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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
王都帰還編

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10.図書館に行きます

 十五時になってマリンが帰ってきました。

 今日は授業が少ない日だったそうです。


 私も三日分の依頼分を全て完了させました。

 やることがなくて暇だったのでつい三日分の仕事をしてしまったんです。

 店を閉めるわけにもいきませんからね。


 でもマリンが帰ってきてくれたおかげで店番を任せることができました。

 なので私は図書館に来てます。

 ここの図書館は世界最大級ですから書物がとても豊富にあるんです。

 昔から週に一回は来てましたね。


「あっ! カトレアちゃん!」


「……こんにちは」


 受付のお姉さんが大きな声で出迎えてくれました。

 私は遠慮して小声での挨拶です。

 図書館は静かにしないとダメですからね。


「久しぶりね。どうしてたのよ?」


 今度はお姉さんも小声です。

 お姉さんと言っても少し年齢は高めですけどね。

 そこはまぁお姉さんでいいでしょう。


「九か月ほど旅をしてきまして」


「旅? あなたが? 一人で? 大丈夫だったの?」


 お姉さんは私のことを小さいころからずっと見て来てるので心配なのでしょう。

 私もうすぐ十八歳になるんですよ。

 でもここでは十八歳になる年齢だと学校に行ってる人も多いですからね。

 お姉さんの中では十八歳までは子供だと思ってるのかもしれません。


 お姉さんとの会話もそこそこにして本を探そうと思います。


 ……このあたりですね。

 私が探してるのは鉱石や魔石関係の本です。

 今までこの分野には全く興味がなかったんです。

 でも縁あって鉱石や魔石に触れる機会が多くなりました。

 だけどそれらの素材を活かす術は私にはありませんでした。

 だから基本的なことから勉強しようと思ったんです。



 本を探していたらすぐに閉館時間の十七時になってしまいました。

 五冊ほど借りてきたので家で読むことにします。


「お姉ちゃん! おかえり! お腹空いたよ!」


「ただいま。店番ありがとうございました。すぐご飯の準備しますから少し待ってくださいね!」


「うん! 今日はなにかな~!」


 ふふっ、もちろんナポリタンではありませんよ?

 トンカツとかどうでしょうか?

 ダンジョン産のブラックオークの肉ですから魔力も豊富です。

 それにダンジョン産のキャベツをたっぷり添えましょう。

 お米もいっぱい頂いてきましたから錬金釜で炊きあげましょうか。


「お姉ちゃん、なんだか楽しそうだね!」


「そうですか? マリンだって美味しいもの食べたいでしょう? この間まで私が住んでいた家に、食事を楽しまないのは人生の半分以上損してるって言う人がいたんです」


「へぇ~……」


 あ、マリンが悲しい顔をしてます。

 今まで食事を楽しみにしてあげられなくてごめんなさい。


 でもまだ十二歳で気付けたから良かったじゃないですか。

 私なんて……


「あっ! 違うよ!? 師匠はなんで食に興味がなくなったのかなって思っただけだからね!? そりゃお姉ちゃんも可哀想だとは思うけどさ……。でも私は大丈夫だからね!?」


 気を遣わせてしまいました……。

 それも含めてごめんなさい。


「師匠は私たちの魔力向上を意識しすぎてあのような食事に辿りついたんだと思います。魔物のお肉とかはそう簡単に手に入るものじゃないでしょう? そうなると自分で錬金するのが手っ取り早いですからね」


「そっかぁ~。私たちのために師匠にも無理させちゃってたんだね」


 私自身は無理してるつもりなかったんですけどね……。

 もしかして師匠は私が好きだと思ってずっとあのメニューにしてた可能性もあります。

 一度も不満を言ったことなどないですから。

 むしろ錬金の成果を見てもらえると思って喜んでたかもしれません。


 そういえば師匠の口から好きだなんて言葉聞いたことないかも……。

 昨日も好きなわけじゃなく魔力が入ってるからって言ってましたしね……。

 どうやら今まで勝手に私が変に解釈してたようです……。


 マリン、師匠、ごめんなさい。


 師匠は順調ならもうそろそろ大樹のダンジョンに着くころですよね。

 ロイス君たち、師匠をどんな顔で迎え入れるのでしょうか。

 私のせいで師匠が変な目で見られることなければいいんですが……。


 でもユウナちゃんはすぐに聞いちゃいそうなのです。

 ロイス君は聞きたいけど聞けなくてそれが顔に出ちゃうと思います。

 ララちゃんは興味ありながらも聞いてはいけないことだと思って二人を黙らせようとするはずです。


「お姉ちゃん!」


「え? なんです?」


「えぇ~聞いてなかったの~。お姉ちゃんさ、昨日も思ったけどなんかぼーっとしてること増えたよね~。なにか考えてるんだと思うけどさぁ~」


 え……。

 そんなのまるでロイス君みたいじゃないですか……。


「そんなことないですよ。ほら、ご飯が炊きあがりました。トンカツとキャベツは状態保存してあるものですが」


「えっ、トンカツなの!? わぁーい! 小さいころ食べたことあるんだ!」


 マリンはここに来るまでのこともよく覚えてるんです。

 三歳のときのことなんて私はなにも覚えてません。

 四歳までいっしょにいたはずの両親の記憶すらもうほとんどありませんし。


「じゃあ食べましょう」


「うん! いただきまーす!」


 ……ふふっ、どこから食べようか悩んでるのが可愛いです。


「マリン、トンカツにはこのソースをかけてみてください。キャベツ用のドレッシングも数種類ありますから好きな味を見つけてください」


「え……ドレッシング多すぎない?」


「好みがありますからね。そのときの気分にもよりますし。数種類を混ぜて自分だけの味を作る人もいますし」


「ふ~ん、奥が深いんだね」


 そうです、奥が深いんです。

 ララちゃんは常に研究してますからね。

 審査員はロイス君ですからハードルが高いんです。


「……うん! 美味しい! 明日もこれでいいかも!」


「明日はチキン南蛮というものにしますから楽しみにしていてください」


「チキン南蛮!? 初めて聞いた! お肉ってこんなに美味しいんだね!」


「調理法によって色んな料理に変わりますからね」


「魚はないの!? お刺身ってやつだっけ?」


「マルセールではお魚はほとんど流通してないんです。そのせいか大樹のダンジョンでもお魚料理は出なかったんですよ。でも今度の四月からはお魚も出す予定って言ってました。中級者向けの階層も作るんですよ? そのときだけはお手伝いに行こうかと思ってるんです。改良が必要な魔道具もいくつか出てきそうですしね」


「……お姉ちゃん、ダンジョンの話ばかりだね。そんなに楽しかったんだぁ~? いいなぁ~」


 楽しかったことは間違いないですがそれ以上に成長できたからです。

 いつかマリンといっしょに行けたらいいですね。

 そのためにも今はもっと修行しなければなりません。

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