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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
7/37

7.管理人さんでした

 今日も大樹のダンジョンに向かって歩いてます。

 ただいまの時刻はたぶん十時半くらいです。

 はい、寝坊しました……。


 昨日いっぱい歩いたせいで疲れていたようです。

 だって合計四時間近く歩いたんですよ……。

 しかも水をいっぱい持ち帰ったせいでリュックも相当重かったですからね。

 おかげで全身筋肉痛です。


 まぁ昨日は寝るのが少し遅くなったこともありますが。

 あの薬草と水で錬金してたら久しぶりに楽しくなってしまいました。

 だから今日もまた薬草を採りに行くんです。

 あっ、もちろん水もです。

 今日は大きいほうの錬金釜は宿に置いてきました。

 来週までいるつもりですから宿も一週間お願いしたんです。


 それと大樹のダンジョンについて宿の方や道具屋の店長さんから色々聞きました。


「おはようございます」


「……おはようございます」


 私は黙って100G渡しました。

 すると彼もなにも言わずに採集袋を二つ渡してくれました。


「お気をつけて」


 ……まさか彼がここの管理人だとは。

 しかも彼…………魔物使いらしいんです。


 町の方は色々と教えてくれました。

 どうやら人工ダンジョンは魔物使いがいなくては成り立たないそうです。

 つまり魔物使いであるということが管理人の条件なのでしょう。

 ダンジョンの中の魔物は彼の支配下にあるというわけですね。

 そう考えると彼のことが少しおそろしく見えてきます。


 でもそれと同時にもっとこのダンジョンのことが知りたくなってしまいました。

 錬金術師の性というやつでしょうか。


 それとさらに驚いたことがあります。

 なんと彼と妹さんの二人でこのダンジョンを切り盛りしてるというではありませんか。

 聞くところによるとつい先日、元々ここの管理人だった彼らのお爺さんが亡くなったそうです……。


 そのことを考えて宿で一人涙をこぼしてしまいました。

 しかも彼らも私と同じく両親がいないそうです。

 それに彼は十四歳、妹さんはまだ十歳だそうです。

 まだ子供なのに生活のために仕方なく朝から夜まで働いてるんです。

 これが涙を流さずにいられますか?

 私なんてなに不自由のない暮らしをさせてもらったというのに。


 町の人たちはみんなその事情を知ってるようでした。

 だからかわかりませんが町のみなさんは彼らに非常に好意的だったように思えます。

 彼は毎週日曜日にワンちゃんといっしょに町に買い物に来るらしいのでそれをみなさん微笑ましく見守っているそうです。

 ワンちゃんというのはおそらくさっき小屋の前で寝ていたあの子のことでしょう。

 そういや昨日も寝てましたね……。


 でも彼らに同情してばかりはいられません。

 彼らは自分の居場所を見つけてるんですから。

 私は今まさになにかきっかけを掴めそうなんです。

 ここの薬草と水の仕組みも調査してみたいと思います。

 調査といっても聞くだけですが。

 機会があれば妹さんに聞いてみましょうか。


 ……それにしてもダンジョンってやることが少ないですね。

 私の場合、目的が薬草と水だけってこともありますが。

 みなさんは魔物との戦闘のついでに薬草採集をするんでしょうけど。

 ブルースライムやオレンジスライムだと私の初級火魔法でも一発ですしね。

 ダークラビットでも二発です。

 この毛皮は素材としてそれなりの価格で売れますが、火で攻撃してしまってますから売り物にはならなさそうですし。


 薬草二十枚採ったらやることないので帰りましょうか。


「お疲れさまでした」


「……」


「昨日のビラの内容が少し変更になりましたのでこちらをどうぞ。お気をつけてお帰りくださいね」


 ……無言で帰ってきてしまいました。

 無言っていっても会釈だけはしましたよ?

 本当は人工ダンジョンのこととかも聞いてみたいのに。

 昨日のやり取りが申し訳なくて話しかけられません……。

 でも今日もちゃっかり採集袋は二つ頂きましたけど。

 だって薬草が欲しいんですもん。

 それに今週はまだいいですよね。


 でもよく考えたらなぜそこまで制限枚数に拘るのでしょうか?

 多くても少なくても彼らには関係のないはずなのに。

 むしろ多くしたほうがお客もたくさん来ると思いますが……。


 それよりビラがまた変わったって言ってましたね。

 昨日のはなにか不備があったのでしょうか。


 ……はっ!?

 もしかして私のせいで毒消し草が取りやめになったとか!?


 ……毒消し草はそのままのようです。

 安心しました。


 となると変わったところは……んん?

 新エリア?

 魔物急襲エリア爆誕?

 爆誕って凄そうですね……。

 でも私には関係なさそうです。

 そんな危ないエリアには絶対行きませんから。


 でもこれってポイズンスライムも急に襲ってくるってことですよね?

 そうすると冒険者のみなさんは毒まみれになるんじゃないですか?

 ここの冒険者のみなさんは初級者が多いようですし。

 毒を甘く見て解毒ポーションを準備してこない方もいそうですね。

 そう言ってる私も気をつけなければいけませんけど。


 明日こそは管理人さんか妹さんに話しかけてみましょう。




 ……あっという間に一週間が過ぎてしまいました。


 毎日薬草と水を目的にダンジョンへ通いました。

 でも結局ダンジョンの秘密についてはなにも聞けてません。

 薬草と水で満足してる自分もいました……。

 だってこの薬草凄いんですもん。

 それにこの水でパンを作るととても美味しいんです!

 ……すみません、適当に言い訳を考えました。


 なんだか二人のことを考えてしまうと話しかけられないんです。

 寂しくなってしまうと言うんですかね。

 特に妹さんを見るとマリンのことを思い出してしまいます。


 冒険者のみなさんとは少しずつ話せるようになってきましたよ。

 でもどうやらみなさん私のことを十五歳以下の子供だと思っているようです……。

 まぁ背が低いですしね。

 それこそあの妹さんより少し高いくらいです。

 もしかして管理人さんですら私のことを年下と思ってるのかもしれません。

 さすがに十四歳より下ってことはないと思いますが……。


 明日は日曜日なのでダンジョンもお休みのようです。

 私もゆっくりしようと思います。

 明後日は毒消し草を見るためにダンジョンへ行く予定ですがそれ以降はどうしましょうか。

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