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平和維持

作者: いつみゆう

「弱腰自衛隊!」

「税金のッ!ムダ使いッ!」


駐屯地正門前はデモ隊でごった返していた。

誹謗中傷の雨あられ。


事の発端は"北"のミサイル発射。


日本上空をミサイルが飛んで行っても迎撃しない日本政府に不信感を抱いた民衆によるデモ。


ここ連日デモが続いている。


警衛所からは駐屯地を守る自衛官達がデモ隊を見つめている。


「毎日よく来ますね」

「ああ。仕事はどうしたんだかな。まさかこのためにわざわざ休みもらって来たのかな?羨ましいねぇ。そんな事で休みが貰えるなんてさ」


警衛所の中で警衛司令と控え歩哨についている若手警衛隊員が

デモ隊をやる気のない目で見つめながら話している。


「でも確かに……弱腰ですよね。我々って」

「どういう意味だ?」

「だって、何回もミサイルが飛んできているのになんで落とさないんですかね。これって"北"に戦争仕掛けられないからじゃないんですか?……要するに"9条"のせいですよね。やっぱりこの国は弱腰ですよ」


若手の隊員は自分が守るこの国、そして自分の仕事を嘆いていた。


国の危機をただただ指をくわえて見ている自分に嫌気がさす。

その嫌気は次第にやる気を奪っていく。

デモ隊を見つめる若手隊員の顔にはそのやる気のなさが現れている。


「確かに、それもそうだな……でもよく考えてみろ」


警衛司令は書類に目を通しながら始めた。


「撃ち落とさないんじゃない。"撃ち落とせない"んだ」

「……え?」

「もしここで撃ち落としてみろ。それが発端で戦争になったらどうする?」

「その時はアメリカが……」

「助けに来てくれるって?甘いんだよ。助けに来てくれる間に何十、何百とミサイルが撃たれるんだぞ?何人死ぬと思う?」

「…………」


若手隊員は返す言葉が出なかった。


自衛隊(おれたち)はな、この国を、国民を守らなきゃならないんだ。だから、無闇に兵器を使えないんだ。……オレたちは日の目を浴びることはないんだ。とにかく耐えるしかない。デモ隊に何言われようと、テレビでなに言われようと、自衛隊のこの対応がこの国の平和につながるなら、オレはそれでいいと思ってる」

「はい……その通りです」


若手隊員の目には、またやる気が戻っていた。

……もう1つ、思うことがある。


戦争にはヒーローと悪役が必要だ。


アメリカと中東の戦争。

アメリカとベトナム……


アメリカの方が正義の行動を起こしているように見えないだろうか?


つまり……


日本がミサイルを撃ち落とさないのは、あえて"日本に落とさせて"……その後アメリカが日本の代わりに正義の報復(せんそう)……。

という流れに持っていきたいのではないか?


アメリカは日本にミサイルが落ちるのを待っているのだろうか……。

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