々とはじいて行った。
「おい、なんか変な音しないか?」
「なんかモンスターの叫びが……」
先行していた冒険者たちのそんな声が聞こえるころには、すでに転送陣に辿り着いている。そして転送するときだけ、『ミノレ蓑』を被り、先行するパーティとの鉢合わせをできるだけ避けるようにしたのだった。




