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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第3章 司馬子上、蜀漢を滅ぼす
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第75話「諸葛誕の乱 ~その5~」

 勝敗は明らかであった。

 呉の援軍は魏の厚い包囲網を崩すことが出来ず戦は長期化、その結果寿春城内の兵糧は底を尽き始め、体調を崩し倒れる者が現れ始めていた。

 もはや風前の灯の諸葛誕軍であったが、さらに追い打ちをかけるような出来事が起こる。


「何ィ!? 全懌(ぜんえき)ら一族が全員魏軍に投降しただと!? どういうことだ!」


 文欽は報告を聞くや否や立ち上がると、伝令兵の髪を掴んだ。

 その顔は憤怒で赤く染まっており、続く言葉次第ではその髪を引き抜かんとする勢いであった。


「て、敵の工作によるものかと思われますが、詳細まではまだ分かりませぬ……」


「あん? 分からない?」


 文欽はそう言って掴んでいた髪を乱暴に引っ張った。

 伝令兵は体勢を崩しその場に倒れる。すると、すかさず文欽はその腹に蹴りを入れた。


「どうせこの俺に人望がないから離れていったんだと、そう思っているんだろ!?」


「そ、そのようなことは決して……」


「うるせえ! てめぇら雑兵どもの心のうちなんてな! 俺には手に取るように分かるんだよ! この生意気な!」


 文欽は何度も何度も蹴り続ける。

 やがてソレは動かなくなったが、それでもなお蹴り続けることを止めなかった。

 諸葛誕がたまたま文欽の部屋を訪れたのは丁度その時であった。


「文欽殿!? な、なにをされている! 止めるのだ文欽殿!」


「う、うるさい! こいつが! こいつが俺を馬鹿にしたんだぁぁぁぁ!」

 

 諸葛誕の静止も振り切り、一心不乱に蹴り続ける文欽。

 やがてその騒ぎを聞きつけた兵士たちに取り押さえられ、文欽は冷静さを取り戻したが、しかし彼の心は長く続いた籠城戦により完全に壊れていた。






 一方、魏軍・司馬昭の陣。

 ここでは司馬昭が鍾会を呼び、その活躍を褒め称えていた。


「今回の策、実に見事だったな鍾会。おかげで寿春はもはや落ちたも同然だ」


「恐れ入ります。まあ、これくらい大したことではありません」


 今回、魏に降伏した寿春城の全懌(ぜんえき)全静(ぜんせい)全端(ぜんたん)全翩(ぜんへん)全緝(ぜんしゅう)

彼らを魏に降らせたのは他でもない鍾会であった。


 全懌らの降伏の少し前のこと、建業では全一族内で争いが起きて訴訟に発展しており、その結果、全禕(ぜんい)全儀(ぜんぎ)が母を伴って魏に亡命するという事件が起きていた。

 それに目を付けた鍾会は全禕・全儀に「呉では寿春を抜くことが出来ない全懌らに腹を立て、全一族を誅滅せんとの動きがある。我らはそれから逃れるため魏に帰順したのだ」という内容の文書を書かせ、それを密かに城内の全一族に届けさせた。

 こうして、もはや呉に帰る場所がないと悟った全懌らは部下たちを引き連れ魏に降伏したのである。


 この鍾会の策の成功はあまりに大きかった。

 これにより城内の者たちは大いに動揺、全一族に続けとばかりに降伏者が続出した。

 また、司馬昭はこの降伏者たちを悉く赦すことで、その寛大さを魏呉の両国に示すことに成功する。

 かくして、孫呉を巻き込み起こした諸葛誕の反乱は、あとは諸葛誕自身の破滅を待つのみとなった。

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