16.見習い登録
翌日に、一緒に迷宮の上の方を探索する約束を、フィールとエリアはバルイと交わしひとまず別れた。宿への帰り道、フィールが口を開く。
「どうしていきなりバルイと組む提案なんてしたのさ?そりゃあ、僕たちはどこかのパーティに入れてもらえないと迷宮にも入れないような状況だったけど……」
不思議に思ってそう尋ねるフィールに、エリアはにっこり笑って唇に指を当てた。
「そりゃあもちろん、彼を『鑑定』したら面白いことがわかったからよ。あたしったら、本当についてるわ。フィールだけじゃなくて、バルイにも出会えるなんて。この町に来ようと思って正解ね」
「エリアがそんなに言うなんて、いったいバルイはどんなスキルを持ってるの?本人はあんな風だったし、自分のスキルに気づいているとは思えないんだけど……」
「まだ秘密。あんまり期待させすぎちゃって何か間違ってたら悪いし。明日バルイと一緒に探索するのを楽しみにしましょ」
エリアはそう言っていたずらっぽく笑う。エリアがそう言うならと、フィールはそれ以上彼女に尋ねることはしなかった。
宿に帰った二人は保存していたドラゴンの肉を少し食べて舌鼓を打つと、翌朝に備えて眠ることにした。昨日よりは幾分興奮も収まっていたフィールは、すんなりと眠りに落ちることが出来た。そして気が付けば、朝日が窓の隙間から入り込んでいた。
「エリア、朝だよ、起きて」
「ん……むにゃ……もう食べられない……お腹いっぱい……」
「バルイといっしょに迷宮に入るんでしょ?起きて」
「ふぁ……おふぁよ、フィール」
「おはよう」
ちょっと眠そうなエリアをなんとか起こし、昨日買っておいたパンを軽く食べると、二人は出発の用意を整えた。そのまま昨日の酒場の前まで行くと、しばらくして約束の時間ちょうどにバルイが現れた。
「よ、ちゃんと来たみたいだな」
「ええ、それじゃ、これが約束の前金よ」
エリアに渡された袋の中をバルイは確認し、頷く。
「いいだろう。それじゃあ、見習い登録するからついてきな」
そして三人は冒険者ギルドへ向かった。年季の入った威厳のある木造の建物である冒険者ギルドは、迷宮のすぐ近くに建っている。フィールにとってはつい昨日に見習い登録を解除されたのもこの建物であった。
「よお、二人ほど、見習い登録を俺のパーティでさせてやりたいんだが」
「はい、かしこまり……かしこまりました」
ギルドの受付嬢はフィールとバルイの顔を見て微妙な表情になった。かたや使い捨てられた冒険者見習い、こなたパーティメンバーに逃げられたリーダーということで、昨日はギルドでも話題になっていたのかもしれない。
「ではー、えー、ご存じかもしれませんがー……今からお二人をパーティ見習い登録します。この登録は5年間有効です。登録失効時には、そこで縁を切るか、またはパーティの正規メンバーに昇格させるかをパーティリーダーの権限で決定してください。これはパーティリーダーに一任される権利ではありますが、あー、一般には、長期の見習い期間を経て正規メンバーに昇格させないような行為は、パーティに対する不信感を生む可能性がありますのでご注意くds……」
最後の方はフィールと目を合わせることもできずに、受付嬢は口ごもりながらマニュアルを読み上げる。こんな注意事項など屁にもしない悪辣パーティにまさにその行為をされてきたばかりのフィールに対して、面と向かってこれを言い切る度胸はないようだった。
「な、なお見習いの方からはいつでも登録を取り消すことはできます。これは……あー、その……パーティによる不当な労働力の搾取を防ぐための決まりとなっております……」
少し憐みの籠った目で見られて、フィールは居心地が悪くなる。結局このような予防策を取っていても、悪用するパーティと自分のような間抜けがいれば意味はないものだなあ、とフィールは思った。
「それでは登録料として一人当たり金貨一枚をいただきます」
「はい、金貨二枚です」
フィールは二人分の金貨を取り出した。受付嬢は意外そうな顔をする。
「決まりはありませんが、パーティリーダーが登録料を支払うことが多いです。それにあなたは確か……」
「クビになったんですけど、いろいろあって再出発することにしたんです」
フィールがそう言うと、受付嬢は何か言いたそうな顔をしたが、結局何も言わずに登録手続きを進めた。




