8 改めて説明を受けました。
「それでは改めてクレンティーヌ王国へようこそ。我々はここに居る君達を心より歓迎しよう」
そう言うと優雅に一礼をして、宰相さんは話を続ける。
「さて、この世界について簡単に説明させてもらおう。北方に魔族の収めるブリガンド帝国があり、その南方側から抑え込むようにして、六つの国が並んでいる。東側から順にシュトライト皇国、バグー王国、クレンティーヌ王国、エルフィン帝国、ルーべニア聖国、ライアード王国といった具合だ」
「六つの国というのは、すべて人族の国なのでござるか?」
「バグー王国は獣人族の国で、エルフィン王国はエルフの国だ。獣人族もエルフも人族とは友好関係にあり、ルーべニア聖国は巫女や神官にエルフを迎え入れているし、ライアード王国は多種族が共生している。また、六つの国では奴隷制度の廃止や種族差別・男女差別の禁止を条約として取り交わしている」
「種族差別や男女差別が無いのは良いことだと思いますが、身分格差がありますよね?」
「王族、皇族、御使い、巫女、神官といった尊き身分の方々や、貴族、騎士、衛士といった身分の者がおるが、それぞれにそれなりの責任が存在するし、市井の者の方が幸せということもあるやもしれないな」
そこで言葉を切ると、宰相さんは小さく咳払いをしてから話を続ける。
「そなた達には職業に応じた身分が与えられることになる。願わくば我が国の発展に寄与してもらいたいのだが、無理強いはしない。他国に行くというのであれば橋渡しもしよう。文献によると、過去の異世界人の中にはネコミミとやらを求めてバグー王国に行った者もいれば、エルフとイチャイチャすると言ってエルフィン王国へ旅立った者もいたらしい」
「ファンタジーの醍醐味だね。もしかして美形エルフに囲まれて逆ハーもいける?」
「獣耳ショタっ子とキャッキャウフフ。滾るわあ」
クラス委員長(女子)が爛々と目を輝かせて、図書委員(女子)と一緒に呟いている。えっ?君達ってそんなキャラだったっけ?
「では職業ごとに説明をしようと思う。まず職業が『剣士』『戦士』『拳闘士』の者には衛士の身分を与えられる。基本的には前衛の戦闘職であるので、周りをよく見て注意して戦ってほしい。また戦闘をしたくない者は、職業に応じた軽作業を行ってもらうことになる。戦闘をしたくない者については、他の職業の者も同様だ」
戦闘をしなくていいという言葉を聞いて、クラスメイトの何人かが安堵の溜息を洩らした。
そりゃそうだ。戦わずに済むならそれに越したことはない。
まあ俺はユカと一緒に冒険もしてみたいから、何とか戦う手段を手に入れたいと考えている。無属性魔法に活路を見出せれば良いのだが。
「次に、職業に『騎士』と入っている者には騎士の身分を与えられる。基本的に前衛の戦闘職だが、騎兵特有の技能を使っての突貫攻撃に強いといった特徴がある。また、『守護騎士』や『護衛騎士』などは守備の要となり、『聖騎士』はそれに加えて回復を司ることもある」
騎士は案外オールラウンダーなのかもしれない。一人一人は特化型でも、騎士団って言うぐらいだから集団戦が基本のはず。
「何よりもまず、乗馬の練習をしないと」
「俺、乗馬技能が無いんだけど、本当に騎士なのか?」
「乗馬技能が無いってどんな騎士だよ」
「従騎士だって」
「それ、見習騎士ってことじゃね?訓練すれば乗馬技能が手に入りそう」
「はあ。頑張るしかないか」
何やら不憫なクラスメイトが居たが、前向きに頑張りそうだから応援することにする。頑張れ!
「続いて『勇者』『魔法剣士』『魔法戦士』『魔拳闘士』の職業の者にも同じく騎士の身分が与えられる。前衛もしくは後衛として戦闘と防御を司ることが出来るし、魔法属性によっては強力な技を使うことも出来る」
勇者は中堅職業って感じか。まあ勇者の技能って、特化型の魔法剣士か魔法戦士だからな。
「へっ。勇者と同列だぜ。特化スキルを覚えれば超えられるかもしれないな。燃えるぜ」
「私の場合は魔法に磨きをかけて、防御を極めた方が良さそうだわ。戦うのは怖いし…」
「じゃあ俺が戦ってやるよ。その代わり守りは任せたぜ!」
「うん。私、頑張るね!」
突然のクラスメイトによるラブロマンスの開演。うん。お幸せに。そのうち俺もお前らの前でユカとイチャついてやるからな。覚えておけ!
「次は、『魔導士』『回復士』『結界術師』及び職業に『魔術師』と入っている者には、準男爵の身分が与えられる。 主に後衛で魔法属性により攻撃、防御、回復、付与の術を使い戦闘を補助する。また『回復士』や『光魔術師』、魔法属性を問わず回復魔法を使える者、先の戦闘職でも回復魔法が使えれば、医療従事者として治療院などで仕事をすることも可能である」
「なんと!拙者、準男爵でござるか!」
「まさか勇者より上なんて思わなかったわ。魔導士万歳!」
「大丈夫、身分が違っても私達、ズッ友だょ」
「濡れたっ!!!」
なんか最後ヤバそうな会話が聞こえたけど、気のせいだよね。うん。気のせい。
「そして最後に『錬成術師』だが、この職業に関しては事情が異なるため、国が身分を与えることが出来ない。というのも、『錬成術師』は六つの国の間に結ばれた条約によって、六つの国から『御使い』へと奉戴される」
「それって、国王様と同列ってこと?」
「有り体に言えばそうなる。まあここ30年の間、錬成術師は出現していないから幻の職業ということだ」
「あの、すみません。俺、錬成術師です」
「ふぇっ?」
俺が自分の職業を明かすと、驚きの表情を浮かべた宰相さんが可愛らしい声を上げた。
「コホン、……いや、そなたがあ奴らの仲間でなくてよかった」
「もし仲間だった場合はどうなったのですか?」
「六つの国と交流のある魔族に頼んで、魅了魔法と隷属魔法をかけたうえで牢獄で強制労働だな」
「何それ怖い」
牢獄に繋がれて、意思も無く生活用品を作り続けさせられている姿を想像して、思わず身体を震わせた。恐ろしや恐ろしや。
「えーっと、城山達はこれからどうなるのですか?」
「才能封じの首輪を着けて、鉱山での強制労働5年といったところだな」
「才能封じの首輪?」
「武器召喚や道具顕現の才能がある者も居るからな。罪人用にと、過去の御使い様がお作りになった魔道具だ」
魔道具か。俺も作れるようになるのかな。
そんなことを考えながら、錬成術師パネェと改めて思うのであった。