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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
王都帰還編

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4.久しぶりの実家です

 この町の中心部にはお城があります。

 パルドはお城を囲むように町が形成されてるんです。

 東側には港があって東や南東の大陸の国へ行ける船も出ています。


 さらに町は周りを城壁で囲まれてるんです。

 町の外へは港を除けば西門、北門、南門からしか出ることができません。

 門では騎士さんが昼夜問わず門番として立っています。

 魔物対策なので人間は特にチェックされたりはしませんけど。


 馬車乗り場だって北、西、東、南、中央とありますからね。

 町中だけを走る乗合馬車もたくさん運行されてます。

 歩いて全部を見て回ろうと思ったら何日もかかるでしょう。


 改めて思いますがやはりパルドは広いですね。


 私が住む家は西側で、西門よりお城に近い側にあります。

 住む場所としてもお店としても凄くいい立地条件なんです。


 まぁ錬金屋に用がある人なんて少ないですけどね。

 普通に生活してる人はまず来ないでしょうし。

 仕事のほとんどは業者さんからの錬金依頼です。

 あとは国でしょうか。

 たまに冒険者の方が来たりもします。

 ごくたまに師匠の噂を聞いて弟子希望の錬金術師が来ることもあります。

 もちろんすぐに追い返されてますけど。


 ……着きました。

 以前となにも変わらない店構えです。

 この時間だとマリンはまだ学校ですね。


 なんでこんなに緊張するのでしょう……。

 ここは自分の家なのに。

 後ろめたいことなどなにもありません。

 ただ少しだけ心配をかけたかもしれないと思っている程度です。


「チュリ」


「……ここが私の家です。お店をやってるんですよ」


「チュリリ!」


「……ふふっ、中に入りましょうか」


 ピピちゃんも中が気になるようです。

 師匠に会ってみたいのかもしれないですね。

 さて、入りましょう。


「……ただいまなのです」


 ……店には誰もいないようですね。

 といってもウチの店はこれが普通ですが。

 せっかくユウナちゃんっぽく言ってみたんですけど。


「師匠? 師匠!」


 ……反応がありません。

 これだとお客さんは困るでしょうね。

 きっとお昼寝してるんです。

 それにしてもこうやって見てみると凄く不用心ですね。


 店の奥の作業部屋に入ってみます。


「失礼します」


 ……やっぱり寝てました。

 起こすのも悪いのでこのままにしておきましょう。


「チュリ?」


「……二階に行きましょう」


 なんだか不思議な気分です。

 自分の家が自分の家じゃないような。


「ここが私とマリンの部屋です」


「チュリリ?」


「……マリンというのは私の妹です。あとで紹介しますね」


「チュリ!」


 そういえばマリンのことは誰にも話してませんでした……。

 きっとみんなは私が師匠と二人で暮らしてると思ってそうです。

 そのうちマリンといっしょに大樹のダンジョンに行きたいですね。


「いつでも遊びに来てくれていいですからね。店の入り口かこの窓に来てくれたら気付きますので」


「チュリ!」


 ピピちゃんなら本当に遊びに来てくれそうな気がします。

 お出かけが大好きですからね。


 この窓から見る景色も久しぶりです。

 町並みはなにも変わってません。


「チュリリ!」


「えっ?」


 ピピちゃんが警戒してます!


「カトレア?」


 ……久しぶりに聞く懐かしい声です。

 安心して振り返ることができます。


「……師匠、ただいま帰りました」


「あなた今までどこでなにしてたのよ!? なんで連絡しないの!? 心配したのよ!?」


 師匠は言葉と同時に抱きついてきました。

 温かいです。


 ……ホッとしたら少しだけ涙が出ました。

 なんだか最近泣いてばかりな気がします。


「……すみません。連絡しなきゃと思ったんですけどつい忘れてまして……」


「もぉっ! ……でも帰ってきたからいいわ。またすぐに出ていくとか言わないでしょうね?」


 師匠の切り替えの早さはさすがです。

 すでに私からも離れて一階へ行こうとしてます。


「……はい。私の家はここですから。それに師匠にはまだまだ教えてほしいこともいっぱいありますので」


「そう! なら早く旅の話聞かせてよ! あっ、ご飯食べた? 久しぶりに私のチーズ蒸しパン食べる?」


「……いえ、まだですけど。お土産もいっぱい持って帰ってきましたのでそれを食べませんか?」


 師匠が怪訝そうな顔をしました。

 昔の私ならこんなこと言わなかったでしょうからね。


「あなた、雰囲気が少し変わったわね。それに魔力もずいぶん増えてる。……ん? あなたが白いローブを着てるなんて珍しいわね? ……とにかく下に行きましょう」


 さすが師匠です。

 一瞬で私の変化に気付きました。

 でもピピちゃんがいることには気付いてないようですね……。


 一階にはお店と作業部屋と簡易なダイニングキッチンがあります。

 お店といってもカウンターテーブルがあるくらいです。

 商品が置いてるわけではないのでお店は小さくても問題ありませんし。

 その代わり作業部屋は広いです。


「で、なにを食べさせてくれるの?」


 ……こわいです。

 師匠が美味しいと言うとは思えませんからね。


「……ハンバーグはいかがですか?」


「ハンバーグ? う~ん、ピンとこないわねぇ~。ほかは?」


「……サンドイッチ、ホットドッグ、おにぎり、パンケーキ、とんかつ、チキン南蛮、キャベツ……」


「ちょっとちょっと! 多すぎない? あなたが作るってことなの?」


「……いえ、状態保存がかかったものです。材料もたくさん持って帰ってきてますが」


「状態保存ねぇ~。あなたがかけたの?」


「……いえ、魔道具でかけてます」


「ふ~ん。じゃあおすすめをお願い」


 全部おすすめなんですけどどうしましょうか。

 パン系で攻めるのが無難な気がしますね。

 ほかになにかインパクトがありそうなものありましたっけ……

 袋の中を探してみます。


「ねぇ? まさかその袋に料理が入ってるの?」


「え……はい」


「ちょっと見せなさい!」


 あ……師匠に袋ごと取られました……。

 ハンバーガーなら喜んでくれるかもしれません。


「……この袋はどうしたの?」


「え? 私が作りました」


「作った!? これをあなたが!? 異空間よね!? しかも中に状態保存かかってるんじゃない!? それに物と物の干渉も起きてないわよ!? 取り出しもスムーズに行えるわよ!?」


 袋が高評価のようです。

 やっぱり師匠に褒めてもらえた瞬間が一番嬉しいですね。


 興奮気味の師匠は袋の中からコロッケとお金を取り出しました。

 そしてそのままコロッケの包装を破いて一口食べてくれました。


「美味しい! 懐かさを感じる味ね!」


 コロッケも美味しいと言ってもらえました。

 でも師匠が美味しいなんて言うのは珍しいですね。

 ぜひほかのものも食べてもらいたいところです。


「それよりこの袋よ! どうやってこんな袋を作れるようになったの!? 容量もかなり大きいけどそれに加えて状態保存までかけるなんて……。あなたいったいどこでなにしてたの……。それにこのお金、こんな大金持ち歩いてたら危ないでしょ」


 パルドを出てからのことを順番に話したほうがわかりやすいですよね。

 九割方は大樹のダンジョンの話になってしまいますが……。

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