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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
王都帰還編

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12.弟子を卒業させられました

 師匠から弟子卒業を言い渡された後、魔道具一つ一つについての品評が始まりました。

 色々とメモを取ってきてるようです。


 全ての品評が終わったころには三時間が経過してました。

 私の補足も交えながらだったのでこれだけかかってしまったんです。

 でもどんな説明もすぐに理解してくれる師匠はさすがです。


「……まぁ全体的には85点てところね。あなたがいないとメンテナンスできないものが多すぎるわ。それにもう少し工夫すると良くなるものがいっぱいあるでしょ」


 85点…………。

 今までの最高点です。

 クロワッサンやチーズ蒸しパンでも70点が最高でした。

 ポーション系は普通すぎて採点すらしてもらったことないです。


「アイデアを出したのはほとんどロイスみたいだけど、それを全て具現化できたのはあなたの実力よ。想像力も必要になるし、並の錬金術師には到底できないものばかりだったわ。ダンジョンコアですら悩むような魔道具やシステムだからね」


 師匠が言うようにほとんどロイス君のおかげなんです。

 私はロイス君の言う通りに作っただけなんですから。

 それでも褒めてもらえて嬉しいです。


「あの……この袋はどうでしょうか?」


 私が一番採点してほしいのはこの袋です。

 師匠だって驚いてくれたんですからきっと高得点なはずです。


「……75点ね」


「え……」


 …………。


 師匠が持ってる袋よりも高性能なんですよこれ……。

 100点の期待だってしてました……。


「……理由をお願いします」


「オリジナリティが全くないからよ。あなたは私の袋を昔からずっと知ってるしね。それに大樹のダンジョンではあなたが行く前からこの袋を作ってたみたいじゃない。途中から状態保存機能を付けたらしいけどそれもロイスのアイデアでしょ? つまりあなたはその袋を丸パクリしただけなのよ」


 ……でもダンジョンの袋は外に持ち出せないですもん。

 これ作るのにすっごく苦労したんですもん。

 容量はこっちのほうがだいぶ上ですもん。

 しかもロイス君にも一つお渡ししてきたので二つも作ったんですよ。


 そりゃ見た目や機能はそのままかもしれないですけど……。

 この前はダンジョンで使われてることを知らなかったから驚いてくれたんですね……。

 結局私は自分一人ではなにもできないんです……うぅ。


「あぁ! 違うのよ! 泣かないで!」


 なにが違うんですか。

 どうせ私なんてロイス君のアイデアと人工ダンジョンがなければなにもできませんし……。

 こうなったら泣きまくってスッキリするのです。

 ユウナちゃん以上に泣きまくるのです。


「ちょっと~、ほら、みんなも心配してるわよ?」


 みんな?

 あぁ、お昼寝から起きてきたんですね。

 そろそろ帰らないと従業員の送迎に間に合いませんよ?


「ちょっと厳しく言っただけで、丸パクリさえなければ95点だからね! ピピ用に作ったやつは100点よ!」


 ピピちゃん用のだって丸パクリじゃないですか。

 外見も容量も小さくなって、しかも状態保存はかかってないんですよ。

 やっぱりこっちの袋のほうが点数高いはずです。


「なんでその袋が100点じゃないかわかるわよね?」


 なんで?

 ……なぜでしょうか。

 なにか欠陥があるということですよね。

 見た目がダサいとかですか?

 でもそれは個々の主観によりますし。

 ピピちゃん用の袋は100点なんですよね。


「……性能が良すぎるからですか?」


「そうよ。その袋が誰かに知られたらどうなるかくらいわかるでしょ?」


 もちろんそれは考えてましたよ。

 ロイス君にも人前では使わないように言ってありますし。

 私だってそれくらいわかって作ってます。

 それでも師匠がここまで言うのにはなにか理由があるのでしょうか。


 …………いえ、そうですよね、わかってます。

 私の自己満足にすぎないからです。

 身内しか使えない袋を作ったところで便利になるのは私たちだけですもん。

 今の私ならピピちゃん用みたいに容量をもっと少なくして状態保存もかけなければ比較的簡単に作れますし。


 冷静になったらいつの間にか涙がとまってました。

 魔物さんたちみんなが心配して傍にいてくれたからかもしれません。


「確かに町のみなさんに使ってもらうなら容量はこんなにいりませんし、状態保存もないほうがいいです。状態保存を中途半端にかけると魔力の補充が必要になりますしね。それなら品物に状態保存をかけたほうが効率はいいでしょうし」


「わかってるならいいのよ」


 師匠はケチをつけてるわけではありません。

 普通の感覚というものを改めて教えてくれているんです。


 でも普通の袋をいっぱい作れば私が持っている袋も見た目は普通に見えますよね。


「師匠、これの簡易版の袋をいっぱい作ってもいいのでしょうか?」


「いっぱいって例えばあなたの魔力で一日にどれくらい作れるのよ?」


「う~ん、簡易版なら一時間に二~三個ってところでしょうか。ほかにやりたいこともありますし、あまり時間と魔力はとられたくないのでそれが限界ですね」


「……」


 そうです、私にはやらないといけないことがあるんでした。

 そのためにここに帰ってきたんじゃないですか。


「師匠、実は私が帰ってきたのは……」


「聞いたわ。装備品への魔法付与でしょ? それなら私も多少知識があるから教えてあげる。幸いにも仕事はあなたがやってくれたおかげで時間はあるしね。それと簡易版の袋も毎日三個作りなさい。修行にちょうどいいから。でも一時間で作れるなんてあなた少しおかしいわよ……袋内部の異空間の制御をどうやってるのかしら……私にも作れるのかな……」


 魔法付与のことはロイス君たちから聞いたんですね。

 多少知識があるということは師匠でも完璧にはできないということなんでしょうか?

 やはり前途多難な道のりになりそうです。

 それにしても弟子卒業したばかりでまたすぐに教わっててもいいのでしょうか……。

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