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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
3/37

3.町を探索します

 おはようございます。


 ……そうでした。

 私は今一人なんです。

 師匠やマリンはここにはいないんです。

 なんだかとても寂しくなります。

 これがホームシックというやつなのでしょうか?

 マリンは一人でも眠れてるといいんですけど……。


 思えば私が九歳のときにマリンといっしょに住むことになりました。

 マリンも私と同じく師匠に養ってもらえることになったんです。

 当時マリンはまだ三歳でしたか。

 それから八年、ずっと同じ家で育ってきましたからね。

 血は繋がってませんが本当の妹のように可愛いんです。

 寝るときだってずっと同じ部屋だったんです。

 つまりマリンだけじゃなく私も部屋で一人で寝るのは久しぶりだったんですよね……。


 ……ダメですね。

 一瞬このままパルドへ帰ってしまおうかと考えてしまいました。

 まだ一日しか経ってないのに。

 そんな弱い弟子だと師匠に見捨てられそうです。


 気を取り直してクロワッサンでも作りま……いや、やめましょう。

 せっかくリーヌに来てるんですからこの町のパン屋さんに行くべきですよね。


 すぐに荷物をまとめて宿を出ました。

 それから少し歩きましたが……人が多いです。

 まだ朝早いのに。

 やはり観光地だけあって旅行に来てるような方もたくさん見受けられます。

 東の大陸との国境になってるということもあるんでしょうね。

 冒険者の姿もちょくちょく見かけます。

 彼らは冒険者ギルドへ向かっているんでしょうか。


 そんなことよりパン屋です。

 パルドまでとはいきませんが見た感じ結構な数がありますね。

 それにどこもお客さんでいっぱいです。


 朝なのでクロワッサンが美味しそうな店に入ろうと思います。

 ……あっ、一番人気クロワッサンって書いてます。

 ここにしましょう。


「いらっしゃいませ~!」


 大きなクロワッサンですね。

 まずは朝食用のクロワッサンを二個確保と、昼食用のチーズ蒸しパンは……あっ!

 今度はありました!

 やはり昼はチーズ蒸しパンが定番ですよね。


「50Gになります! ……ありがとうございましたー!」


 う~ん、知らない土地だと食べる場所探しに苦労しますね。

 お店の中で食べれるところだといいんですけど。

 ……そうだ、冒険者ギルドに行ってみましょうか。

 さっき冒険者のみなさんが歩いて行ってた方向ですよね。



 ここですね。

 なかなか風情のある建物です。

 これでも私は王都の冒険者ギルドには何度か入ったことがあります。

 入っただけで依頼を受けたことはありませんが……。


 酒場もあるおかげかイスとテーブルもたくさんあります。

 どうやら自由に使っていいみたいですね。

 みなさん朝食を食べながらパーティで依頼を検討中といったところでしょうか。


 ではクロワッサンをいただくとしましょう。

 ……あっ!

 コーヒーを買うのを忘れてました!

 ……仕方ないですね。

 ここで作りましょうか。


 一応リュックで壁を作りましょう。

 小さいほうの錬金釜を出して……材料を入れて……えいっ!


 ……ふぅ、こういう場所で錬金するのは初めてですね。

 錬金術師だってことは大っぴらに言うもんじゃないって普段から言われてますし。

 あまり目立たないようにしないとどんなトラブルに巻き込まれるかわかりません。


 さて、ようやく朝食です。


 ……うん、これは美味しいですね!

 サクサクとしっとりのバランスが絶妙です。

 使ってるバターの風味もいいですね。

 これは勉強になります。


 それにしてもここのギルドもけっこう人が多いですね。

 どんな依頼があるんでしょう。


「あの、もしかして魔道士だったりしますか?」


「え……」


 コーヒーを飲んでたらいきなり声をかけられました。

 三人組の冒険者パーティのようです。


「ローブを着てるのでそうかなと思いまして……」


 確かに私は一見魔道士に見えますね。

 初級攻撃魔法程度なら使えますがさすがに魔道士さんに申し訳ないです。


「……すみません、ただローブを着てるだけで魔道士ではないんです」


「そうでしたか……失礼しました」


 残念そうに去っていきました……。

 おそらくパーティメンバーを探しているのでしょう。

 魔道士は重宝されますからね。


 私がローブを着ているのは魔力を高めるためです。

 錬金術には魔力が重要ですからね。

 それにこのローブを着てると集中できる気がするんです。

 着心地も申し分ありません。

 小さいころから黒のローブがお気に入りなんです。


 そろそろ出ましょうか。

 次は道具屋にでも顔出してみましょう。

 いい薬草があるかもしれません。



 ……う~ん、普通の薬草ですね。

 まぁ仕方ありませんか。

 パルドにいれば素材に困ることありませんからね。

 種類や品質を考えてもやはりパルドにいるのが一番だと思います。


 でもそうすると私はなんのために旅に出たのでしょう。

 師匠は私のことを器用貧乏だって言いました。

 要するに平均的で突出するものがないということです。


 確かに得意分野はと聞かれてもどう答えていいかわかりません。

 好きな分野は薬草から作るポーションなどの回復アイテム系なんですが。

 でもポーション系は錬金術師の基本ですしね


 師匠は全てにおいてレベルが高いんです。

 魔道具作成なんかも得意としていますし。

 最近ではマリンも魔道具作成を覚えていってます。

 もしかすると既に私よりマリンのほうが腕が良かったり……。


 はぁ~。

 まだ二日目だっていうのに気力がなくなりそうです。

 でも泣き言ばかり言ってられません。

 こういうときは旅行だと割り切って楽しんでみるのもいいのかもしれません。


 とりあえずこの町で一週間過ごしてみることにしてみます。

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