3、都市に到着‼︎
俺の家の玄関のドアを開けると、そこには紫色の長髪を持つ女子が待っていた。彼女はプクッと頬を膨らませ、俺に可愛く怒る。
「もぅ、夏晋っ、遅いよ!
バス行っちゃうよッ⁈」
「あぁ、悪りぃ悪りぃ」
「ちょっと、もう少し反省しなさいよッ‼︎」
彼女は俺の適当な返事に説教をする。俺の同級生兼幼馴染だ。
彼女の名は“関アオイ”。長髪の間からピョコピョコッと狐耳が生え、フワフワとした尾が6本ある。
彼女は、狐の妖曾と人間のハーフだ。 田舎とはいえ、外でこんなにも堂々と姿を現して大丈夫か?と思うだろう。
この世界、いやこの時代では妖曾(…大昔の地輿星でいう妖怪)のハーフという人は珍しくない。
人間の純血が全体の4割、妖曾の純血が全体の2割、そしてハーフが全体の4割ぐらいだ。俺は多分人の純血だろう。一度調べてみようかな?
俺たちはバス停へ走って向かう。
バス停への道の両側には田畑がある。
そこは春になると色とりどりの草花を咲かせ、秋には収穫物が色づき、黄金色の絨毯が敷かれる。今は冬なので雑草が所々生えているだけだ。
俺たちはバスにギリギリ間に合い、都市まで40分ほどバスに揺らされる事になった。俺たちは1番後ろの席に座る。
乗ってから20分間は俺たち以外誰も乗ってこなかったが、少しずつ人が乗って来て、最終的に人が入らないほどぎゅうぎゅう詰めになっていた。
都市の高さ50mの壁が俺たちを迎える。全部で6個ある巨大な門の1つを通り、都市の市民区に入る。道の両側にレンガ造りの立派な建物が並び、人々が行き交っている。道の端に喫茶店・酒場・呉服屋・雑貨屋などの色とりどりの看板が置いてある。
「わぁ、見て見て‼︎
店、たくさんあるよ!」
窓の外を見て少し興奮気味のアオイ。都市なんだから、店が多いのは当たり前だろうに…。俺は、『はいはい』と軽く返事を返し、窓の外を眺めていた。