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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
8/37

8.町でばったり会いました

 今日は日曜日です。

 大樹のダンジョンもお休みなので町をぶらぶらしようと思います。

 もしかするとこの町でゆっくりできるのも今日が最後かもしれませんしね。


 といってもいつものように寝坊してしまいましたけど……。

 この一週間ずっと寝坊しちゃってます。

 やっぱりダンジョンが遠すぎるんですよ。

 さらにダンジョンの中では敵と戦いながら進んでいくわけですしね。

 しかも敵の数が多いんで初級魔法といってもそれなりに魔力を消費しますし。

 つまり毎日疲労が凄いんです。

 だから寝坊してしまっても仕方ないと思います。


 でもまさか自分が魔物と戦うことになるとは思ってもみませんでした。

 専門学校の選択授業で初級攻撃魔法を選んで正解だったようです。

 なんとなくカッコよさそうだから選んだだけなんですけどね。

 私が好きな黒のローブに合うのは回復魔法じゃなくて攻撃魔法のイメージですし。


 それよりご飯にしましょう。

 まだ行ってなかったパン屋はありましたっけ。


 あっ、あの店、人がいっぱいですね。

 なんのお店でしょうか?

 ……カフェ?

 カフェってお茶するところですよね?

 一人で本読んでる方もいるようです。


 ……これなら私でも入れるかもしれません。

 でもなにを注文したらいいんでしょう……。


 ……ん?

 前から歩いて来るのは……


「あっ」


「ん?」


 ダンジョンの管理人さんです!

 ワンちゃんもいます!

 今日は日曜日だから買い物に来てるんですね。


「あ、どうも、こんにちは」


「……こんにちは」


 向こうから声をかけてくれました。

 町で会っても私だと気付いてくれるんですね。


 ……それよりすっごく荷物が重そうなんですけど。

 両手に持ってる袋の中身は……ポーションでしょうか?

 違う形の瓶もあるようですね。

 おそらく解毒ポーションだと思われます。

 でも合わせて五十本くらいありません?


「今週は毎日来てくれてありがとうございました。ではこれで」


 背中のリュックもパンパンなんですけど……。

 これを持ってここからダンジョンまで帰るんですか?

 腕がちぎれちゃいますよ……。

 ワンちゃんに持たせるわけにもいかないですしね。


「……お持ちしましょうか?」


「え……」


 さすがにこれを見て見ぬ振りはできません。

 彼はまだ十四歳なんですからここは大人の私が助けてあげないと。

 それに今日じゃなくても明日持っていってあげてもいいわけですから。


「今から帰るところなんです。お気遣いありがとうございます」


「……あっ」


 警戒されてます!

 でも当然です。

 今までまともにお話したこともないわけですからね。


 ……そうだ!

 せっかくの機会だからダンジョンのことも聞いてみましょう!

 それに二人ならカフェにも入れそうです!

 問題はどうやって警戒されずにお誘いするかですね。


「……あ、あの」


「はい?」


「……凄く重たそうですし……少しそこでお茶しませんか?」


「え?」


 ……わかります。

 でもこの機会を逃すとダンジョンの話を聞くのもカフェに入るのもなしになってしまいます。


「……あの、そんな警戒しなくても」


「え? あ、すみません」


 ……困ってるようです。

 こうなったら多少強引にいくしかありません!


「あの!!」


「ふぁ!?」


「わふゅ!?」


「大丈夫ですから! 少しダンジョンについて聞きたいだけです!」


 言ってやりました。

 ワンちゃんまでビックリしてますが……。

 少し待ちましたが管理人さんはなにも返事してくれません。

 この方、噂によると凄く頭が回る方のようです。

 常になにか考え事をしてるようだとも聞きました。

 そういえば最初の受付のときも無言でなにか考え込んでましたしね。


「……あなたはいつもなにか考えてばかりですね」


「はい?」


「……ジュース奢ってあげますからそこのカフェに入りましょう」


「え、ちょっ」


 こうなったら実力行使です。

 片方の袋を奪ってやりました。

 そして私は一人でカフェに入ります。

 これなら嫌でもカフェに来るしかないでしょう。


「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか!?」


「二人です」


「ではテーブルにご案内いたします! こちらへどうぞ!」


 入ることができました!

 これで一つの目的は達成です!


 ……彼もちゃんとついてきてくれたようです。

 ワンちゃんが元気ないのが気になりますが……。


「……あっ、どうぞ座ってください」


「……はい」


 ワンちゃんも彼の足元にピタッとくっついてます。

 可愛い以外のなにものでもありません。


「……すみません急にお誘いしてしまいまして……実はダンジョンのことについて少しお聞きしたいんです」


「ダンジョン? ウチのダンジョンのことですか?」


「はい。あっ、先に注文しましょう。お好きな物頼んでください」


 私はなににしましょうか。

 ……メニュー多すぎません?

 コーヒーとミックスサンドにしてみましょうか。

 これなら二人でも食べられますしね。


「……お決まりですか?」


「はい! サイダー頼んでもいいですか?」


 ついでに店員さんを呼んでくれました。

 元気がいいですね……。

 さっきまでの警戒心はどこにいったのでしょう。

 こうしてると普通の十四歳なんですけどね。

 いつもはもう少し大人びて見えます。


「お待たせいたしました! ご注文はお決まりでしょうか!?」


「サイダーお願いします!」


「……コーヒーとミックスサンドお願いします」


「かしこまりました! すぐお持ちいたしますので少々お待ちください!」


 店員さんも元気ですね。


 ……あ、ワンちゃんが私を見てます!

 こわがらなくて大丈夫ですからね!

 ワンちゃん用の飲み物も頼んだほうが良かったのかもしれません。


「お待たせいたしました! サイダーをご注文のお客様!?」


「はい!」


 私の前にはコーヒーが置かれ、真ん中にミックサンドが置かれました。

 パン屋さん以外のお店でこうやって席について食べるのは初めてです。

 ミックスサンド頼んでたらパン屋さんと同じようなものですけど……。

 でも雰囲気が全然違うんです!


「……あ、どうぞサンドイッチも食べてください」


「いいんですか!? ありがとうございます!」


 ふふっ、喜んでもらえたようです。

 では私も頂きましょうか。


 …………美味しいですけどやはり私が作るクロワッサンやチーズ蒸しパンには劣りますね。

 こう思ってしまうと結局どのパン屋さんでもクロワッサンやチーズ蒸しパンを探すようになってしまうんです。


 きっと私の食生活はこれからもずっとこうなんでしょう。

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