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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
王都帰還編

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9.錬金屋のお仕事をします

 まだ九時前ですけど、とりあえず店を開けました。

 ウチの店の営業時間は基本十時~十七時です。

 師匠は朝が弱いですからね。

 

 マリンはいつも通り学校に行きました。

 師匠は今日の夕方にマルセールに着くはずですから少なくともあと三日間は帰ってこないはずです。

 もしかしたらもっと帰ってこないかもしれませんが……。


 さて、店の入り口を気にしつつ、作業部屋で仕事をすることにします。

 今日作るものは明日以降の納品分になりますので急ぐ必要はありません。


 まず最初の依頼は……ポーションが500本ですか。

 以前の私ならこれを多いと感じていたでしょう。

 でも今の私は違います。

 なぜなら新しい錬金釜を開発しましたからね。


 この錬金釜が今までの錬金釜と大きく違うのは中身の容量です。

 500本くらいなら一度の錬金で作れてしまいますからね。

 もちろん外見の大きさは愛用の小さい錬金釜とたいして変わりません。


 それと蛇口を付けてみました。

 ちゃんと瓶の口の少し上にあります。

 これで効率アップは間違いなしです。


 大樹のダンジョンには錬金術師じゃなくてもポーションが作れる魔道具を設置してきたんです。

 あれが表に出たら世の錬金術師が困ることになるので内密にしてほしいですね。


「あれ? もう開いてるのか?」


 店にお客さんが来たようですね。

 ここでの接客も久しぶりなので新鮮に感じます。


「おはようございます」


「あれ!? カトレアちゃん! 帰ってたのか!」


「はい。昨日帰ってきたんです。受け取りですよね? 少々お待ちください」


 常連の道具屋さんでした。

 この方は昔からずっと毎週水曜に来てくれます。

 パルドには道具屋さんがいっぱいあるんですよ。

 地方へ卸すことを専門にしてる業者さんも多いです。

 おかげで錬金術師の仕事は安泰なんです。


 ふぅ~、数が多いので作業部屋から台車に乗せて運びます。


「お待たせしました。ポーション300本、ハイポーション50本、メガポーション10本、エーテル100本、ハイエーテル30本、メガエーテル10本です」


「あぁ、ありがとう。じゃあこれで。それとこれ来週の依頼分ね」


「ありがとうございます」


 道具屋さんは台車から馬車へと荷物を積みかえます。

 私が作った袋を使えばもっとスムーズなんですけどね。

 馬車を引くお馬さんも荷台が軽くなって嬉しいと思うんです。


 でも量産が無理な現状ではどうにもできませんよね。

 数少ない袋を取り合うことになりそうですから。

 そういうことを普段から意識しなさいと師匠から言われてます。

 錬金術師という特別な職業だから尚更なんだそうです。


「よし、終わった。ところでカトレアちゃんはどこを旅してきたんだい?」


「この大陸南部ですね。反時計回りでマルセールまで行って、そこから横断して帰ってきました」


「へぇ~。でもかなり長い期間だったんじゃないか? スピカさんも心配してたんだよ。あっ、次行かないと! じゃあまた来週お願いね!」


 道具屋さんはほかの仕入れもあるらしく急いで去っていきました。

 通りかかったらウチの店が開いてたから先に寄ってくれたみたいです。


 それより師匠……本当にごめんなさい。

 お客さんにも伝わるくらい心配してくれてたんですね。

 これからは安心してもらいたいです。


 では作業の続きに戻りましょう。

 さっきはポーション500本分の錬金を終えたところでした。

 大樹の水を使えないのは残念ですが仕方ありませんよね。


 それより大変なのはここからです。

 いくら蛇口を付けたとはいえ瓶詰は一本ずつですからね。

 これがダンジョンだと瓶詰は全てウサちゃんたちがやってくれてたんです。

 楽を覚えるとダメですね。

 師匠には余裕みたいに言ってしまいましたがやはり500本は大変です。


 ……蛇口よりレバーのほうが楽かもしれません。

 押したら出るようにして、離すと自動的にレバーが元に戻るようにしましょうか。

 瓶も自動でセットされるようにしたいです。


 ……ここのスペースではさすがに無理ですよね。

 ポーション精製のために階層を増やしたりできるわけでもありませんし。

 これがダンジョンなら私が作る魔道具次第で簡単に実現できそうなんですけど。


 諦めて一本ずつ丁寧に瓶詰しましょう。


 ……結局一時間もかかりました。

 これでも以前から比べるとだいぶ早くなってるんです。

 以前はこの作業だけで午前中いっぱいかかってましたから。


 でも仕事はまだまだあります。

 一番量が多いポーションが終わったってだけです。


「ちわ~。スピカさ~ん」


 またお客さんが来たようです。


「いらっしゃいませ。おはようございます」


「おはようございま~す。って誰!? 新人さん!?」


 誰って店の奥から出てきたんですから店員に決まってるじゃないですか。

 でも初めて見る方ですね。


「店員です。師匠になにかご用でしょうか?」


「えっと……薬草の納品に来たんだけど……」


「そうでしたか。師匠は外出中なので私が承ります」


「え、いや、君で大丈夫なの? わからないでしょ」


 なんですかこの人は。

 それになんだかチャラチャラしてますね。

 こういう人はあまり好きではありません。


「こちらからの納入依頼書はお持ちですか?」


「あ~、はいこれ。……君も錬金術師なの?」


「そうです。……薬草と毒消し草? 実物を見せていただいてもよろしいですか?」


「あ、もちろん。持ってくるから台車と箱を用意してきて」


 作業は慣れてるようですね。

 私がいない間に新しい業者さんに頼むようになったのでしょうか?


 納入依頼書も確かにウチの店のもののようです。

 でも数が少し多くないですか?

 薬草が12000枚に毒消し草が5000枚って……。


 とりあえず奥から空の薬草箱を台車に乗せて運んできました。


「どうする? 全部確認するの?」


「まずは一枚見させ……え? これは……」


 大樹のダンジョン産の薬草に間違いないです!

 毒消し草も同じくです!

 それをこんなに!?

 まさか師匠はウチで扱う薬草を全部ダンジョン産にしたんですか!?


 今奥にある残りの薬草はダンジョン産のものばかりでしたが今日は仕入れのタイミングでしたからね。

 てっきりほかの産地の薬草は使い切った後かと思ってました。


 それにしてもこの数は多すぎます。

 前より少なくなってたのなら理解はできるんですが。


「……いつもこの数なんでしょうか?」


「ここ最近はそうかなぁ~。前から比べると徐々に増えていってるけど」


「お客様はこれをどこから仕入れてくるんです?」


「ははっ、お客様って。俺はオッツァって言うんだ。あ、もしかして君がカトレアちゃんかな?」


「そうですけど……」


「あ~やっぱり。親父から聞いてるよ。あ、親父は行商人のオスカルって言うんだけど知ってる?」


「なるほど、オスカルさんの息子さんだったんですか。いつもご贔屓にしていただいてありがとうございます」


「いや、世話になってるのはこっちだし……」


 そういうことでしたか。

 見た感じだとオッツァさんは十八歳くらいですから学校を出て今年からお父さんの元で働きだしたんでしょう。

 私が旅に出たのは三月でしたから会ったことがないのも納得です。


「ではオッツァさんがこの薬草の仕入れを? どこからですか?」


「仕入れてくるのは親父だな。これはマルセールって西の町からだ」


 あっ、ロイス君が言ってたマルセールの道具屋さんと繋がりがある行商人ってオスカルさんのことでしたか。

 師匠ならこの薬草の存在を知って自分のお父さんのダンジョン産のものを優先的に仕入れるように頼んでいたのかもしれません。

 それ以前にこの薬草は最高級のものですしね。

 なんでもっと価格が上がらないのかが不思議で仕方ありません。


 ……でもこの数ってマルセールで冒険者が売った薬草の半分以上はここに来てることになりますよね?

 少しやりすぎな気もします……。


 それにやはり数が多すぎです。

 どうやら師匠はなにか研究をしているようですね。

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