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異世界転移で高待遇  作者: 神納 一哉
3/16

3 錬成術師について色々聞きました。

俺が幼馴染の名を告げると、金髪碧眼の少女の後ろに控えていた侍女の一人が、恭しく一礼をしてから部屋を出て行った。


「ムラサメ様。他にも大切な方はいらっしゃいますか?」


「いや、特には」


青野はなんだかんだ言って上手くやっているようだったから大丈夫だろう。他の奴らは正直どうでもいい。ほぼ接点もないし。特に城山は幼馴染にもウザがられているからな。


「えーっと、君は多分、この国の王女様だよね?」


「はい、わたくしは第一王女のジョセフィーヌ・フタミ・ディ・クレンティーヌと申します」


「侍女を連れているとはいえ、王女様が男と二人きりってヤバいんじゃないの?」


「こう見えても優秀な護衛官ですのよ。それ以前にムラサメ様はご無体なことはなさらないでしょう?」


そう言って小さく微笑む王女様。


「…魅了しようとしても無駄だ」


「そのような技能は持っておりませんわ」


「天然かよ。美少女って得だな」


「お褒めいただきありがとうございます」


別に褒めているわけじゃないんだけど。あれ?褒めてるのか?


「錬成術師ってなんでそんなに重要視されるの?戦闘向きじゃないよね?」


「その才能の汎用性ゆえ、錬成術師は重要視されるのです」


「この世界の人でも錬成術師って居るの?」


「いえ、錬成術師は異世界人に稀に現れる職業ですね。過去の召喚者の中にも居ましたが、錬成術師の重要性にこの世界が気付いたのは、シュトライト皇国に現れた錬成術師のミノリ・オオツキ様が亡くなられた後でした」


「…亡くなったってことは、向こうに戻れなかったってことだよね?」


そう尋ねると、王女様は自分が失言をしてしまったことに気付いて黙り込んだ。


「そのシュトライト皇国とかいうところでは魔族領で情報を得られなかったんでしょ?何年前の話かわからないけど」


「オオツキ様が亡くなられたのはおよそ30年前です」


「結構前の話なんだ。それで、錬成術師の重要性っていうのはどんなこと?」


「オオツキ様が亡くなられてから暫くして、オオツキ様のお仲間やシュトライト皇国の生活水準が落ち始めたのです。それだけ錬成術で作られたものに依存していたということなのでしょうが、事態を重く見たシュトライト皇家や異世界人は、錬成術師の重要性を後世に残し伝えたのです」


「ってことは、錬成術師は生活水準を向上させることが出来るってことか。具体的には?」


「例えばこの懐紙を、ムラサメ様、手に取っていただけますか?」


そう言って王女様に藁半紙が波打っているような紙の束を渡された。


「メモを取ったりするのには向いてなさそうな紙だけど、いったい何に使うもの?」


「それは汚れを拭いたり鼻をかんだりするものですわ。ムラサメ様の世界にもそういったものはありましたでしょう?」


「うーん、ちょっと違うかなあ」


「その懐紙を手に持ち、ムラサメ様が想像したものを思い描いて念じてくださいませ」


受け取った懐紙を見ながら、王女様が言うように俺が先ほど想像したもの―ティッシュペーパー―を考えてみる。すると、俺の手に握られた懐紙が淡い光を放ち始め、その光が収まったとき、俺の手に握られていた懐紙は、ティッシュペーパーの束と若干の懐紙屑へと姿を変えていた。


「………どういうこと?」


「それが錬成術ですわ。すごい。ムラサメ様の世界ではこのように柔らかく薄いものが懐紙として使われているのですね。とても素晴らしい製紙技術ですわ」


俺の手に握られていたテッィシュペーパーの束に触れながら、王女様が興奮した面持ちでそう言った。


「ムラサメ様、その手に持たれているものを収納してみてくださいませ。収納(ストレージ)と頭の中で念じればよろしいですわ」


王女様に言われた通り、握ったティッシュペーパーを見ながら収納と念じると、次の瞬間、手の中からティッシュペーパーと懐紙屑が消えた。


「それではこちらも収納してください」


先ほどと同じくらいの懐紙束を渡されたので、それも収納する。


倉庫(ボックス)と念じれば空間収納内の内容がわかります。中身を取り出すには取り出したいものを取り出したい数だけ念じれば出てきますわ」


倉庫と念じると、目の前に液晶パネルのようなものが現れてリストが表示された。


――――――――――

空間収納 LV1 3/100 上限1000


技能:収納(ストレージ) 倉庫(ボックス) 解体(アパート) 整理(ソート) 消去(デリート)


懐紙 50

ティッシュペーパー 62

植物素材屑 0.2

――――――――――


ステータスチェックの時にも思ったけど、この画面って超技術力(オーバーテクノロジー)っぽいなあ。


「生産業を生業としているものによりますと、空間収納の中の物は素材に使用することが出来るそうです。お試しくださいませ」


 掌を見つめながら先程のようにティッシュペーパーを思い浮かべると、淡い光が掌の上に集まってきて、やがてそれはテッィシュペーパーの束に形を変えた。


そのまま収納と念じて収納すると、倉庫と念じて空間収納の中身を確認する。


――――――――――

空間収納 レベル1 2/100 上限1000


技能:収納 倉庫 解体 整理 消去


ティッシュペーパー 124

植物素材屑 0.4

――――――――――


どうやら懐紙50がティッシュペーパー62と植物素材屑0.2になるようだ。数を確認してからティッシュペーパーを全部取り出して王女様に渡すと、彼女は嬉しそうに受け取った。


「ムラサメ様、自己分析(チェック)と念じて消費魔力をご確認くださいませ」


言われるままに自己分析と念じると、倉庫の時と同じようなパネルが目の前に浮かんできて、そこには俺のステータスが表示されていた。ステータスオープンじゃないんだね。


――――――――――

キョウスケ・ムラサメ

レベル1

職業 錬成術師

体力 100

魔力 81/100

耐物 20

耐魔 20

俊敏 10

幸運 10

才能 異世界人・言語理解・創造・神秘・魔力錬成

技能 空間収納1・無属性魔法1・生活魔法1・鑑定10・素材理解1・測定1・調合1・錬成1・複製1

――――――――――


「魔力が81/100になっているけど」


「1回の懐紙の錬成に10の魔力を使用したということでしょう。自然回復しているから、魔力の数値が増えているのではありませんか?」


「あ、うん。今は82/100になってるね」


「それはムラサメ様の才能『魔力錬成』が影響していると思われます。わたくしたちは回復までにより多くの時間が必要になりますわ」


「なるほどね。あと、素材理解と測定って技能が増えているんだけど」


「技能については、ステータスに表示されている技能をすることで見ることが出来ますわ」


確認してみると、素材理解は素材に関する知識を得る能力で、測定は触れたものを測定する能力だった。役に立つ能力なのかはよくわからない。


まあ、錬成術師とは生産特化型の職業なのだろう。


「ムラサメ様、いきなり錬成術を使わせてしまって申し訳ありません」


「いえ、自分の力を知ることが出来たし、少なくとも役立たずではないようで安心しました」


「ご謙遜を。本当に素晴らしいお力ですわ」


「色々試してみたいことがあるのですが、素材をいただくことは可能でしょうか?」


「後ほどいくつか素材を届けさせましょう。ただ、試すのは時間的に晩餐会の後になってしまいますが」


「それでも、仲間より先に自分の能力について検証できるのは嬉しいよ」


「まあ。ムラサメ様は勤勉なのですね」


「そんなんじゃないよ」


王女様の崇拝するような眼差しが怖い。懐紙をティッシュペーパーに変えただけなのに。


「では失礼いたします。後ほど晩餐会でお会いしましょう」


優雅に一礼をしてから、王女様は侍女と共に部屋を出て行った。


椅子に腰を下ろしてテーブルに突っ伏す。なんか疲れた。晩餐会の迎えが来るまで、こうしていよう。

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