26.厚顔無恥
隣の窓から外を見ていたフィールにも、群衆の中から三人の男女が宿の中に入ってくるのが見えた。階下で宿の主人と何やら言い争ってる声が聞こえたかと思ったら、さほど時間を置かずして、フィール達の部屋の扉が開く。
入ってきた男女は冒険者の身なりをしているが、顔や外から見える肌の部分は生傷だらけで、装備の方も最近ついたような傷がいくつもあった。表情もまったく明るくはなく、疲れ果てているという言い方がぴったり合うような顔で、バルイにすがるように話しかける。
「バルイさん!!!頼むよぉ、またあんたのパーティに入れてくれぇ!!」
「あなたと別れてから、あたしたち失敗続きなの、それであなたがまた新しいパーティを組んで、わずか三人で10層を攻略したって話を聞いて目が覚めたわ!!」
「俺たちにゃ、『牛鍋のセロリ』しか居場所がねぇってことに気が付いたんだ!!パーティリーダー、これからもどうかよろしく頼むよ!!!!!」
部屋になだれ込んで来た三人はフィールやエリアにほとんど目もくれず、バルイに向かってそんなことを言った。そばで聞いていても呆れるようなその恥知らずなもの言いに、まして当事者であるバルイは頭の血管が切れたかのように顔を赤らめて怒りに満ち溢れた声を上げた。
「てめえらどの面下げてンなこと言ってんだこのクソ野郎どもがぁっ!!!!!俺のところ出ていくときに言ったよなぁ、俺みたいな頼りねぇリーダーの下にいるより自分たちでパーティを組んだ方がよっぽど儲かるって!!それがノコノコやってきてまた一緒に冒険してください!?!?!?いいわけねぇだろうがこのマヌケイワミタイ!!今すぐくるっと回ってここから出ていけ!!さもなくば俺と新しい仲間の二人が黙っちゃいねえぞ!!!特になぁ、このフィールって奴はドラゴンだろうがボスだろうが片手で捻れるすげぇ奴だ!!てめぇらなんか小指の先でちょちょいのちょいよ!!ガジラジクの餌にされたくなけりゃとっとと出ていけ!!!」
「そんな、そんなつれないこと言わないでくれよバルイさん……長いこと一緒にやってきた仲じゃないか……」
「そうよ、あんまりだわ、あんなに優しくしてくれたじゃない」
「俺たち、新パーティの旗揚げのためにいろいろ借金もしちまったんだよぉ!このままじゃ借金取りに何されるかもわかんねぇ、頼むよぉバルイさん!!」
「ああそうだな!!!俺もそう言ったよなぁ!!!おめぇらが見習いのころからずっと一緒にやってきたんだ、考えなおさねえかって俺は何度も聞いたよなぁ!!それで、おめぇら何て言ったっけなぁ!!この世界は弱肉強食!?頼りにならないリーダーの元にいると自分たちまで馬鹿にされる!?自分たちのほうがずっとうまく冒険して、大儲けできる!?あと何だったか、あまりにも胸糞悪ぃんで全部忘れちまったよ!!それを今さら、元の鞘に収まれるとでも思ってんのかてめぇらは!!!借金取りにガジラジクの餌にでも何にでもされちまえこのクソトロメどもが!!さもなきゃフィールに貴様ら三人とも、骨も残らず粉々にしてもらおうかぁ!?!?」
バルイの剣幕にさしもの恥知らずな三人組も恐れをなして、部屋から飛び出すように逃げて行った。
「ちょっとバルイ、また変な尾ひれつけるのやめてよ……僕そこまでバケモノじゃないよ……」
「いや、すまんつい……」
『聞いたか、例のパーティにはやはりとんでもない新人が入ったらしいぞ』
『ドラゴンだろうがなんだろうが、一撃で殺せるらしい』
『そういえば街道でドラゴンが出たらしいが、退治したのもそいつの仕業か?』
『なんとしてもそいつらとはお近づきになっておいて、いい仕事のときにはぜひ分け前をもらわねぇとなぁ』
すぐに宿を取り囲む冒険者たちの中からもそんな声が聞こえてくる。フィールの見た限り、かつて彼が所属していたパーティのメンバーはまだいないようだった。
「とにかく、一度なんとかしてこの宿から抜けましょう。また誰か入ってきたら厄介だわ」
エリアのその言葉に、三人は階下へと向かった。




