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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
4/37

4.薬草に興味があります

 ……どうしたらいいんでしょうか。

 もうすぐ宿場町マルセールに着いてしまうんです……。


 私、この一か月なにしてたんでしょう……。

 はっきり言ってただ観光してただけです……。

 ここまで訪れた村と町の数は計五つになります。

 中でも大陸南東のリーヌと南西のサウスモナは大きい町だけあって長居してしまいました。


 私は旅に出る前からなにか成長したのでしょうか。

 しいて言えばクロワッサン作りが上手くなったことですかね。

 毎日違うパン屋さんに行って色々研究もしましたからね。

 錬金釜で作ってる最中にもサクサク感を感じ取れるようになりました。

 これならきっと師匠も喜んでくれるはずです。

 今後はパン作りが得意分野ですと言えるかもしれません。


 でも錬金術師が錬金釜で作るパンなど誰が買ってくれますか……。

 それならパン屋さんに行きますよね。


 パン作りは上手くなったんですがナポリタンは全然成長してません。

 夜にパスタを食べられるようなお店に入る勇気が出なかったんです。

 夕食はナポリタン以外に考えられませんし。

 だから結局毎晩自炊してました。

 ナポリタンは錬金釜では無理なので少し面倒なんですよね。

 あっ、麺は自分で錬金したものを持ってきてますよ?


 一応毎晩どこかのお店に入ろうと努力してはみました。

 でも結局宿に戻ってしまうんです。


 それよりも食というものに興味を持ち始めてる自分がいることに気付いてしまいました。

 特にお肉を焼いた匂いがとてもいいんです。

 ステーキやハンバーグを食べてみようかと何度も思いましたよ。

 でも女性一人で入ってるのはあまり見かけませんし、食べ方もわからないので入る前に不安で押しつぶされそうになります。

 それなら宿に帰ってナポリタンを作ろうと思ってしまうんです……。


 そうこう考えてる間にマルセールに着いたようです。

 パルドを出発したのが3月1日で今日が3月31日。

 つまり明日で目標の一か月が経過します。

 ここからパルドまでは一日半程度なので、このまま次の馬車に乗るとちょうど明日帰れます。


 でも本当にこれでいいのでしょうか……。

 今だってずっと食べ物のことしか考えていませんし。


 ……そう思えるだけでも成長したのかもしれません。

 今まで食に関してこれほど真剣に向き合ったことはありませんでした。

 ただ師匠が食べてるものをなにも考えずに同じように食べてきただけです。


 錬金術に関してもそうです。

 師匠がやってることをずっとマネしてきました。

 専門学校では知ってる内容をただ聞いてるだけでした。

 正式に仕事になってからも基本は同じです。

 師匠の元に届く錬金依頼をただこなすだけでした。

 思えば自分からなにかしたことなど私にはないのです。


 いっそのこと北ルートで帰ってみますか。

 このままでは師匠にどう報告したらいいのかもわかりません。

 そういえばマリンへのお土産もなにも買ってませんし……。

 はぁ~、自分が嫌いになります。


 とりあえず明日にパルドへ帰るのはやめましょう。

 ここは人の行き来が盛んな宿場町で有名ですし、今日はここで宿を取ることにします。



 ……確かに小さな町にしては人が多い気がします。

 大陸北西と南西、そして東の王都への経由地と言われてるだけありますね。

 確か人口は千人ほどでしたか。

 その割に宿屋や飲食店が多いですね。

 しかも宿がリーヌの町と同じくらいの料金です。

 それだけ需要があるということなんでしょう。

 心配なので先に宿を取っておきましょうか。


「いらっしゃいませ」


「一泊お願いしたいんですが。一人です」


「ありがとうございます。料金は300Gになります。お若いですね、もしかして魔道士の方ですか? よろしければこちらもご覧になってください」


「……」


 また魔道士に間違えられました。

 もうこの旅で何度目でしょうか。

 でも普通そう思いますよね。

 それにこんなに大きなリュックを背負ってれば旅をしてる冒険者と思われて当然です。


 ところで紙を渡されましたがなんでしょう?

 えっと…………大樹のダンジョン?

 どこかで聞いたことがある気が……師匠が言ってたかもしれないです。

 私が小さいころなんで記憶が曖昧ですが……。

 確か錬金術で作られた人工ダンジョンだとか……。


 ん?

 薬草採集?

 大樹産の美味しい湧き水?

 休憩エリア?

 ダンジョンに休憩エリア?

 そもそも人工ダンジョンってどういうものなんでしょうか……。


 しかも明日がリニューアル初日って書いてます。

 ……行ってみるしかないですね。

 ダンジョンとなると魔物がこわいですがこの程度の魔物なら私でもなんとかなりそうですし。

 というか入場料金50Gって商売する気あるんでしょうか……。


 でも薬草に枚数制限?

 取りすぎを防ぐためですか?

 人工ダンジョンの薬草って普通のものとなにか違うんでしょうか。

 そもそも錬金術でできてるダンジョンなのにどうやって薬草を?

 薬草も魔力でできてるってことですか?

 それをダンジョンの外に持ち出したらどうなるのでしょう……。


 なんだか凄く気になってきました。

 水も美味しそうな書き方されてますし。

 魔力の薬草と魔力の水で錬金したら凄いポーションができたりするんじゃないでしょうか?


 ふふふっ。

 私、この旅で今一番興奮してるかもしれません。

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