29.王都
「ここが、王都……」
「道中何事もなくてよかったわね」
「ふーうっ、着いた着いたぁ!」
数日ののち、フィール、エリア、バルイの三人は王都に到着していた。これまでも王都を訪れた経験のあるエリアとバルイは慣れたものだが、フィールにとってはなんだかんだでこれまで訪れる機会のなかった町であった。ガダチャで一番大きな建物と同じくらいの建物が、そこら中に建っている。通りを歩いている人を数えるだけで、ガダチャの町の住民全員と同じ数になるのではないかと思えてしまう。そんな風に、ガダチャの町とは建物の大きさも、人の多さも桁違いで、フィールはしばしばそのスケールに圧倒された。
「本当に、こんなに大きな町がこの世にあったんだ……」
「フィール、よその国ではもっと大きな町もあるって話だぜ、ま、俺も行ったことはねぇけどな」
「もう想像もできないよ……」
そんなことを話しながら街中を歩く。フィールにとっては物珍しく、目につくものすべてについて二人に尋ねてみたいくらいであったが、三人にはするべきことがあった。
「それじゃあ、まずは俺の知っている迷宮に行くぞ。雑魚しか出てこねーから、フィールが無双したところで噂になることはまずない。そこでパーティとしての戦力と戦い方の確認だな。そのあとは徐々に相手を強くしていくか」
「わかったわ、それじゃあ、早速連れて行って頂戴」
バルイに連れられて、三人は王都の郊外へと向かう。
通常、多くの町は迷宮を中心に発展する。迷宮は倒せば素材になるモンスターが生息する上に、基本的に上層に行けば行くほど出てくるモンスターは雑魚になるため、その近くで人が生活を営んでも襲われたりする危険が少ないからだ。
同じくモンスターが生息している場所であっても、森林などはモンスターの出現場所がそこまで厳密に決まっていないため強いモンスターがどこに現れるかもわからず、その周囲に町が発展するということはまずない。
そしてこの王都の近辺は迷宮が一つではなく複数存在したため、集まる人口も比例して多くなり、王都として発展することになったのである。王都の中心には国内で最も大きいと言われる迷宮がある一方で、フィール達が向かっているのはその周囲にあるより規模の小さい迷宮の一つであった。
三人は迷宮の近くに建つ建物へと向かう。バルイが説明した。
「ここは冒険者ギルドの出張所だ。メインの迷宮の隣に、冒険者ギルドの本部があるんだが、それぞれの迷宮の近くでも管理できた方が便利だからな」
ここの出張所の受付は女性ではなく、人のよさそうな大柄な男だった。
「いらっしゃい、ってガダチャのバルイさんか。今日は仲間が違うんだね」
「ああ、前の仲間とは別れた」
バルイは苦虫を噛み潰したような顔をする。何かあったと悟った受付はおっと、と言って肩を竦めた。
「こいつらが今の仲間だ。見習いで登録している。もう卒業させたいんだが……」
「あいにくだけど、その手続きは本部じゃないとできないんだよ――それに、見習いに入れたばっかりの子を卒業させるのかい?」
「げっ、そうだったのか……いや、力量の方は問題ねぇよ」
バルイは困った顔をしてフィールとエリアに向き直った。
「すまねぇな、ガダチャで見習い卒業手続きするのを忘れてたからここですりゃぁいいと思ってたんだが……いったん本部まで行くか」
「あたしは別にいいわよ、まだ見習いのままでも」
「僕も別に急がないよ、ここまで来ちゃったし、一度ダンジョンに潜ってもいいんじゃない?」
「んー、そうか、まぁ二人がそう言ってくれるなら入るか……」
三人は改めてギルド出張所で許可を取り、ダンジョンの中へと入った。




