2、都会って広いわ…
受かって良かった…。俺は安堵の息を吐いて、アオイに話しかける。
「よし、それじゃ俺帰るわ」
「えぇ〜、私はもう少し都市を見たいよ〜」
「俺は寝たいんだ。んじゃ…」
「もー、ほらっ‼︎ 行くよッ」
グイグイとアオイは俺の手を引っ張る。
あ、そうだ。こいつメッチャ力強いんだった…。
俺は彼女に従うがまま、都市・市民区の住宅地に入る。路地は人が2人入れるほどの幅で、道は灰色のレンガで作られていた。
俺たちはその道を真っ直ぐ進む。…まぁ、たまにはこういう日も悪くない。それにこの辺りも覚えておかなきゃいけないしな。俺がそう考えていると、路地の端が見えて来た。
俺たちは路地を出る。そこには多くの露店が並ぶ市場があった。活気に満ちている。国が豊かな証拠だ。
俺はアオイを見ると、尻尾を振っていた。…嫌な予感しかしない。
「夏晋、私買い物してくるから、テキトーに見てて!
終わったら電話するよ‼︎」
「えっ、お、オイ‼︎
アオイ、ちょっと待てってッ!」
…予感的中。アオイはものすごい速さで人混みの中へと消えていった。
俺はため息を吐いて、市場内を歩く。
ここは北東の有名な市場【レインフラワー】だ。食べ物、本、雑貨など、全てのものが揃っているという。俺は雑貨屋に寄る。そこのおばちゃんが俺を見ると、『いらっしゃい‼︎』と俺に声をかけてきた。
「その制服は、虚空中の子かい?」
「はい、そうです」
へぇ…と俺の顔を見てくる。確かにわざわざ遠くから都市に来ているのだ。珍しいのであろう。
「ということは天橋高校の受験生だね。
受かったのかい?」
「はい、まぁ…」
「すごいじゃないか、お疲れ様!
はいこれ。合格祝いだよ。良かったら、どうぞ」
彼女が俺に手渡したものは、青筒のシャーペンと6等星のバッチ。タダでくれるという。これは嬉しい。俺はそのあと、その雑貨屋でお土産を買った。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。
いやぁ、やっぱり虚空の子は礼儀正しくていいね。
私が困っているときに助けてくれたのが、元虚空中出身の天橋高の生徒だったのさ!
だから毎年虚空中の子にはシャーペンとバッチをあげているのよ」
そんなことがあったんだ。先輩ナイス!
俺は雑貨屋を離れ、アオイと合流する。彼女の両手には沢山の袋があった。
「お前、何買ったの?」
「えっと、これはかぁさんの。それでこれがとぉさんの。これはおじいちゃんとおばあちゃん。んで、これが妹と弟の分でしょ〜。
あとは全部私のだよ!」
俺は『5割お前のじゃねーか⁈』と心の中でツッコミを入れる。結局、半分(全てアオイ自身のお土産)は俺が持って、バス停に向かった。