第1話 動く運命
一つの宇宙が誕生した時、そこに分岐点が現れた。
無限に広がるマルチバースの中で、異なる未来を歩んだ世界が交わる時、誰も見たことのない運命が始まる。
宇宙銀河歴500年、人類は様々な星を開拓した。西暦による人類滅亡の危機が始まりである。
地球内の多くの国々が貿易や勢力争いにより、停戦の緊張が糸が切れたように解かれ、核兵器による地球汚染が深刻化した。
これにより、人類滅亡を避けるため、人口激減に瀕した人類は一致団結して宇宙への進出を余儀なくされた。
西暦の終わり、運命銀河歴の始まりである。
一方、別の並行世界である地球によく似た星では、極小さな島が一つある謎に満ちた場所があった。
島が小さい上、漁業の発展と王国があるだけで、何の変哲もない、それでも沖縄ほどの広さがあり、人口は漁業の村と王国の都市の合わせて、100人ほどの人々が住んでいた。
この島の村と王国には、一つずつ隠された秘密があった。
村には、教会の地下があり、城下町の近くには遺跡とほこらが存在する。
それぞれにいくつか厳重に保管されている物があるらしいが、村の教会長と国王のみ知る者はいないとされている。
そして、3つ目の世界。それはあなたの星と同じ歴史を持つ地球である。
ごく平凡で、西暦がある地球の日常風景が広がる世界。
まずはそこから始まる。
同い年の少年少女の二人は、別々の夢をまるで実体験のように見ていた。
少年は広大に広がる宇宙へ進出する戦艦の中で、人々が歩き回っている様子を。
もう一人の少女は、魔物に襲われ怯えている母親と子供を助ける老人の姿を。
二人は目を覚ますと、少年はぽかんと口を開け、少女は知らずに涙を流していた。
少年の母「勇~、勇~!朝よ~」
下の階で勇の母が読んでいる。
この時に少しは可能性を考えているべきだったのかもしれない。今いる世界に、ゆっくりと大きな異変が起きていることに。
宇宙銀河歴500年。宇宙は3つの巨大勢力に分かれていた。
地球の太陽系から少し離れた銀河系に位置する星。帝国の首都惑星ノヴァールと、その惑星から円を描くように、時計周りに、銀河レジスタンス、宇宙共和国が存在している。
比率でいうと、銀河帝国は4であり、レジスタンスは3、宇宙共和国も3の三つ巴の争いになっている。
時にその年、この宇宙の銀河系に三つ巴の争いを終わらすべき最初の戦いが始まろうとしていた。
二十歳になろう青年は、二つのモニターを眺めていた。
一つは銀河系の3つの勢力図。もう一つは目の前にある戦いの縮図である。
帝国艦スターダストの司令官である若干二十歳のこの青年、ライト・シン・ブレイズは、数の上では三倍のあるレジスタンスとの戦いに目を向けている。
「閣下、レジスタンスとの戦いはどうなされますか?」
ライトの長年頼の友であり、副官の任に就くこの青年、レフト・リースもまたレジスタンスの存在を気にかけていた。
「そうだな。数は三倍だが、敵は二つに分かれている」
ライトはこの星系での戦いに自分たちの信念を思いを馳せている。
しかし、今いる場所に時空の歪みは生じ始めていることは知る由もなかった。
この星には、いやこの小さな村と王国の地方は、古い文献では魔物の出現や戦争の名残が記されているが、今現在の数世代の及ぶ歴史には、まるで何もなかったかのような退屈の日々が続いている。
だが、二つの並行世界に時空の歪みが生じ始めた時、光時勇とライト・シン・ブレイズを引き込むようにこの星にも、遺跡の場所に小さな異空間が現れた。
時に、アルビオスの村に産まれた漁業の父を息子に持つアルスは、王国の王子とともに近くの古い漁船の跡地にいた。
「近頃、古びた遺跡の近くを通ると変な音が聞こえるらしい」
王子パルスはアルスにそう話す。
アルスもまたおかしな夢をよく見るようになった。
「アルス。俺はこの星に島だけ一つだと信じるのに不信を持っている」
王子パルスは城から持ち出した古い地図を二つ出し、アルスに一つ渡す。城の保管子には大量にあるらしい。
「いよいよ明日、俺たち二人で遺跡の調査に向かおう」
二人は地図をそれぞれの袋にしまう。
「お前もすぐに村に戻れ。俺も準備するから」
王子パルスはアルスともに跡地の扉を閉じ、パルスは王国に走って行く。
アルスは村に戻ると、村長の娘メリアに見つかる。
「あんたさぁ、王子と一緒に何してるわけ?」
アルスは黙っている。
メリアは苛立ち、
「いいわよ、いいわよ。絶対にあんたたちのしてること見つけてあげるんだから」
メリアは走って屋敷へ戻っていく。
アルスも夕方から夜になり、晩ごはんを食べに家へ帰った。
こうして、3つの世界が今はまだ普段通りの生活をしている中、時空の歪みは更なる流れを作ろうとしていた。
3つの世界の真ん中に位置する地球で、時空の歪みが関係する事件がまもなく始まる。
少年の勇は、朝ごはんを食べて高校へ通う。
授業を受け、昼休みの昼食時間。クラスメートの話が聞こえ、隣のクラスの一人が行方不明になっているという噂が聞こえてきたのだった。