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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
9/37

9.薬草と水について聞いてみます

 ミックスサンドがなくなったところで本題に入りましょう。


「……今日は食料品を買いにきたんですか? ポーションも大量に買い込んでいるようですが」


「そうですね、日曜にまとめて食料品を買うようにしてるんです。今日はたまたまポーションも頼まれまして」


「……そうですか……先ほども言いましたが、少しダンジョンについてお尋ねしてもよろしいですか?」


「えぇ、答えられることであればですけど」


 よし、今度は警戒されずに聞くことができました!


「まず薬草についてなんですけど、あれはダンジョン内で育ててるんですか?」


「はい」


「ではなぜダンジョンの外に持ち出しが可能なんでしょう? 人工ダンジョン内で育ててるということは魔力で作られたものなんですよね?」


「えっと、それは……ん? なぜ薬草が魔力で作られてると思われたんですか?」


「え……だって人工ダンジョン自体が魔力で作られてるんですよね? ……ん? そういえばそれならなんで魔物の素材や魔石も持って帰れるんでしょうか……」


「……人工ダンジョンについてお詳しいんですか?」


「……詳しいわけではないですが昔少し教えてもらったことがありまして」


「そうでしたか」


 なにか秘密がありそうですね。

 おそらく私に話していいものかどうか悩んでいるのでしょう。


「……安心してください。絶対に誰かに話したりはしませんので」


「まぁ秘密にしてるわけでもないんですけどね。わかりました。ご質問にお答えしましょう。あくまでお答えできる範囲でですが」


 それから私は根掘り葉掘り聞きました。

 彼も嫌がる様子なく話してくれましたし。

 単純に私のことを薬草マニアとでも思ってくれたのでしょう。


「……なるほど。人工ダンジョンならではの薬草と水ということですか」


「そうなりますね。一般的な薬草がどうなのかは知りませんけど」


 どうやら薬草も水も大樹が持つマナという力が使われているようです。

 そして薬草を外に持ち出せる理由も聞きました。

 種子のみ魔力で用意して成長はマナの力で成長を促してるんだとか。

 水もこの大樹や森に流れてる水を循環する過程においてマナの力で不純物を取り除いてるらしいです。

 それによってダンジョン外へ持ち出すことが可能になったようです。


 しかもダンジョン内には栽培エリアという階層が存在してるらしいです。

 そこでは大量に薬草が栽培されてるというではありませんか。

 ……見たくありませんか?

 あの薬草が大量にあるんですよ?

 

 でも増々謎は深まりましたね。

 果たしてそんなことが魔物使いの彼にできるのでしょうか?

 失礼ですけどそこまでの魔力があるようには見えませんし。


 となると妹さんが鍵を握ってるのでしょうか?

 あの年齢にしては魔力量は相当おありのようですし。

 でも誰からも教わらずに錬金術はできないと思います。


「聞きたいことは以上ですか? 実は今日地下二階のリニューアル作業をしていまして早く帰らないといけないんですよ。サイダーご馳走様でした。ではこれで」


 えっ!?

 地下二階のリニューアル作業をしていると言いました!?

 今ですか!?

 つまり妹さんが関わってるということですよね!?

 というかそんな大事なときにお引き留めしてすみませんでした……。


 ……ん?

 栽培エリアは別階層なんですよね?

 まさかすでに毒消し草も栽培してるんですか?


「……あの!」


「まだなにか?」


 え……少しこわいです……。

 急いでるところ申し訳ないです……。


 既に毒消し草があるんならわざわざ重い物を買っていかなくても私がダンジョンに行って作ればいいんじゃないですか?

 解毒ポーションはおそらく明日からの毒対策に買ったんだと思います。

 ポーションは魔物急襲エリア対策でしょう。

 初級冒険者たちが準備してこないことも考えてのことですよね。

 でも解毒ポーションがこれだけじゃ足りるとは思えません。


「……私も行っていいですか?」


「はい?」


「……今からダンジョンに行ってもいいですか? 荷物片方お持ちしますよ」


「いやいや、話聞いてました? 今日はリニューアル作業で忙しいですし、ダンジョンには入れないんですよ」


 やはりこわいです……。

 しつこすぎて怒らせてしまったかもしれません。

 でも解毒ポーションを作ると言えば喜んでもらえるはずです。


「……それはわかってますけど……栽培エリアに毒消し草はあるんですよね?」


「それはもちろんありますけど……あなたはいったいなにがしたいんですか!?」


 え…………。


 なにがしたいって……管理人さんのために解毒ポーションを作ろうと……。


 なのになんでそんな強く言うんですか…………。


 なんで怒ってるんですか…………。


 そんなに私しつこかったですか…………。


 私はただみんなの役に立ちたかっただけなのに…………。


「あっ、すみません怒ってるわけじゃないんです。ただ、あなたの考えてることが全くわからないものですから。すみません失礼します」


 ……彼は店を出ていったようです。


 怒ってるわけじゃないって……怒ってたじゃないですか……。

 私だってあなたの考えてることなんてわかりませんよ……。


 ……もういいです。

 明日、パルドへ帰ることにします。

 毒消し草も見なくていいです。


「わふぅ~」


 ワンちゃんが私の足元に来て慰めてくれてるようです。


「……ありがとう……早く追いかけてください」


「わふ」


 ワンちゃんは最後に私の足に頭をこすりつけてから走り去りました。

 ……入り口のドアが開きっぱなしで良かったです。


 ……あれ?

 なんだか涙がとまらないようです……。

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