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21.ボスモンスター

 拳だけで小さな家ほどの大きさとあれば、フィールの細い腕などまるで一本の毛のようなものである。しかしその一本の毛が、ボスの体重を乗せた拳をまるまる受け止めていた。


「フィール、100000から!ゆっくり削っていきましょう!今のあたしはダメージが通り易いところも見えてるから言うけど、無理はしないでいいから!」

「なっ!!えっ!!はぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」


 ボスの残り体力を伝えるエリアの声と、混乱したバルイの声が聞こえる。


「小指の先が一番通りやすいわ!」


 エリアの声に従って、受け止めている拳の端を殴りに行く。


「99000!!」


 すぐにエリアが相手の残りダメージを教えてくれた。もう一発と思ったところで、敵は拳を引き上げる。フィールは無理をせず、エリアとバルイを守れる位置を保った。


「おい、いったい何が……」

「あとで説明するから、とにかくあたしたちはフィールの後ろ!」


 二人の声を軽く聞きながら、ボスモンスターの挙動を冷静に観察する。拳を引き上げて不思議そうな顔をした後、相手は今度は口を大きく開けた。


「何か来る!隠れて!!」


 フィールは後ろに飛び下がり、二人との距離を詰めて自分の体の陰に置く。ヤギと熊の混ざったような口から高温の炎の渦がフィールに向かって飛んできた。それを体で受け止める。


「熱っ!二人とも、大丈夫?」


 色んなところに火傷を負ったのが感覚でわかる。だが体中が炭になるようなことはない。


「問題ないわ!!」


 二人の無事を確認して、フィールは軽く息を吐く。


「魔法も使うなんて厄介ね!フィール、焦らず行きましょう」

「オーケー、そうするよ」

「おい何が起こってんだよ、今のどう見ても炎系統の上位魔法だろうが!なんでアイツ平気な顔してんだよ!!」

「あなたはちょっと黙ってて!」


 ガオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!


 フィール達の様子に苛立ったかのように、ボスは異形の顔を歪めて吠える。そうして大きな足を一歩踏み出した。

 ずしん!という地響きとともに、フィールはその震動だけでちょっと体が浮き上がるのを感じる。山のように大きなボスが自分たちの壁際に詰めてくるのは気持ちのいいものではないが、フィールは自分のスキルを信じてじっと待った。相手はさらに、もう一度足を上げると、蟻のように小さなフィール達を押しつぶさんとその狙いを定めて踏み下した。

 フィールはそこに、カウンター気味にアッパーカットを入れる!!!


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!」


 お互いの攻撃が当たった場所でまるで爆発が起こったかのように、フィールは衝撃を受けきれず吹き飛びながら思わず叫び声を上げ、一方のボスモンスターの方も足を跳ね上げられ、バランスを崩して叫ぶ。

 フィールは床の上をころころと転がりながらも、何とか勢いを殺そうと手足を伸ばす。体中を打撲の痛みが襲うが、ようやくフィールの動きが止まった。一方のボスモンスターの方は怒りに満ちた目をぎらつけながら、再びバランスを取り直して踏みつぶそうと、足を振り上げる。


「フィール!!」


 先ほどの衝撃でエリアたちとフィールの間に距離が出来てしまった。今踏まれたらどうにもならないエリアは、フィールに声で助けを求めながら、バルイを引っ張ってフィールの元へ行こうとする。


「エリア、早く僕の後ろへ!!」


 その声に状況を理解したフィールは、エリアの方に飛び出ていく、間一髪、三人が合流したところでまた、ボスモンスターの巨大な足が宙から降ってきた。それをまたもフィールは受け止める。今度は吹き飛ばないように、足の方に神経を集中させながら両手を上にあげた。


 そして、再び強い衝撃がフィールを襲う。

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