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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
対策本部編

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2.謎のダンジョンが出現したようです

「謎のダンジョン?」


 私とマリンは師匠が言った言葉を復唱しました。


「えぇ、謎っていうのは魔物によるダンジョンか人工ダンジョンかがわからないってこと」


 魔物によるダンジョンについてはもちろん聞いたことがありますし本でも読んだことがあります。

 現在各地に残ってるダンジョンは全て魔物によるダンジョンです。

 どれも大昔にできたものばかりでここ数百年新たに出現したものはないはずですが。


 マリンはそのことを知らないはずなので丁寧に説明してあげました。

 そしてすぐに理解してくれました。


「じゃあ人工ダンジョンの可能性が高いってこと?」


「それを判断する前にそのダンジョンの調査結果を聞いて」


 そして師匠の口から新たに出現したダンジョンの調査結果が話されました。



 ……畑のど真ん中に急にダンジョンの入り口が出現?

 ダンジョン最奥に水晶玉があったんですか?

 水晶玉を外に持ち出したらダンジョンが消滅?

 つまり水晶玉がダンジョンコアだったんですよね?

 それって人工ダンジョン確定なんじゃないですか?

 でもダンジョン周辺に怪しい人や魔物の形跡はなかったと?


「……でもその冒険者の方、よくそこまで冷静に調査できましたね。ダンジョンコアのことまで知ってるなんてよほど博学なんでしょう」


「それになんだか人工ダンジョンのことを知り尽くしてるみたいに思えるよ? その人の自作自演か身内の人が作ったものなんじゃない?」


 マリンの意見に賛成です。

 入る前から人工ダンジョンである可能性が高いことを疑ってたのは明白ですから。


「あっ、どこでダンジョンが発見されたか言ってなかったわね。マルセールの町から徒歩十五分程度のところらしいわよ」


「マルセールですか!?」


「えぇ」


「……もしかして調査した冒険者というのは大樹のダンジョンに通ってる冒険者なんですか?」


「おそらくだけど、ララよ」


「ララちゃん!?」


 私とマリンは揃って声をあげました。


 ララちゃんならなにもかも納得できてしまいます。

 でもそれよりよくそんな危険なところにララちゃんを行かせましたね……。

 ロイス君らしくありません。


 …………いや、だからこそララちゃんだったんですね。

 お二人なら最初から人工ダンジョンの可能性も疑って当然です。

 そんなところになにも知らない冒険者を行かせて死なせるわけにはいきませんから。


「今のマルセールの町長は私の昔からの友達なんだけどね、その子がロイスに依頼したらしいの。調査に行く冒険者を選んでほしいって言ってね。おそらくそれでララが向かうことになったんだと思う。調査書には十一歳女としか書いてなかったからね。間違いだと思って誰も信じてなかったけど」


 十一歳女の冒険者なんて普通いるわけないですからね。

 でもユウナちゃんはいっしょじゃなかったんでしょうか?

 なにか事情があったのかもしれません。

 それにきっとシルバ君やピピちゃんたちは同行してるはずです。

 人間や魔物のニオイや形跡を辿るなんてさすがのララちゃんもできません。


「ではララちゃんたちが魔物のダンジョンか人工ダンジョンかは判断できないって言ってるってことですよね?」


「そうなるわね」


 それなら私が考えたところできっと同じ意見になるんだと思います。


 ……でもやっぱり考えずにはいられません。


 まず魔物によるダンジョンの場合を考えてみましょう。


 ここ数百年出現していないのはなぜでしょうか。

 ……やはり魔王が死んだからだと思います。

 大樹のダンジョンにあった本にそのような記述がありました。

 魔王は魔力でダンジョンを作るのが得意だと書いてありましたし、ドラシーさんにもそう聞いた覚えがあります。


 でも仮に魔王が作ったとするならダンジョン自体は物理的な物質で作られてるはずです。

 魔力で作るといっても山や地下をダンジョン化するだけらしいです。

 現に今世界中に残っているダンジョンがそれを証明しています。


 次に人工ダンジョンの場合を考えてみましょう。


 ダンジョンコアである水晶玉があったことから一見こちらの可能性が高いように思えます。

 でも普通ダンジョンコアを無防備で置いたりしません。

 水晶玉が破壊されることを望んでいたのであれば別ですが。

 その場合は魔力が暴走し、おそらくダンジョン内にいた人物はただではすまないはずです。

 だからそんなことを考えるのは悪い錬金術師だけです。


 でもどうやって人工ダンジョンを作れたのでしょうか?

 そっちのほうが気になります……。

 大樹のダンジョンのように魔物使いを管理人に設定しないと効果が発揮できないというわけでもなさそうですし。

 でもそれほどの錬金術師が自分の成果物を確認しないでいられるでしょうか?


 ……やはり変です。

 ダンジョンの規模はかなり小さなものだったんですよね。

 そんなダンジョンを公開しようと思うでしょうか?

 近くに大樹のダンジョンという素晴らしいダンジョンがあるのに。


 ……なるほど、これはすぐには答えが出ませんね。

 考えられるとしたら……


「カトレア、あなたはどう思う?」


 ……あくまでまだ推測段階ですもんね。


「魔王が復活した可能性があるかと……」


「魔王!? 魔王!?」


 マリンが驚いています。

 魔王のことが書かれた本なんて王都の図書館にもないかもしれませんしね。


「……奇遇ね。私も同じ考えだわ」


 え…………師匠が言うと本当に思えてくるじゃないですか。


「えっと、師匠? 理由をお聞きしても?」


「きっとあなたと同じよ。地下の本を読んだんでしょ? それともダンジョンコアから聞いたことあるの?」


「どちらもです。魔王が死んだのは千年前ってところでしょうか? でもそうするとそのときにはまだ大樹のダンジョンのような人工ダンジョンは存在してなかったことになりますよね?」


「そうね。でもあなたも魔王が人工ダンジョンの作り方を覚えたって考えたってことでしょ? それに魔王の魔力は世界中のどこにでも届くはずだからどこにだってダンジョンを作れるはず。ある例外の場所を除いてね」


 例外……私にはそれがなにかわかります。

 そのために大樹のダンジョンは作られたのですから。


「マナですよね?」


「えぇ。魔王はマナには手が出せない。今回出現したダンジョンはそのマナが満ちてる範囲からわずかに離れた場所」


 手が出せないということは敵視してる可能性もあるということですよね。


「魔王は人工ダンジョンの仕組みが自分の魔力を溜めるために効果的と考えたのかもしれません」


「……なるほど。そう考えると腑に落ちるわね。人工ダンジョンと同じように冒険者の体力や魔力を吸収しそれを自らの魔力に変換するつもりね。でもなぜ魔王は人工ダンジョンのことを知ってるのかしら? マナで妨害されてるはずでしょ?」


「師匠はご存じないかもしれませんが、今のようにマナで満ち溢れるようになったのは去年の五月くらいからなんです。私が最初に訪れたときはまだ森には魔物が発生していたようですし」


「……つまり魔王は一年以上前には復活してたってことね。今まで魔力を溜めてたんだわ」


 私もそう思います。

 というか魔王復活を確定事項のように話を進めていますがいいんでしょうか……。

 マリンなんて魔王やらマナの話になってからついてこれていません。


「どうしましょうか? ロイス君たちにこの意見を伝えますか?」


「……いえ、ダンジョンコアがいるんだからおそらく魔王の可能性は考えてるでしょう。今は次のダンジョン出現に備えて待機中ってところじゃない?」


 なにやら危機が迫っているような予感がします……。 

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