34.ガンギュウ(2)
「これでいいのか?」
「ええ、ちょっと見せてね」
バルイが尋ねると、エリアはそう言って割れた破片に手を突っ込み、慎重に一つ一つどかしていく、そうすると、キラキラと輝く一つまみの塊が出てきた。それを取りあげてエリアはにんまりと笑う。
「エリア、それって……」
「ええ、金よ」
「よく見つけたなそんなもん、ほかの岩にも入ってんのか?」
「いいえ、ガンギュウの大きな体で、この岩だけよ。それでもないよりは全然いいでしょう?」
金貨一枚にも満たない量だが、それでも金となればちょっとした価値になる。
「もしこの階層にいるガンギュウすべてにこれくらいの金が入っているなら、ちょっとした財産になるわね……」
「で、でもいくらなんでも誰も気づかなかったなんてことはあるの?」
「いや、以外とあるかもしれんぞ。普通誰もガンギュウの体を割ろうなんて思わねぇし、割ったところでたった一つの岩に当たるとも思えねぇ。当たったところで、金が入ってるって知らなけりゃ見落とすかもしれねぇ。後はエリアみてぇな鑑定士が見つけることが出来るかどうかだが……鑑定士の実数が少ねぇ上に、エリアほどの腕前を持っちゃいねぇんじゃねーのか、みんな」
「そうでしょうね……バルイの力で強化されていなかったら、あたしだって見つけられたかどうかわからないわ。さっきのトロメの心臓といい、あたしたちやっぱり組んだら無敵よ――きゃっ!!」
エリアが急に悲鳴を上げたので何かと思うと、さっき手に入れたトロメの心臓を入れた袋を見ている。すると急に変なにおいがフィールの鼻についた。
「見てこれ!」
エリアが心臓を袋から取り出すと、それがさっきとは似ても似つかないような黒い色になり、見ている間にもどんどんしぼんでいっている。そうこうしているうちに、トロメの心臓は完全に溶けて、腐った肉の臭いだけ残してエリアの手の上から消えてしまった。
「トロメの心臓が残っていない理由がわかったわね……時間差で急に腐りだして、あっと言う間になくなっちゃうのよ」
「これじゃあ、トロメ焼肉で商売するのは無理だな」
「でもさ、焼いたら腐らないんじゃない?そうじゃなきゃ今頃、お腹の中の肉が腐りだして僕たちもお腹壊しちゃってるよ」
「それじゃあ、迷宮の中で一回焼ければ、外に持って行って売ることもできるかもしれないわね」
「やめとけやめとけ、もし食中毒でも起こしたら一気にこっちの評判が悪くなる。俺たちだけの食材にしとこうぜ」
「とりあえずはそういうことにしておいた方がいいかもしれないね。金儲けのネタならここでガンギュウを狩るって手もあるし」
三人はそう話し合って、ひとまずトロメを食材として売ることは中止した。
「どうする、もうしばらくここでガンギュウを狩っていくか?」
「フィールの力を把握したいから、また別の敵と戦いたいわね。ここまでは動きの遅い敵が多かったけど、速い敵はいないかしら。もちろん、万一フィールが脇を抜かれたとしても、あたしたちに害が及ばないレベルの弱い敵が相手じゃないと安全な実験にならないけど」
「それじゃあ、次の層に降りようぜ。おあつらえ向きの奴らがいるよ」
バルイがそう言ったので、三人は更に次の階層へと向かった。




