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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第1章 司馬仲達、乱世を駆ける
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第25話「南蛮征伐 ~前編~」

 諸葛亮率いる蜀軍と対峙するのは烏戈国(うかこく)の王・兀突骨(ごつとつこつ)の軍であった。


「脆弱な蜀軍など我らの敵ではないわ!余裕で捻り潰してくれよう!ヌワッハッハッハ!」


 蜀の大軍を前にしてもまったく臆する様子を見せない兀突骨。

 それもそのはず、彼は負けを知らぬまさしく常勝無敗の猛将であった。

 彼の背丈は並みの男の倍以上あり、背には得物である無骨な形をした巨大な棍棒を携えている。

 よく鍛えられた身体に無数の戦傷があれど、背に逃げ傷は一つたりともない。

 彼の前に立ったものはみなその棍棒により一瞬で叩き潰されてしまうのだ。

 また、負け知らずなのは彼だけではない。彼の配下の兵たちも精強なことで知られていた。

 兀突骨軍の兵士たちは、みな藤甲(とうこう)という特殊な鎧を着用していることから『藤甲軍(とうこうぐん)』と呼ばれている。藤甲とは油を藤の蔓に染み込ませて鎧状に編んで乾かしたもので、軽くて水に強く、さらには刀も矢も受け付けない驚異の強度を誇る。

 これにはいくら名軍師と名高い諸葛亮も一たまりもないだろうと思われた。





 やがて両軍は徐々に距離を縮めていき、太陽がちょうど真上に上がったころ激突した。

 

「蛮族が!おとなしく我らに従え!」


「無法に南中を荒らす侵略者め!返り討ちにしてくれる!」


 両軍の兵たちは互いを汚く罵りつつ刃を交える。

 そして鈍い音が戦場一帯に響いたかと思うと、何人もの兵たちが血しぶきをあげて散っていった。

 その兵たちはみな蜀軍の者であった。

 案の定、蜀軍の兵たちの刃は南蛮軍の藤甲を貫くことが出来なかったのである。

 いくら攻撃しても一切傷つかぬ、まるで不死身のような兵士を前に蜀軍の士気ひたすら下がるばかりであった。

 それにさらに追い打ちをかけるような出来事がおこる。


「グハハ!この兀突骨が、敵将・関索を打ち取ってやったわ!」


 そう言って、前線に出ていた兀突骨は高く腕を上げる。

 その手には関索の血にまみれた首があった。

 さらに、その首は何度も棍棒で叩き潰されたのかひどく変形している。


「そ、そんな……!あの関索様が……」


 軍神・関羽の息子のあまりに無惨な死。それによる衝撃が蜀軍にとって大きかったのは言うまでもない。

 結果、蜀軍は総崩れとなり敗走した。





 陽が落ち、あたり一面すっかり暗くなった頃、敗れた蜀軍はようやく再集結を果たした。


「藤甲軍……噂以上に厄介なもののようですね」


 諸葛亮は傷つき手当てを受ける兵士たちの様子を眺めていた。

 正直彼にとって、藤甲軍の強さは想像以上であった。

 藤甲など南蛮くらいにしかないため、その力を見誤ってしまったのだ。


「しかし、その作り方が分かってしまえば対策など容易……」


 そう言ってわずかに頬を緩める諸葛亮。

 彼の手には敵から奪った藤甲があった。

 諸葛亮は部下を南蛮軍に忍び込ませ、藤甲を盗ませたのだった。

 その後、藤甲を隅々まで調べ上げた諸葛亮はこの鎧の致命的な弱点を見つけた。

 そしてその弱点を活かした策を瞬く間に練り上げると、翌日南蛮軍に再戦を挑んだのである。

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