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世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
旅立ち編

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10/37

10.結局来ちゃいました

 眠いです。

 あまり眠れませんでした。

 眠れるわけがありません。

 ずっとモヤモヤしてます。


 今日はパルドに向けて出発しようと思ってました。

 二つ先の村に一泊して、明日の昼過ぎにはパルドに着く予定でした。


 でもなぜか足が大樹のダンジョンに向かってます。


 毒消し草を一目見たいのかもしれません。

 冒険者のみなさんが毒で困るのを放っておけないのかもしれません。

 地下二階の新しいフィールドとやらを見てみたいのかもしれません。

 魔物急襲エリアというものにも入りたくはありませんが見てみたいです。


 私、単純に人工ダンジョンに興味を持ってしまったようです。


 それに管理人さんに謝りたいとも思ってます。

 あれからよく考えましたがどう考えても私が悪いです。

 急いでるところを引き留めたうえに、薬草や水のことについて質問攻めしてしまったのですから。

 私は自分のことしか考えてなかったんです。

 だから怒らせてしまって当然なんです。

 なのに最後は私のことを気遣う様子まで見せて去っていきました。

 あの方の考えてることが本当にわかりません。


 だからまず受付で昨日のことを謝りましょう。

 あ、でも今日は新しいエリアについての説明とかありそうですね。

 私の後にお客さんが来るかもしれないので説明を聞き終わってから誰もいなければにしたほうが良さそうです。



 着きました。

 ……管理人さんはこちらに背を向けて家の中の妹さんとお話してるようです。

 私には気付いてくれません。


「あの」


「わっ!!」


 いつも驚いていませんか……。


「あっ、失礼しました! いらっしゃ……」


「……おはようございます」


 私の顔を見た瞬間に口の動きがとまりました。


「あ……いらっしゃいませ。あの……」


「……一人分お願いします」


「あ、はい……あっ、すみません今日から少しシステムが変わりまして」


「……はい、説明ですよね……お願いします」


「え、は、はい。では……」


 ……先に謝ったほうがいいのかもしれません。

 おそらく彼は私に対して怒ってしまったことを悪く思ってくれてるんだと思います。

 悪いのは私なのに。


 家の中から妹さんが顔を出しました。

 管理人さんの様子がおかしかったからでしょう。

 そして妹さんも私のことを認識したようです。


「あっ! また来てくれたんですね! 良かった! もう来ないかと思ってました!」


 昨日のことを聞いたんですか……。

 きっと私のことをお兄さんを怒らせた最低な女だとでも思っているのでしょう。

 あんなことがあった翌日に普通は顔出せませんよね。


 ……でも今良かったって言いましたか?

 こんな私が来てもいいんですか?


「ララ、悪いが説明任せてもいいか?」


「え? いいけど。どうかした? お兄?」


 管理人さんは家の部屋に入って受付の部屋との間のドアを閉めました。


 そうですよね。

 管理人さんは私となんか顔合わせたくないですよね。


 でも妹さんのこの反応はもしかして昨日のことを知らないのでしょうか?

 それともまだ子供だから感情のことがよくわかってないのかもしれませんね。


「すみません。お兄、少し体調が悪いみたいで……」


「……いえ、私が悪いんです」


「え? ……お兄となにかありました?」


 やはり妹さんはなにも知らないようです。


「……昨日町でバッタリ会いまして……少しだけお話をと思ったんですが……その……」


「なにか事情がありそうですね……あっ、今日地下二階に行きますか?」


「……はい」


「ならいっしょに行きませんか? 歩きながら話を聞かせてください!」


「え……わかりました」


「じゃあ採集袋と指輪をどうぞ! その指輪をはめてください! 新しいシステムについても歩きながら説明しますので! 先にダンジョン入ってもらってていいですか? すぐに行きますから!」


 ……あまりの勢いに頷くことしかできませんでした。

 この妹さん、想像してたよりもかなりしっかりしてますね。

 マリンより年下とはとても思えません。

 あっ、でもお金を受け取るのを忘れてますよ……。

 ここに置いておきましょう。

 傍で白い鳥さんが見ててくれてますから大丈夫なはずです。


 えっと、この指輪をはめるんでしたよね。

 これがなにか新しいシステムに関係してるのでしょうか?

 ……あっ!?

 少し大きいかなと思ったんですが指のサイズにピッタリ変化しましたよ!?

 どうやらこれも錬金術っぽいですね。

 この指輪にどのような効果があるのでしょうか。


 さて、今日もダンジョンに入りますか。

 この洞窟フィールドもすっかり見慣れた光景ですね

 これが地下二階ではどう変わるのでしょう。


「お待たせしました!」


 すぐに妹さんが追いついて来ました。


 ……え?

 剣を持ってますけど……?

 錬金術師ではないにしても魔道士タイプかと思ってました。

 というか戦うんですか?

 まだ十歳なんですよね?


「私、ララって言います! このダンジョンの副管理人をしてます!」


「……ご丁寧にありがとうございます。私はカトレアと申します」


「カトレアさんかぁ! きれいな名前ですね!」


 妹さんが副管理人ですか。

 でも生きるためには兄妹で助け合っていかないといけませんもんね。

 なんだかまた涙が出てきそうです。

 マリンは元気にしてるでしょうか……。


「あの、カトレアさんって錬金術師ですよね!?」


 ……私が錬金術師だということに気付かれていたようですね。

 まぁあれだけ薬草を欲しがればお二人には気付かれても当然ですか……。

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