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38.王宮前広場

 フィールはバルイに知らないことを教えてもらいながら、王宮前広場へと向かった。


「この国の王族はもともと冒険者の血筋だからな、今でも青年王族は冒険者パーティに所属して何年か過ごさないと、王位継承権が認められないんだ。従軍経験を必要とする王族なんてのは結構よく聞くが、うちの場合はそれが冒険者経験になってるんだな」

「フィール、そのあたりは結構常識的なことよ。そんなことも教えてくれなかったなんて、あなたのいたパーティは本当にクソだったのね」

「うん……でもパーティのせいにばかりしてられないから、ちゃんと勉強します……」

「ま、俺とエリアがついてるから、わかんねーことはこれから順番に学んでいったらいいさ。それで、話を続けるけどな、いくら冒険者パーティに入るからと言っても、王族は王族だ。もしものことが起こらないように十分な配慮はしているはずなんだが……」

 

 バルイはそう言って首を捻る。


「何か想定外のことが起こったのか。だからこそこうやって緊急招集なんてかけてるんだろうな」

「でも、今から行く場所は中央迷宮なんだよね?中央迷宮って一番大きな迷宮でしょう?誰でも彼でも召集をかけて、大丈夫なのかなぁ」

「ま、最大って言ってもやっぱり浅い階層は雑魚が多いしな。本体を王女の捕まっているところまで送り込むための露払いみたいなもんだろ、大多数のパーティに求められているのは」

「それならフィールの出番はないかしらね。せっかくのお手柄のチャンスだったけれど」

「やめてよエリア。見習いの身分で王女様の救出なんて荷が重いよ」

「今のフィールなら十分お手柄の可能性もあると思うけどな。ま、フィールが自信ねーって言うなら、無理をする必要はねぇよ、ほかにも大勢優秀な冒険者が王都には集まってるんだ。俺たちが出るまでもなく、きっと王女殿下を助け出せるはずさ」


 雑木林や草原が多かった周囲の景色は、王都の中心部に近づくにつれて徐々に民家、そしてレンガ造りのより大規模な建物へと変わっていく。そして最も巨大な建物に近づいていくと、急に辺りが開けた。フィールが生まれ育った村よりも広いのではないかと、思わず思ってしまうくらいの巨大な広場がそこには広がっていた。


「ここが王宮前広場だ。何かと来ることの多い場所だから覚えておいて損はねぇぜ」


 バルイはそう言って、手を広場の中央に向かって延ばす。その先には何百、いや何千という人数の冒険者が集まっていた。


「まだ登録の終わっていない冒険者はこっちだー!!」


 王宮の兵士と思しき人が声を張り上げている。その隣には、冒険者ギルドの職員が座っていた。バルイは一人でそちらへ向かうと、いくつか言葉を交わす。そして番号札のようなものを持つと、フィールたちのところへ帰ってきた。


「どうだった?」

「ああ、順番に説明するとだな、まず召集されたのは現在王都にいる冒険者すべて。召集に従わなかった場合は今後王都入域禁止になる可能性があるらしい。ま、こんだけ集まりゃ多少来なくてもそういう措置はないかもしれないけどな。それで、任務は中央迷宮で消息を絶ったレラーナ王女殿下の救出だ。召集されたパーティは四ランクに分けられる。S,A,B,Cだ。もっとも経験が豊富で実力者がそろっているパーティはSランクに割り振られ、逆に実績もなくてメンバーにも乏しいようなパーティはCランク。ちなみに俺たちもC認定だぜ」

 

 バルイはそう言って手元に持った黒い番号札を見せる。


「黒はCランクの証だ。俺たちは迷宮の浅い階層で雑魚たちを狩って、高ランクのパーティが余計な消耗をすることを防ぐのが仕事内容だ。その分、報酬も安い。Sランクのパーティが王女様を救出したら褒美は思いのままらしいが、俺たちとは縁のない世界だ。どうだ?フィール、今からでも実力を披露してみるか?うまくいけばSランクのパーティの認定が下りて、王女様を救出できるかもしれないぞ」


 にやりと笑うバルイに、フィールは肩を竦めて返した。


「やめとくよ。今はまだ準備不足だと思う。国内最大の迷宮に入るのはちょっと怖いよ」

「あいよ、まぁこの先チャンスはいくらでもあるんだ。焦るこたぁねぇと思うぜ」


 フィールの耳に、できればもう聞きたくない声が聞こえてきたのはそんなときだった。


「あれぇ、フィールやないか。こんなところで何してるんや?」

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