二次小説のジレンマ~なぜ原作知識を忘れるのか~
原作知識持ちの主人公がなぜか途中で原作知識を忘れる作品を見たことはありませんか
なぜこのような展開になるのか考察してみました。
まず、平和な日常物の二次創作なら原作知識を覚えていてもあまり問題がないわけですが何らかの悲劇が起こる作品だとそういうわけにはいきません。
何故なら、原作知識を覚えていると主人公は悲劇が起こるのをあえて見逃したという罪を背負うことになるからです。
つまり、悲劇にあった人を見殺しにした、見殺しにするような人物という事になります。
主人公が悲劇をみて楽しむようなキャラという設定ならよいですがそうではないと問題になります。
これは後々原作キャラと仲良くなるような展開になった時に主人公の心に十字架として残ります。
もしくは読者からこの主人公は悲劇を見殺しにしたくせになんで何でもないように原作キャラと触れ合っているんだとツッコミを受けてしまいます。
こういった設定があると原作キャラ達に主人公が真摯に対応するといった展開が書きにくくなりますし、原作キャラとの恋愛展開を書こうにも、このような非人間的な行動をとった主人公とその原作キャラが恋愛をするのが不自然に場合があります。
だから、何らかの理由で見殺しにすることを正当化する必要があるわけです。
例えば、悲劇にはあうけどそのあと幸せになるからとか、原作の流れを崩すととんでもないことが起きるからとかです。
他には修正力によって原作通りの流れになったなどの展開にすれば主人公は精一杯やったけどどうにもならなかったと言えるので、主人公が罪を背負うのか回避できます。
ただ、こういった展開を考えるのが面倒とか話がごちゃごちゃになるからといったことがあるため主人公が都合よく原作知識を忘れるほうが作者としては簡単なわけになります。
というか最初から主人公に原作知識を持たせないようにしてもいいわけです。
一方で原作知識を忘れさせなくてもうまく書くための設定、テクニックがあります。
原作を変えすぎると世界に悪影響があるとか、原作の設定を使って原作通りの流れにならなくするといった方法です。
具体的な原作名を上げるとドラゴンボールです。
この作品は原作の時点で歴史改変者という歴史を遡って原作の展開を変化させるという公式の転生主人公みたいなことをやっている輩がいます。
このキャラを使えば主人公が原作を良い展開にしたけど歴史改変者が介入したせいで原作に近い流れになったよと書けます。
また、主人公が原作を変化させるような展開にしても原作沿いになるように歴史改変者がしたという流れにすれば読者からの突っ込みも入らずに書きたいように書きやすくなります。
とあるドラゴンボールの二次創作はこの辺をうまく書いていました。
読者が冷めるのは主人公が馬鹿になって原作知識を使って最善の行動をとらないこと、作品の都合で原作知識を有効活用しないことに読者が気づくことです。
言い換えれば、読者が思う最適解を主人公が行ってもそれを上回るようなことが起こって原作通りの流れになれば良いわけです。加えて読者が納得する展開にする必要もあります。
これをクリアしているとある仮面ライダーの二次創作があります。
この作品は平成ライダーの話が一年ごと起きていくというストーリーですが昭和ライダーの話も過去に起きていたという設定があります。
主人公はある平成ライダーのストーリーに介入して原作知識をもとに最適解の行動を行いました。その行動が完遂すると世界に大きな変革が起こって次のライダーのストーリーが起こらなくなりそうでした。そこでは昭和ライダーの設定にいるとても強力なキャラによって阻まれたという展開になりました。
原作の設定を使っているのでそのキャラが主人公の邪魔をしてくるのはしょうがないし今の主人公の実力では対抗できないから主人公の行動は完遂できなかったことに読者は納得できます。
作品を続けるうえで主人公の行動を阻害する必要があったのは確かだと思います。
しかし、同じような展開でも突然現れたオリキャラが同様のことを行ったら作者の都合が見えすぎて読者が冷めていたと思います。
これは二次創作の強みがでた展開です。介入してきた存在がどのような行動原理で動いているか読者側は承知してますのでそのキャラがその世界に存在する伏線を張っておけばいきなり出てきても不自然ではありません。
オリジナル作品だと前もって介入してくるキャラを細かく表現しておかないとご都合主義感や急展開だなと読者に感じさせてしまいます。
まとめますと、二次創作で主人公に原作知識を持たせてストーリーを続けるためには読者が納得できる最適行動をとらせても原作の流れが続く理由付けが必要であり、そのために
・原作のキャラや世界観を使って主人公が最適解をとっても原作が崩壊しないようにする
・最適解をとらないような性格の主人公にする
といったことがよいのではと筆者は考えます。
他の意見を感想に書いていただければそれに触れた内容の話をするかもしれません。