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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第1章 司馬仲達、乱世を駆ける
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第1話「風変わりな男」

 人は皆同じではない。

 各々誰かとは違う何かを持っており、似ているということはあっても完全に一致することはない。

 だが、もし人という生物を大まかに分けなければならないのならば、『才なき者』と『才ある者』の二つに分類されるだろう。

 そして、彼はその後者であった。






 紀元2世紀末中国。

 長きに渡り天下を治めてきた漢王朝もついに終焉のときを迎えようとしていた。

 宦官(かんがん)外戚(がいせき)の専横により、政治は腐敗。やがては民衆の不満は頂点に達し、黄巾の乱をはじめとする数多の乱が各地で起こった。

 そして、それをきっかけに世は群雄割拠の戦乱の時代へと突入したのである。

 董卓(とうたく)呂布(りょふ)袁紹(えんしょう)……。

 数多の英雄たちがしのぎを削り、やがて消えていった。

 そして今、天下を狙うに相応しき英雄は3人に絞られる。

 江東(こうとう)の地を治める孫権(そんけん)劉表(りゅうひょう)の客将でありながらその人徳で日に日に影響力を増す劉備(りゅうび)、そして帝を擁し中原・華北の殆どを手中に収めた曹操(そうそう)である。


「袁家は破ったものの、まだわしに抗う者は多くいる。中でも劉備と孫権。こやつらは要注意よ」


 曹操はそう言うと、酒をあおった。

 彼は今、重臣の夏侯惇(かこうとん)と酒を酌み交わしつつ、今後のことについて話し合っていた。


「孫権はたしかに厄介だが……劉備など取るに足らん相手ではないか? 孟徳(もうとく)、お前はなぜそこまでヤツにこだわる?」


 隻眼の猛者は前から疑問に思っていたことを問う。

 夏侯惇からして見れば、拠って立つ地も持たぬ劉備など、とても脅威には思えなかった。

 だが、曹操はそのさらに先を見据えていた。

 

「ヤツの駐屯する新野(しんや)には多くの者たちが集っていると聞く。ヤツにはどうやら人を寄せ付ける不思議な魅力があるらしい。ヤツはいまに強大な敵となろう」


 曹操はそう答えると、おもむろに立ち上がった。

 そして、語気を強めさらに続けた。


「だからこそ、優秀な人材を揃え、我が軍もさらに強固なものにしなければならん。いずれ来る孫権や劉備との戦いにそなえてな」


 そんな曹操の言葉に、夏侯惇は思い出したように言った。


「ふむ……。ならば、一人優秀だと噂の者を知っている。彼が我が軍に加われば今後の戦もかなり楽となろう。だが……奴はいささか風変わりというか……気難しい者らしくてな」


 夏侯惇の顔が少し曇る。

 だが、曹操はまったく気にせず、むしろ興味深そうに尋ねた。


「ほう、面白い。その者の名は?」


司馬懿(しばい)(あざな)仲達(ちゅうたつ)


 後に魏の軍師となり天下に名を轟かすことになる司馬懿。

 しかし彼はまだこのとき、ただの風変わりな一人の若者に過ぎなかった。

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