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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第1章 司馬仲達、乱世を駆ける
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第18話「禅譲」

 曹操の死より数日後、後を継いだ曹丕は主だった家臣たちを集めた。

 集められた家臣たちの中には当然司馬懿と夏侯惇がいる。

 また、そのほかにも夏侯覇(かこうは)鄧艾(とうがい)といったこれからの魏を背負って立つであろう若き将の姿もあった。

 しかし、肝心の曹丕の姿はまだない。

 家臣たちは次第にざわつき始める。

 一体、この場で曹丕が何を発言するのか。それが気になって仕方がないとういう様子だ。

 だが、この喧騒も次の瞬間いっせいに止む。


「静粛に!曹丕様のご出座である!」


 その掛け声とともについに新しき君主が姿を現した。

 そして、家臣たち全員を一通り見渡すと二ヤッと少し不気味な笑みを浮かべる。

 その堂々とした姿はどこか彼の父・曹操を彷彿とさせた。

 

「皆、よくぞ集まってくれた。今日集まってもらったのは、皆に大事な話があるからだ」


 曹丕はそう言うと、再び家臣たちを見渡す。

 そのあまりに真剣な眼差しから、いかにこれからする話が重大なものであるかがわかる。

 家臣たちは思わず息を呑んだ。

 そしてやや間があって、ようやく曹丕の口が開かれた。


「私は、これより国を興す!よって、劉協(りゅうきょう)様には帝位をお譲りいただく!」


 皆、唖然とした。

 それもそのはず、言葉こそ丁寧だが、今彼は皇帝の座を劉協から奪うと言ったのである。

 皆がどう反応すればいいかわからず困惑している中、一人の男が声をあげた。


「さすがは曹丕様、よきお考えにございまする」


 声の主は司馬懿であった。

 司馬懿は曹丕の考えに賛成であった。

 かつて栄華を誇った漢王朝もいまや形だけ。現皇帝である劉協はただの傀儡にすぎず、いまや曹家がその全てを取り仕切っている。

 すなわち、実質現在の皇帝はその曹家の長である曹丕のようなものなのだが、それでも帝と自称できるかどうかは大きい。


「わ、私も賛成にございまする!曹丕様こそ皇帝にふさわしい」


「そうだそうだ!帝には力ある者がならなければならぬ!」


 やがて司馬懿の発言をきっかけに、ところどころから曹丕の意見に賛成する声が挙がり始める。

 だが、その一方で少数ではあるが反対する者達もいた。

 その筆頭が夏侯惇であった。


「俺は反対だ。帝位を奪ったとなれば悪評が流れ、曹家の名に傷がつくことになる」


 だがこの夏侯惇の意見に対し、司馬懿は悠然と反論する。


「たしかに夏侯惇殿の意見にも一理ある。良からぬ噂が流れるのは防げぬであろうな。だが、言いたい奴には言わせておけばいい。曹操様という絶対的な存在が亡くなられた今こそ、帝という名が必要なのだ」


 睨みあう二人。お互いどちらも退かない。

 だが、結局意見は覆ることはなかった。

 曹丕は劉協に禅譲を迫り、劉協はこれを受諾。漢王朝はここに滅び、新たに曹丕を初代皇帝とする魏王朝が誕生したのである。

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