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24.戦いを終えて

「さ、いい加減、いったいおめぇらは何者なのか、ちゃんと教えてくれよ」


 バルイはそう言ってフィールとエリアを促す。


「時間はたっぷりある。見な、あそこに二つの転送陣があるだろう?あれでいつでも地上に帰れるし、あれを使うまではずっとここに残ってられる」


 バルイが差す方向を見ると、さっきまでボスの死骸のあったところに黄色と青の転送方陣が現れていることにフィールは気が付いた。


「それで、改めてフィールはいったい何者なんだ?どうして凄腕の冒険者が何人も必要な10層のボスモンスター相手に、ほぼ一人で勝つことができた?」

「それは、フィールの持つ『辛勝』というスキルによるものよ」

 

 もはや信頼に足る人物と考えたか、エリアは特に隠すこともなくバルイにフィールの力を伝える。


「どんな相手にも苦戦するけど、どんな相手にも必ず勝つことのできるスキル、それが『辛勝』」


 厳かに告げるエリアの言葉に、バルイは目を丸くした。


「おいおい本気で言ってるのかお嬢ちゃん、そんなバケモノスキル……だが……しかし……」


 バルイはしばらくうんうん唸りながら首を捻った。自分が見たものと聞いたことと、これまでの経験。それらすべてがせめぎあって、バルイの中でだんだんと消化されていっているようだった。


「――だが、ちょっと待て。どんな相手にも苦戦するって言ったか?でもフィールはスライム相手には苦戦なんてしてなかったぞ」

「ええ、その原因があなたのスキルよ。あなたは――『育成』のスキルを持っているの。パーティメンバーの力を強化することができるのだわ」

「――なっ、馬鹿なことを言うなよ。ガーズリー婆ちゃんはそんなこと一度も俺に……」

「あら、あなたが言ったんじゃなかったっけ?鑑定士の半分は詐欺師みたいなものだって」


 そう言われたバルイはしばらく顔を赤くしたり蒼くしたりしていたが、やがて怒りに満ちた声で怒鳴った。


「あのババアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!幼かった俺を弄びやがったなあああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!」


 どんな関係だったのかは知らないが、ずいぶんと信頼する理由があったのだろう。今の叫びの中には、その反動が全て含まれているようだった。


「……いや、失礼。ちと我慢ができなかった」

「ま、ガーズリー婆ちゃんとやらにも、もしかしたら何か意図があったのかもしれないし、そのくらいにしておいてあげたら。それにあなたの元を去ったパーティメンバーの末路を知ったら、きっとちょっとは留飲を下げることになると思うわよ」

「え?なんでアイツら名前が出てくる?」

「だって自分たちに十分な力量があると思って、あなたを見限ったんでしょう?でも、実際はそれはあなたに強化された力だったから……」


 そこまで言われて理解したのか、バルイはにやりと笑った。


「……なるほどな、よおし今夜は祝杯だ!!酒だ!!奴らの末路を肴にしてやるぜええええええええええ!!!!!!!」

「ま、それなら酒代を回収しましょうか」


 エリアはそう言ってさっきまで死骸があったところに行く。そこには二つの転送方陣のほかに、一本の剣が刺さっていた。取り立てて特徴のない、バルイも持っているような剣だ。


「うーん、これねぇ……確かに中ボスにふさわしいドロップアイテムであるけど、やっぱり実際に死骸を捌いて部位を取った方が、いいものが手に入る気がするわ……」


 エリアはちょっと不満気だ。そんな彼女はひょいとフィールの方を見た。


「フィール、これとりあえず持ってたら?いつまでもナイフ一本ってわけにもいかないでしょう。剣で戦うってことにしておけば、ある程度スキルのこともばれないで済むかもしれないし。さすがに殴ってドラゴンやボスを倒しましたじゃあ、ちょっと目立ちすぎるわ」

「なるほど、じゃあそうさせてもらおうかな」

「えっ、酒代はっ……あ、いやもちろんフィールが倒したわけだし、別に文句があるわけじゃねえんだが……」

「それくらいおごるわよ。それじゃあ、帰りましょう」


 エリアはそう言って転送陣を指さす。三人は上層階への青い転送陣に向かい、そして転送魔法はつつがなく発動して、皆は見知ったダンジョンの入り口に飛ばされた。


 太陽の光を全身に浴びて、フィールは大きく息を吐く。命がけの戦いをしてきたのだという思いが、改めて鼓動を音が聞こえるのではと錯覚するくらい早めた。


「フィール、お疲れ様。そしてありがとう。また助けてもらったわね」


 エリアはそう笑って、フィールの背中を軽く叩いた。

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