表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編
2/37

2.馬車に揺られます

 私が住んでいる王都パルドから海岸線沿いに南へ馬車に揺られること四時間。

 アルト村に到着しました。


 馬車に乗ったのなんて何年ぶりでしょうか。

 つまりパルドから出たのも数年ぶりということです。

 確かマリンといっしょに住むことになったときなので……もう八年も前になりますか。

 あのときは大陸北部のノースルアンという町に行きましたね。

 そういう意味でも今回は南ルートを選んで正解だったのかもしれません。


 それよりここの村……小さいんですね。

 お店屋さんも少なそうです。

 お昼休憩に寄っただけとはいえ、あまり見て回るところもなさそうですね。


 とりあえず昼食にしましょう。

 パン屋さんはありますかね。


 ……あっ、ありました。

 早速入ってみましょうか。


「いらっしゃいませ!」


「……こんにちは」


 夫婦でやってらっしゃるようですね。

 店いっぱいに焼きたてのパンのいい香りがただよってます。


 どうやら自分で好きなパンを取るシステムみたいです。

 パルドではあまりパン屋さんには行きませんからね。

 いつも私か師匠の手作りですし。

 その土地ならではのパン屋さんに行くことも勉強の一つですよね。


 え~っと、チーズ蒸しパンは…………ん?


 ……まさか置いてないんですか?

 チーズ蒸しパンですよ?


「あの……チーズ蒸しパンありますか?」


「チーズ蒸しパンですか? すみません、当店ではお取り扱いしてませんもので……。他のパンも美味しいのでよろしければご覧になってください」


 やはりないようです……。

 どうしましょうか、とりあえずクロワッサンは決定として……。


「……お勧めはどれなんでしょうか?」


「それでしたらこちらのクリームパンはいいかがでしょうか? たっぷりクリームが入ってることがウチの店の売りなんです!」


 クリームパンですか……。

 ……いや、せっかくお勧めしてくれてるんですから食べてみましょう。

 こういうのも勉強の一つです。


「……じゃあこれでお願いします」


「はい! ありがとうございます!」


 笑顔の素敵な方です。

 きっと今後アルト村の名前を聞いたときにはこの方の顔を思い浮かべるでしょう。


 さて、どこか座れる場所はありますかね。

 あっ、海が見渡せる場所にいいベンチがありました。


 お腹空きましたね。

 まずはお勧めのクリームパンを一口いただきましょう。


 …………うん。


 ではクロワッサンも一口…………うん、普通ですね。


 旅の途中で食べるパンだからいつもと雰囲気も違って美味しく感じるかと思ったらそうではないようです。

 やはり昼は自分でチーズ蒸しパンを作って食べるほうがいいのかもしれません。


 この村にも宿屋はあるみたいですが、これ以上することもなさそうですね。

 ちょうど馬車の出発時間ですし、一気に南の町まで行きましょうか。


 再び馬車に揺られること三時間。

 リーヌの町にやってきました。


 ……大きいですね。

 言ってはなんですがアルト村とは大違いです。

 さすが大陸で二番目に大きい町と言われるだけはあります。


 この町からは東の大陸へも船で一時間ほどで行けるようです。

 ですが今回はやめておきましょうか。

 不安だからとかではないですからね?

 今回の目標はマルセールの町へ行くことですから。

 なので東の大陸へ行くのは次回のお楽しみに取っておきましょう。


 さて、すっかり夕方になっちゃいましたね。

 まずは宿を探しましょうか。

 一人で宿屋に泊まるのは初めてなのでドキドキです。


 それにしてもきれいな町並みですね。

 お店も多そうです。

 パルドよりもこちらの町が好きな方もたくさんいるでしょうね。


 あっ、いい匂い……。

 あの店からですかね?

 いったいなんのお店なんでしょうか。

 ……焼肉?

 お肉を焼いてる匂いでしたか。

 う~ん、お肉……。

 普段食べない物を食べるのも旅の醍醐味なんですよね。

 でも私にはこの店に入る勇気がありません……。


 その前に宿屋でした。

 お金は節約したいのであまり高くないところがいいです。

 宿屋も多いようですね。

 でも違いがさっぱりわかりません。

 宿の前の看板に書いてある料金だけで決めるしかないようです。


 ……ここにしましょうか。


「いらっしゃいませ」


「……あの、一人なんですけど、宿泊できますか?」


「ご一泊でよろしいでしょうか?」


「はい」


「夕食や朝食はお付けされますか?」


 え……どうしよう……。

 なにが出てくるのかな……。


「いえ、なしでお願いします」


「かしこまりました。お一人様ですと300Gと500Gのお部屋をご用意できますがいかがいたしましょう?」


「300Gの部屋でお願いします」


「ありがとうございます。こちらが部屋の鍵となります。ごゆっくりどうぞ」


 ふぅ~。

 宿を取るのだけでもこんなに疲れるとは思ってもみませんでした。

 でもすぐに慣れますよね。

 これからは毎日こんな生活なんですから。


 部屋に入りベッドに倒れこんだ途端、眠気に襲われました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ