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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編

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12/37

12.夕食に誘われました

 やはり毒にかかる人が多いですね。

 せっかく毒を治してもしばらくするとまた毒にかかって戻ってきます。

 しかも瀕死状態で。

 冒険者という人たちはなにを考えているのでしょう。

 そのせいで解毒ポーションだけじゃなくてポーションもいっぱい作ってます。

 みなさんが採集した薬草や毒消し草で作ってるので今日はみんな稼ぎが少なそうですね。


 ララちゃんは魔物急襲エリアに行ったっきり帰ってきません。

 そのエリア付近で毒にかかっている人はララちゃんが面倒を見るそうです。

 でも本当はララちゃん自身が魔物急襲エリアで楽しみたいんだと思います。

 私もどんなエリアか見てみたかったのに。


 私が任されたのはこの休憩エリアに転移されてくる人のお世話です。


 今日からの新システムのセーフティリングって凄いんですよ。

 なんと瀕死になると最後に立ち寄った休憩エリアに自動的に転移される効果があるんです。

 本当にこのダンジョンはどうなってるんでしょうか。


 そういうわけで私はここで待ってるだけで瀕死の人が勝手に転移してきます。

 そしてポーションと解毒ポーションを錬金するだけの簡単なお仕事です。

 お仕事といってもお金を貰えるわけではありませんけどね。

 でもいいんです。

 草原でのんびりできて最高に気持ちいいですから。

 少し転寝なんかしたりもしました。


「カトレアさ~ん!」


 ララちゃんが戻ってきたようです。

 冒険者のみなさんもいっしょみたいですね。


「ありがとう! カトレアさんがいてくれたおかげでみんな安心して魔物急襲エリアで戦えたよ!」


 それは良かったです。

 みなさんはボロボロのようですけど……。


「お礼に夕食をご馳走させてね! お弁当よりもっと美味しいの作るからね!」


「……いえ、遅くなると帰り道が真っ暗になりますので」


 もうすっかり夕方です。


「じゃあ今日はウチに泊まるのはどうかな!? 部屋は余ってるから大丈夫だよ!」


 それは申し訳ないです。

 それに管理人さん……ロイスさんにも悪いです。


「お兄のことも気にしなくていいよ! 泊まるのが嫌ならせめてご飯だけは食べていってくれないかな!? 帰りはシルバとピピに送らせるから暗くても大丈夫だよ!」


 シルバ君というのはあのワンちゃんのことです。

 ピピちゃんはたまに受付にいる真っ白な鳥さんです。

 なんとシルバ君とピピちゃんは魔物なんだそうです。

 魔物使いであるロイスさんのお仲間さんというわけですね。


 そのお二方が送ってくださるなら安心です。


「……じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」


「ホント!? やったぁ!」


 ふふっ、可愛いですね。

 夕食といったら普通はナポリタンですが、いったいなにをお出ししていただけるのでしょうか。


 その後、転移魔法陣で地上に戻ってきました。

 もう日が暮れそうです。


 みなさん魔物急襲エリアの話題で盛り上がってますね。

 どうやら川の中での戦いもあったらしくみんな汚れが酷いです。

 小屋の外の水道の前には列ができてますね。


 結局小屋の中は三十分ほど盛り上がってました。

 みなさん明日も魔物急襲エリアに行く気満々でしたね。

 私も明日こそ見に行ってみたいです。


 さて、私は家にお邪魔するとしましょう。


 あ、ロイスさんが管理人室から出て来ました。

 洞窟入り口のカギ閉めをするようです。


 夕食をご馳走になるんですから挨拶しておいたほうがいいですよね。

 ……少しでも警戒心を解いてもらうために驚かせてみましょうか。

 私だってお茶目なところもあるんです。


 戸締りをしてるロイスさんの後ろからそっと近づきます。

 そしてこちらを振り向くのをじっと待ちましょう。

 いつもと同じように声をあげて驚いてくれるはずです。


 あ、振り向きます。


「……わっ!!」


 ふふっ、驚いてくれたようです。

 少し驚きすぎな気もしますが。


「……お疲れ様です」


 やりすぎたようです……。

 すみません。


「……すみません、もう誰もいないと思っていたものですから少しビックリしてしまって」


「……いえ、私も驚くことはわかってて後ろにいました」


「は?」


 笑ってくれません。

 余計に警戒心を強めたように見えます……。


「そうでしたか、もうじき真っ暗になりますから早く帰ったほうがいいですよ」


「……え? ……いや、あの」


 無理やり話を切り上げようとしてます……。

 ヤバい人扱いされてそうです。

 完全に逆効果でした。


 あっ、ちょっと待ってください。

 家に入らないでください……。


「お兄ご飯できたよ! あっ、カトレアさんもいっしょみたいね! 二人とも早く中入って!」


 ララちゃん!

 ナイスタイミングです!


「え!? どういうこと!?」


 でもやはりロイスさんは戸惑っています。


「……ララちゃんがご飯食べていってと言うもんで……すみません断ったのですが断り切れなくて」


「……そう……ですか」


 ヤバいです。

 またなにか考え込んでます。


「シルバ」


「わふっ」


「じゃあピピ」


「チュリッ!」


 シルバ君もピピちゃんもなんとなく嫌そうな表情をしてます……。

 送ってもらえそうにないかもしれません。

 でもそういう顔も可愛いです。


「……可愛いですね、ワンちゃんと鳥さん」


「わふ? わふ!」


「チュリリ!」


 え?

 これは喜んでくれてますよね?

 あとで町まで送ってくれますか?


 ロイスさんは家の玄関に向かって歩きはじめました。


「どうぞ」


 どうやら入ってもいいようです。


「……ありがとうございます」


 少し安心しました。

 家の中に入らせてもらいます。


「……ローブ脱いだほうがいいですよね、汚れてるので」


「いえ、お気になさらずにどうぞ」


「……そんなわけにはいきません、外で埃落としてから行くので先入っててください」


「別にいいのに……まぁ気になるならそうしてください。この正面のドアですので」


 ローブは玄関に置かせてもらいましょう。


 それより人の家に入るのなんて久しぶりなので緊張します。

 しかもそれが自分より三つ以上年下のご兄妹の家なんて。


「……お待たせしました」


「カトレアさんはそっちに座って! あっ、手洗うならキッチン使って!」


「……はい、ありがとうございます」


 中は結構広いんですね。

 ダイニングキッチンとリビングがつながってるからそう思うのかもしれません。


 ……凄くいい匂いがしてます。

 これはなんの匂いなんでしょう?


「……お兄? ちょっと見すぎじゃない?」


「えっ!? そ、そんなことないよ。た、ただこんなに鮮やかな緑の髪を見たのは初めてだったからさ」


「確かにきれいな髪よねー。普段からもっと見せればいいのに」


 いつもはずっとフードを被ってますからね。

 師匠から言われたことは守らないと。

 でも髪をきれいと言ってもらえるのは嬉しいです。


「……ありがとうございます。ですが恥ずかしいのであまり見ないでください」


 なんだかロイスさんが物珍しそうに凄く見てきます。

 視線が気になりますが席に座りましょう。


 ……豪華ですね。

 やはりナポリタンではなかったようです。

 ご飯と味噌汁に……これは……。


「どうかしましたか?」


「……いえ……これは、ハンバーグという食べ物ですか?」


「そうですけど? ……もしかして食べたことありませんか?」


「……はい」


 ハンバーグです!


 ずっと食べてみたかったハンバーグです!

 店の外からメニューを眺めることしかできなかったあのハンバーグです!

 ララちゃんはハンバーグも作れるんですか!?


「……ララが作る料理は美味しいですからぜひ食べてみてください」


「うん、今日はいつもより頑張って作ったの! さぁ食べましょう!」


「「いただきます!」」


「……いただきます」


 どうやって食べるのが正しいんですか?


 ……ふむふむ、普通にお箸で真ん中から食べていいんですね。


 ……えっ!?

 ハンバーグの中から溶けたチーズが出てきました!

 凄く美味しそうです!

 もう食べますよ!?


 ……………………。


 美味しい。

 美味しすぎます。

 一口食べただけで好きな食べ物ランキング1位にランクインしました。

 しかも断トツです。


 私はこんな美味しいものを今まで知らなかったんですか。

 人生を損してた気にさえなってきます。


 師匠、すみません。

 私と師匠の好みは少し違ったようです。

 もうパンを作るのはやめにしましょうか。


 ……この溢れ出る涙はどうやってとめたらいいのでしょう。

これにて「旅立ち編」は終了となります。


※ 次章に入る前に『俺の天職はダンジョン管理人らしい』の第百七話まで読んでいただきますと次章をより楽しんでもらえると思います。


もちろんこのまま次章を読まれても楽しんでいただけるように考慮はしてるつもりですので気にならない方はこのまま次章へお進みください。

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