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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
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5.人工ダンジョンに行ってみます

 あの……遠すぎません?


 大樹のダンジョンまでの道中、冒険者の方何人かに追い抜かれました。

 私、歩くのそんなに早くないですからね。

 体力にも自信ないですし。

 それにリュックが重いんです。

 せめて大きい錬金釜は宿に置いてきたほうが良かったのかもしれないです。


 いえ、そんなことよりも遠すぎるのが問題だと思います。

 楽しみすぎて八時前には宿を出たんですが、もう九時は過ぎちゃってるかもしれません……。

 もうこれ馬車の運行があってもいい距離じゃないですか?


 でもようやく大樹が大きく見えるようになってきました。

 一直線なのはわかりやすくていいですね。

 帰りもまたこの距離を歩くのかと考えると嫌になりますが……。



 ふぅ~、やっと着いたようです。

 あれは家ですか?

 右側には小さな小屋もあるようです。


 あっ、さっき追い抜いていった人たちが説明を聞いてるようです。

 受付はそこですか、少し待ちましょう。

 きれいな小屋ですね。

 作りたてって感じがします。

 受付は家に併設されてるんですね。

 ということはここに住んでるんでしょうか?

 夜とかこわくないんですかね……。


 やっと私の番が来たようです。


 ……あの?

 私が見えてますか?


「あの……」


「うわっ!」


 …………驚かれてしまいました。

 さきほどの男性の方たちと比べると私は背が低いですから気付かなかったのかもしれません。


 それよりこの子が受付をしてるんですか?

 どう見たって私より年下ですよ?

 まだ子供って呼ばれる年齢でもおかしくありません。


「……これは失礼いたしました。いらっしゃいませ。当ダンジョンをご利用でしょうか?」


「……はい」


「ありがとうございます。それでは当ダンジョンについてご説明させてもらいますね」


「……お願いします」


 説明は慣れてますね。

 というか少し話しただけで私よりよっぽどしっかりしてるのがわかります……。


 ……え?

 休憩エリアにトイレ?

 ダンジョン内にトイレがあるんですか?

 しかも男女別?


 あっ、やっと薬草エリアの話です!

 ……制限は十枚ですか。


 ……はい?

 薬草の根元にタグが付いている?

 タグより下を切らないと微量の電気でダメージを受ける?

 こわいですね……。

 で、採集した薬草は専用の袋に収納するんですね。


 ……えっ?

 その収納した薬草を袋から取り出すとタグが外れるんですか?

 どういう仕組みなんでしょうか……。


 しかもその瞬間から通常の薬草と同じ扱いになるって言いました?

 通常の薬草ということは道具屋で扱っている品物と同じということでしょうか。

 そうだとしたら少し残念ですね……。


 ……でも湧き水は凄いに違いありません。

 私にもこの大樹が特別なことくらいわかりますからね。


「なにかご質問ございますか? もう一度初めからご説明いたしましょうか?」


 実験のためにも薬草が十枚じゃ少ないですね。

 普通の薬草でも水が違えば効果も違うかもしれませんし。

 それに特別な薬草かもしれないという期待を捨てきれません。


「……その、袋なんですが」


「はい、こちらの袋についての説明をもう一度させていただきましょうか?」


「……いえ、説明はわかりました」


「そうでしたか。ではなんでしょうか?」


「……袋を二つ持ち込むことはできますか?」


「二つですか? 申し訳ありません。お一人様お一つとさせていただいておりまして……」


「……料金を二人分払うと言ったらどうですか?」


 さすがにこう言えば二つ頂けると思います。


「本日採集できる上限は薬草十枚のみとなっておりまして……」


 えっ?

 薬草ですよ?

 十枚手に入れたところで普通こちらは赤字なんですよ?


「……それは先ほど聞きました」


「失礼を承知で申し上げますが、袋を二つ持ち込まれてもお客様としては赤字が増えるだけだと予想されますが」


「……そんなことはわかってます」


 もしかして私が錬金術師だと気付いたのでしょうか。

 ポーションにして売れば利益が出ますからね。

 皮肉で言われてるのかもしれません。

 それに私は実験をしたいだけなんですから。


「では理由をお聞かせいただいても? 当方としましてはお客様の不利益になることをわかっててお渡しするようなことはできませんもので」


 この方、本気で私を心配してくれるのかもしれません……。


 ……よく考えるとさっきのも今のも相場を知らない方への忠告ですよね。

 私の被害妄想だったように思えてきました……。

 なんだか申し訳ないです。


「……薬草が欲しいんです……売るんじゃなくて薬草が欲しいだけです」


「それならダンジョンに入らなくても、町で購入されればよいのでは?」


「……ここの薬草が見てみたいんです……あと水にも興味があります」


「ここの薬草? 水?」


 あっ、やっぱり私が錬金術師だってことには気付いてないようです。

 先ほどはすみませんでした……。


 でもここまで悩む理由があるのでしょうか?

 やはり薬草が特別なものなのかもしれません。


「お兄、いいんじゃない? こっちが損するわけじゃないんだしさ。それに端から見るとお兄が悪者に見えるよ」


 可愛い子が出て来ました!

 マリンと同じくらいの年齢でしょうか?

 悩んでいたのは単に私のことを心配してくれてただけのようです。

 本当に自分が嫌いになりそうですね……。


「……では特別に二つ袋をお渡ししますが料金はお二人分いただきますよ? それとこのことは他言無用にしていただけますか?」


 他言無用?

 なぜ?

 やはり薬草が特別なんでしょうか?

 私にはこの方の考えていることが全くわかりません……。


「……はい、ありがとうございます……誰にも言わないので安心してください」


「あの、念のため確認させてもらいますが、魔物との戦闘の経験はございますよね?」


「……ここの敵程度なら大丈夫です……お気遣い感謝します」


 私が小さいからってバカにしないでください!

 ブルースライムやオレンジスライムなら楽勝です!

 それに年齢はあなたより上なんですからね!


 ……あっ、私はまた……。

 なんでこんな感情的になってしまうのでしょうか……。


 はぁ~。

 とにかくダンジョンに入ってみましょう。

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