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44.大鑑定+

「やれやれ……油断はできないものだね――エリア?」


 事なきを得てほっとしたフィールだったが、そこで険しそうな顔をしているエリアに気づき疑問を投げかける。エリアはゆっくりと振り向いた。


「今のでさらにパーティ全体の経験値が上がったのか何なのかわからないんだけど、あたしの能力が『大鑑定+』になってたの。だから、さっきから試してできなかったことにもう一度挑戦したんだけど……」

「何をずっと試してたんだ?」

「あ、そうね、うん……試してたのは、『今レラーナ殿下がどの階層にいるか』を鑑定できないかっていうこと」

「なるほどな!それで、今その話をするってことは、その鑑定ができるようになったんだな!」

「ええ、そうね……」


 興奮するバルイに対して、エリアはこれ以上ないほどに浮かない顔を返す。


「なんでいエリア、王女殿下が遭難している階層がわかるんなら何か助けになるかもしんねーじゃねーか、それを、どうして――」

「八十二階層」


 エリアはバルイの言葉をさえぎって、短くそう言った。


「レラーナ殿下が遭難しているのは、八十二階層よ。二人とも聞き覚えがあるでしょう?」


「八十二?」

「それってどこかで……」


 逆にそう問われてフィールとバルイは一瞬悩み――そして同時に答えに辿り着いた。


「ベルルが行くって言ってた階層!!」

「あのクソ野郎の担当の階層じゃねーか!!」


「そうよ、そしてあの人の装備の様子だと、まず間違いなくちゃんと探索する気はないでしょうね」


 エリアの言いたいことが二人にも伝わり、顔が蒼くなる。


「おいおい、それじゃあ、王女様は見殺しにされちまうってことか……?」

「で、でも八十二階層より下に進むパーティもあるんだし、それが王女様を見つけるってことも……」

「いや、それはまず期待できねーだろうな、フィール。言ってただろう?まだまだ未攻略領域もあるような迷宮なんだよ、この迷宮は。次の階層への転送陣までの道が辛うじてこれまでの探索で発見されているってだけで、ちょっと脇道にそれたらもう何もわからねぇ。だからこそ、S級なんてのは本当に精鋭ぞろいじゃねーといけねえんだ……」


 バルイはそうやって頭を抱えた。


「で、でも……それならエリアの結果をみんなに伝えて、ほかのパーティにも八十二階層に集まってもらえば……」

「今の実力を証明するには時間が足りなさすぎるわ。誰も信じてくれないでしょうね」

「それにSランクパーティはもう全部ここを通り過ぎて、下の階層まで行っちまった……」

 

 重苦しい沈黙が三人を支配する。


「……それじゃあ、王女様のいる階層がわかってるのに、見殺しにするしかないってこと……?」

「――ええ、でももう一つ選択肢はあるわ」

「――え?」

「あたしたちが、八十二階層まで降りていくってことよ」


 エリアの言葉に、フィールは虚を突かれたように固まった。


「そんなこと、できるの?持ち場を離れちゃうし、それに下の階層に僕らみたいなのがいきなり行っても、そこにいるパーティに捕まっちゃうんじゃ……まさか戦うわけにもいかないし」

「ああ、この階層を離れるだけなら何とかなるだろうが、それが問題だな」


「いいえ、それなら……これを使えば多分なんとかなるわ」


 フィールとバルイの言葉に、エリアは荷物から一つの皮を取り出した。それはフィールと一緒に素材屋に入ったときに買ってきた、緑色のギラギラとした光沢のある皮だった。


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