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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第2章 司馬子元、愚者たちを粛清す
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第49話「東興の戦い ~前編~」

 魏の英雄・司馬懿は没した。

 そしてその翌年には呉帝・孫権もこの世を去る。

 孫呉ではおよそ10年間にも渡り、孫権の後継者を巡る醜き政争が繰り広げられていた。

 結局は孫権の末子・孫亮(そんりょう)が二代皇帝となることで決着がついたが、それでもこの長きに渡る闘争は着実に呉の国力を衰退させていた。

 252年12月、そんな弱り切った呉を滅ぼすべく、ついに魏は大規模な攻勢を仕掛ける。

 その数およそ15万。だが、その中に大将軍・司馬師の姿はなく、総大将は弟の司馬昭が務めた。


「司馬昭様。何故、司馬師様は洛陽にお残りになられたのでしょう。よもや体調でも優れないのですか……?」


 行軍の途上、痩せぎすの将が司馬昭に尋ねる。

 男の名は諸葛誕(しょかつたん)。字を公休(こうきゅう)という。

 名前の通り諸葛亮の遠縁であり、彼もまた智謀に優れた。


「確かに兄に比べれば俺は未熟だ。総大将として頼りないだろうが……。流石にそう面と向かって言われるといささか傷つくな」


「い、いえ! 決してそのような意味では! ただ私は司馬師様のことが心配で……」


 はじめは諸葛誕の発言にムッとした司馬昭であったが、必死に弁明する彼の姿を見て、やがて相好を崩した。

 諸葛誕がひどく不器用な人物であることに気づいたのである。


「兄上は元気だ。ただ蜀が興勢山での勝利に加え、新たに夏侯覇を得たことで息を吹き返し始めている。都をあまり手薄にはしたくないのだろう。もっとも兄上のことだ。他にも思惑があるのだろうが……」


 司馬昭がそう言うと、諸葛誕は安堵の表情を浮かべた。

 と、その時。軍の前方より馬に乗った一人の将が急いだ様子で司馬昭の元にやってきた。


「御注進! この先、東興の地に呉軍の姿あり! 二つの城を築づき、我らの進軍を阻まんとしております!」


 大柄な身体を持つこの将の名は韓綜(かんそう)。もとは呉の将で、名将と名高い韓当の子である。父の死後、呉帝・孫権の不興を買って魏へと投降した。

 此度の遠征ではその経歴により、案内役として参加していた。


「貴殿が呉にいたときはあのような城は?」


「いえ、なかったと記憶しております。おそらくは我らの侵攻を見越し、最近になって新たに建てられたものかと。お役に立てず申しわけありませぬ」


「いや、気にするな。貴殿は十分によく働いてくれている。よし、ここに陣を敷き、軍議を開くぞ!」


 司馬昭はそう韓綜を労うと、全軍に下知した。

 こうして両軍は、東興の地で対峙する形となった。






諸葛恪(しょかつかく)殿。貴殿の予想通り、魏軍が東興に姿を現したようです。しかし、我らの到着までお味方は持ちこたえてくれましょうか」


「心配いりませんよ丁奉(ていほう)殿。あの地は元より地形が険しく大軍を活かしづらい。その上、城を守る全端(ぜんたん)殿も留略(りゅうりゃく)殿も堅実な方たちです。万が一にも落ちることはないでしょう」


 東興の地へと向かう呉軍本隊。その数およそ4万。

 それを指揮するのは孫呉随一の知将・諸葛恪と猛将・丁奉である。

 兵の数では大きく劣っていながら、諸葛恪の顔に焦りや不安の色はなく、むしろ自信に満ち溢れていた。

 それもそのはず。彼の頭の中には既に魏の大軍を破る策が思い浮かんでいたのである。

 果たして諸葛恪の予想は的中し、魏軍はどちらの城も落とすことは叶わず、地団駄を踏んでいるうちにやがて呉軍本隊の到着を許すこととなった。

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