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西晋建国記 ~司馬一族の野望~  作者: よこじー
第1章 司馬仲達、乱世を駆ける
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第9話「陽平関の戦い」

 赤壁の戦いは戦況を大きく変えた。

 いままでの曹操一強の形が崩れたのだ。

 赤壁で勝者となった劉備は、その後、荊州(けいしゅう)南部を占拠。212年には大軍を率いて同族である劉璋(りゅうしょう)を攻め、214年には見事、益州(えきしゅう)の地を手に入れた。

 だがこの戦いで龐統(ほうとう)が討死、劉備は拠って立つ地と引き換えに大事な家臣を失う結果となってしまった。

 一方、赤壁で敗れた曹操だったが、潼関(とうかん)の戦いで馬超(ばちょう)韓遂(かんすい)ら率いる関中軍に勝利、その威信を完全に回復した。

 さらに曹操軍はその勢いのまま張魯(ちょうろ)を降伏させるべく進軍、陽平関(ようへいかん)の地で両軍は激突した。

 兵力では完全に勝っている曹操軍だったが、陽平関は難攻不落の要衝。苦戦を強いられる結果となった。


「クソ、劉備が勢力を拡大しつつある今、こんな雑魚に手こずっている場合ではないというのに」


 芳しくない戦況に司馬懿は苛立ちながら言った。

 正面から戦っても拉致が明かない。そう考えた司馬懿はあることに着目した。


「敵軍の指揮をとっているのは張魯ではなく、弟の張衛(ちょうえい)のほうか。ならば打つ手はある」


 司馬懿は思わずニヤリと笑みを浮かべた。





 その夜、張衛のもとに驚きの報が飛び込んできた。


「なに!曹操軍が撤退を始めただと……!ハッハッハッ!曹操め、この俺様の武勇に恐れをなして逃げ出したか!」


 張衛は髭を撫でながら野太い声で大笑いした。

 実際、張衛は昼間の戦いでは自慢の大剣で数多の兵を屠る大活躍であった。

 あまり腕に自信のない兄・張魯とは対照的に、張衛は己の武に絶対の自信があった。

 だからこそ、今回の戦では兄に代わり軍の指揮をとっているのだ。


「全軍、曹操軍を追撃せよ!この好機を逃すな!」


 張衛はそう高々に叫ぶと、自ら馬にまたがり、曹操軍の後を追った。

 その姿はまるで逃げる獲物を狩ろうとする猛獣のようであった。

 だが、彼はすでに司馬懿の術中にはまっていた。

 次の瞬間、軍に異変が起きた。


「ひぃぃぃ!矢だ!矢が飛んでくるぞ!」


「おい、敵はどこにいる!」


「わからん!暗くてまったく見えん!」


 暗闇に響く兵士たちの悲鳴。

 見えないところからの攻撃は兵たちをひどく動揺させた。

 そして軍全体に混乱が広がったころ、逃げる動きを見せていた曹操軍は反転、張魯軍に襲い掛かった。






 夜が明けたころには戦闘は終わっていた。

 あたり一面には大量の兵士の骸が転がっている。そして、そのほとんどが張魯軍のものであった。


「ふぅ、やっと片付いたか……」


 司馬懿は骸の山から張衛の死体を発見すると、安堵したようにそう呟いた。

 司馬懿の策、それは夜襲であった。

 まず隊を二つに分ける。

 本隊は騎馬兵や槍・剣などを持った歩兵を中心に、別働隊は弓兵を中心に構成した。

 そして本隊が後退し、相手が油断仕切っているところを側面に回りこんだ別働隊が一斉に矢を放つ。

 そうして見えないところからの矢に敵が混乱していたところを引き返した本隊で蹂躙したのだ。

 この策を実行に移すにあたって幸いだったのは敵の指揮官が張衛であることだった。

 張衛は確かに武勇こそ並はずれているが、その分、己が力を過信しているところがあった。

 その結果、まんまと偽りの撤退に惑わされ追撃を指示、さらに自ら突出したために無惨にも戦場に骸を晒す結果となった。

 もし、指揮するのが張魯であれば、たとえ策にはまったとしてもここまで大きな被害は出なかっただろう。

 その後、生き残った張魯は降伏、曹操はこれを許した。

 こうして曹操は漢中を手中におさめたのであった。215年のことである。

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