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43.三十階層

 ボコバカボコボコッ!!!


 そんな音を立てて一瞬で部屋の中にいたモンスターたちはすべてフィールに始末されてしまった。


「お疲れー、いやぁ、さすがフィールだな」

「ここまで強いと、もう少し下の階層に行ってもいい気がしてきたわね。あ、その牙いい素材になるから取っといて」

「はいはい、これだね。下の階層は……うーん確かにもう一つ二つなら潜ってもいいかも……」


 三十階層というから雑魚とはいっても手ごたえが多少はあるのかと思っていたフィールは、あまりのあっけなさに拍子抜けしてしまった。これならここまで下りてくる道中の方が激しい運動になっている気がする。


 そんな三人のいるところには、やがて次々と上からパーティが下りてきた。


「お疲れさーんでーす!」

「ここで三十層?了解」


 さらに下の階層を担当するBランクのパーティが、フィール達によって雑魚を掃除された階層を降りていく。大部分は体力を温存するために無口だったが、中にはそんな風に挨拶をしてくれるパーティもいた。


「ここからあと何十層も下りるパーティもあるのか、ご苦労なこって」

「もっといろいろ便利に使える転送陣があればいいのにね」

「迷宮にもよるんだが中央迷宮ではそういう魔法は迷宮に妨害されて使いもんにならねぇらしいぜ」

「へぇ、まるで迷宮って魔物みたいだね……」

「ああ、そういう説を唱えている奴もいるらしいな」


 雑談をしている間にも、時折魔物が周囲から湧き出てくる。しかしフィールがどれもあっという間に息の根を止めていた。そうこうしているうちに、やがて階層を下っていくのはBランクから、AランクそしてSランクへと変わっていく。


「カカシみたいに突っ立ってご苦労なこっちゃなフィール、せいぜいそうやってはした金でも稼いどき、うちらは八十二階層をしっかり探索してきたるわ」


 目の前を通り抜けざまにそんなことを言ってくるベルルたちに、さしものフィールもカチンときたが何か言い返す前にとっとと部屋を通り抜けてしまった。


「カーッ、あいつは本当に腹立つトロメ野郎だなぁっ!!畜生とっとと腐って迷宮の肥やしにでもなりやがれっ!!」


 フィールの代わりに怒りを露わにしてくれるバルイ。一方、エリアは何も反応をせず、ただ難しい顔をしていた。


「どうしたエリア?あのトロメ野郎の腐りトロメっぷりに、呆れて何も言えなくなっちまったか?」


 バルイにそんな風に尋ねられたエリアは、ただ小さく首を傾げた。


「そうじゃないの、あのパーティの装備を鑑定してみたんだけど……全く戦いに向いているような装備には見えなかったのよね」


「なんだ、それじゃああいつら本当に野垂れ死にしてくれんのか?」

「そうじゃないの。気配を消すマントだったり、耐久力の異常に高いシールドだったり、多分守りに回れば何があっても死なないし、いつでも戦線を離脱できる装備をいっぱい持ってるわ。でも、攻めに回ることはできないから、王女様がモンスターに囲まれているのを見つけても、助太刀に回って助け出すようなことはないでしょうね。遠くから応援しているのが関の山よ」


「ハァ?じゃああいつら、いったい何のためにここを潜ってやがるんでい?」

「多分なんだけど、お金とこれからの仕事のことがあるから、せっかくSの評価を下されているのにわざわざAランク以下に降りたくはない、けれど実力的にはSランクの行く階層を探索するような力がないから、目的の階層に行くまでの間とそこに着いてからは、ひたすら防御に徹してほかのパーティが王女様を発見してくれるのを待つつもりじゃないかしら」

「うわぁ……なんて他人任せな……」


 思わず呆れ声が出てしまうフィール。バルイも天を仰ぐ。


「まったく、それでも冒険者かってんでぃ!!日和見決めて安全地帯でぬくぬくたぁ、クソの役にも立たねーじゃねーか」

「ま、あたしたちも人のことは言えないかもしれないけどね、でもSランクの高い報酬をもらって、一階層まるまる担当しているのにそういうやり方はちょっと気にいらないわよねぇ……っ、フィール、後ろっ!!」


 話に夢中になっていたため、後ろからモンスターが近づいているのに気が付かなかった。猫の顔をした狼のようなモンスターが牙を立ててこようとするところを、フィールは慌てて払いのける。ぐしゃっと音がして、モンスターは絶命した。

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