*従姉襲来・承
連絡した翌日、真白は早速、昴の家へと向かうことにした。
本当は昨日、すぐにでも行きたかったのだが、入学手続きの書類なり両親への報告なり色々あり、翌日となる。
3年ぶりに訪れた初瀬谷の駅は、記憶の中のそれとは微妙に違う。
無かった店が出来ていたり、テナントが入れ替わっていたり、そういったところが、離れていた時間を実感させる。
(変わったのはわたしもかな?)
高校に入って結構背も伸びた。体つきも中学の頃より丸みを帯びたし、胸の成長は特に顕著だ。
それにゴリラの園で鍛えられたメイクやファッションの技術もある。
(昴、驚くかな……?)
真白はにししと意地の悪い笑みを浮かべた。くるりと自分を見渡して、その姿をチェックする。
胸元を強調するオフホワイトのもこもこニットに、春らしさを感じさせるパステルカラーのふんわりフレアスカート。ガーリーな感じの男受けする恰好、らしい。雑誌の女子中高生に人気の有瀬陽乃がお勧めするコーデ特集にあったのを、自分なりに取り入れたものだ。
正直キャラじゃないなと思うし、ちょっぴり恥ずかしいという思いもある。他にも、この時期にはまだまだ寒い格好というのもあるし、だけど昴を驚かすには我慢だ我慢と言い聞かせる。その為だけにわざわざ用意した服なのだ。
真白にはそんな、ちょっと残念な部分があった。
初心でどこかむっつりした従弟のことだ、きっとこんな格好を見ればドギマギするに違いない。その時の様子を想像すると、ニヤニヤしてしまう。
「真白」
「あ、すば……る……?」
そんなことを考えていると、ふと懐かしい声を掛けられる。
しかし振り返ってみるも、語尾はどんどん小さくなって疑問形になってしまった。
記憶の中にある、どこか垢抜けなくてどこにでもいそうな従弟の声は同じなのだが、そこには随分とイケメンと評しても問題ないほどに、様変わりした昴の姿があったからだ。
髪もさっぱりと整えられおり、清潔感の溢れる爽やかな装い。身体も鍛えているのか引き締まっており、思わず従弟と分かっていてもドキリとしてしまう。
「まったく、いつも突然なんだから。ロクに迎える準備が出来て……真白?」
「や、うん、昴……昴だよね?」
「何を言って――あぁ、髪とかこの服とか……変、か?」
「いやいやいやいやいや、そんなこと無いよ?!」
「そうか、よかった」
「っ!」
そのくせ、かつてと同じ様に悪態を吐きつつも、はにかんだ顔を見せられると、それはもう真白にとっては不意打ち以外の何物でもなかった。
こんなにもドキドキしてしまうのは、女子校で異性を見ていなかったからだ、抵抗力が落ちているせいだ、そんなことを必死に自分に言い聞かせる。
「ほら行くぞ、皆待ってるし……荷物はそれだけか?」
そんな真白の心境など知ったことかと、昴はひったくるかのように荷物を持つと、背を見せ先に行くぞと促す。
「う、うん…………あっ!」
「おっ、と」
遅れまいと後を追いかけた真白であったが、この日の為に新しくおろした靴は履きなれておらず、つまづいてしまった。
しかしそれに気付いた昴は、素早く真白の手を取り事なきを得る。周囲にもこけたと悟られないような自然な動きだった。握られた手がやたらと熱い。
「大丈夫か? まったくそそっかしいところは昔から変わってないな、真白は。それと――」
「う、うるしゃい!」
「その恰好、似合ってるぞ。見違えた」
「~~~~っ!!」
「痛っ! 何すんだよ!」
「うるしゃい、うるしゃい!」
そこが真白の限界だった。顔はどうしたって赤くなり、理性が感情に追い付かない。
自分が守らないとと思っていた男の子が、身体も背も大きくなって逆に守られているのだ。さらりと自分の恰好を褒められたことも小憎らしい。出会って早々、お姉さんとしてのプライドはずたぼろにされていた。
だからその結果、バシバシと背中を叩くという、子供じみた行動に出るのだった。
次話は明朝になります。
新連載、書いています。
昔、男の子と思っていた幼馴染が、実は女の子で……という、タイトル的にはその、あれなかんじですが、甘酸っぱく切ない感じの、いい感じで読者を裏切られたらなーという話です。良かったら読んでください。
下の方からアクセスしてくださいね。












