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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
王都帰還編

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13/37

1.実家に帰ります

 初めて大樹のダンジョンに来てからもう八か月も経ちましたか。

 旅に出てからは九か月です。

 本当にあっという間でしたね。


 師匠とマリンは心配してるでしょう。

 一度も連絡してないというのはさすがにまずかったかもしれません……。


 私が乗る馬車はマルセールの町を通りすぎ、ソボク村に着きました。

 ここから王都パルドまでは山越えの道のりになります。

 もう日も暮れますし、今日はここで宿をとることにしましょう。

 二匹の魔物さんたちとはお別れのときです。


「メタリンちゃん、ウェルダン君、ここまでありがとうございました」


「キュキュ!」


「モー!」


 ふふっ、寂しがってくれてるようですね。

 あっ、そうだ、馬車を袋に入れてあげないと。


「ウェルダン君、馬具を外しますね」


 結局ここまでウェルダン君だけで馬車を引いてきてしまいましたか。

 メタリンちゃんはずっと私の膝の上に乗っててくれましたもんね。


 それにしても本当にこんな大きさのものが入るのでしょうか。

 あっ、入りました……。


 我ながら凄い袋を作ってしまったかもしれないのです。

 量産可能になるまでは人目につくところでの使用は控えたほうがいいみたいなのです。


 ……たまに話し方がおかしくなってしまうのです。


「はい、これで任務完了です。帰り道気をつけてくださいね。みなさんによろしくお伝えください」


「キュ!」


「モー!」


 あっという間にいなくなりましたね……。

 もう少し別れを惜しんでくれても……。


 さて、気を取り直してまずは宿を確保しましょうか。

 この村は宿が少ないみたいですからね。


「朝食付きで一晩250Gになります」


「……じゃあそれでお願いします」


 うん、この部屋で朝食付き250Gなら安いくらいです。

 やはりマルセールは少々お高いみたいですね。


 暗くなる前に村のお店を見て回りましょうか。

 昼間食べすぎたのでお腹は空いていませんが、なにか美味しそうなものがあるかもしれませんしね。


「チュリリ!」


「え? お散歩ですか?」


「チュリ!」


 ピピちゃんがどこかへ行ってしまいました。

 私の傍を離れないようにとロイス君から言われてたはずなのに……。

 飛んでいった方角からすると……なるほど。


 メタリンちゃんとウェルダン君に宿がとれた報告といったところでしょうか?

 彼女たちなら私が宿をとれなかった場合に備えて待機してくれてるでしょうからね。


 あっ、ピピちゃんが戻ってきました。


「チュリ!」


「……おかえりなさい。安心して帰ってもらえそうでしたか?」


「チュリ!?」


 ふふっ、ピピちゃんの焦った顔も珍しいですね。

 どうやら当たりのようです。

 みんなの心配性はロイス君に似たんでしょう。

 本当にいいお仲間です。


 さて、どこかお店に入りましょうか。


「いらっしゃいませ! お一人様ですね!? こちらへどうぞ!」


 昔ながらの雰囲気がある定食屋さんに入りました。

 一人でこのようなお店に入るのは初めてなので少し緊張しますね。

 大樹のダンジョンにたどり着くまでの旅はパン屋さんばかり行ってましたから……。


 パン屋さんはお持ち帰りできるから入りやすいですし買いやすいんです。

 ナポリタンが食べられるようなお店は入るのに少し抵抗があったんですよね。

 だから夜のナポリタンは全部自炊してましたっけ。

 本当はナポリタンの研究もしたかったんですが今となってはもういいです。


 でも今の私にはこわいものなどありません。

 がっつり定食を食べてやろうと思います。


「注文お決まりでしょうか!?」


「……えっ……じゃあ、天ぷら定食というものをお願いします」


「天ぷら定食ですね!? かしこまりましたー!」


 頼んでしまいました!

 見たことも聞いたこともなければ全く想像ができないような食べ物を。

 いったいどんなものが出てくるのでしょうか。


 昔は不安しかなかったはずなのに今は楽しみにしてる自分がいます。

 ふふっ、私も変わりましたね。


「お待たせしましたー! 天ぷら定食になります!」


「……ありがとうございます」


 なんですかこれは!?

 もしかして揚げ物ですか?

 五種類あるように見えますが。

 このつゆにつけていいんですよね?


「いただきます」


 おそるおそる口に運んでみます。

 ……ん!?

 熱いっ!

 でも美味しい!


 ダンジョンでの揚げ物とは衣が少し違いますね。

 ナス、ピーマン、カボチャ、鶏と……これは紅ショウガでしょうか?

 この衣をつけて揚げればどんな食材でも天ぷらというんでしょうか?

 ロイス君なら知ってそうなものですけど、一度も食卓に並んだことはありませんでしたね。


 これに白米と味噌汁とお漬物がセットで70Gはお得な気がします。

 でもダンジョンなら……いえ、ダンジョンでの価格と比べるのはやめましょう。


 ララちゃんがダンジョン産の食材で作ったらもっと美味しくなりそうです。

 ユウナちゃんもおかわりいっぱいするでしょうね。

 ロイス君はなんでも美味しそうに食べますからね。


 ……ふふっ、私ったら別れた仲間のことばかり考えて。


 ピピちゃん、そんな不安そうな目で見ないでください。


「大丈夫ですよ」


「チュリ~?」


「……はい。お家に帰ったらソボク村で天ぷらを美味しそうに食べてたって伝えてください」


「チュリ!」


 本当にみんな心配性ですね。

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