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魔刀使いのソウルリンク  作者: 向日葵
生命吸収魔法の使い手
12/18

part1‐12

なんかだんだん短くなって行ってる様な気が…

 雪が放った『 魂繋ぎ(ソウルリンク)』のラインは、瑠夏達の元まで伸びて来た。

 現在、魔導会と魔導軍は別行動をしている。魔導軍は先に待ちに行って避難誘導をしてくれている筈だ。


「これは、白石君の『 魂繋ぎ(ソウルリンク)』…」


 自分にしっかりと結びついたそのラインを見て、瑠夏は頬を緩めた。


「遂に、やるみたいですね」

「まぁ、結果なんざ見えてるんだがな」


 隣にいる湯野と夕も同じように頬を緩めて構成されていく白銀の魔法陣を見上げる。李世も、夜羅も、緋呂も、遊呂も同じように見上げてはその頬を緩めていた。

 これからもしかしたらあの町は消し飛ぶのかもしれない。それでも、魔導会の皆は雪と紫音が勝利する事を疑っていなかった。


「さて、と…。 ここから俺たちが出来る事と言えば--」

「送ろう。 私達の、全ての想いを…!」


 夕の問いかけにノータイムで瑠夏が答える。その回答に、全員が頷いて祈る様に手を合わせた。


「魂を繋ぐラインよ、私達の想いを、白石君に届けてっ!!」


 魔導会と雪を繋ぐラインを、輝く光が走り抜けて行った。それを見届けた魔導会の皆はやはり、その顔に笑みを浮かべていた。


- - - - - - -


「…!? こ、これは!?」


 ミスティカは急に何かの線が延びて来たと思ったら、自分の胸の辺りに沈みこんだ事に困惑して声を出す。それはミスティカだけでなく、同じような状態になった 魔導軍の人間も困惑していた。

 その線を見た九十九は、二ヤリと笑って高台を見つめる。


「これは白石君のオリジナル魔法、『 魂繋ぎ(ソウルリンク)』だよ。 大切な物を助け、守り抜くための力だ」

「…ふむ。 シラユキの奴はオリジナルまで作れるようになっていたのか。 流石だな」


 自分に繋がったそのラインを見て、ユーヴァンスが口元に笑みを浮かべる。

 説明を聞いたミスティカ達は、遂に雪達が戦闘を始める事を知った。


「わ、私達に出来る事は無いの?」

「いや、あるさ。 たった一つだけ、誰もが出来る事さ」

「それは?」


 ミスティカが尋ねてくる。自分に出来る事があるのならなんでもする、といった覚悟だ。

 それに対して九十九は不敵に笑いながら回答する。


「応援しようじゃないか。 白石君と穂坂さんが成功する様に、このラインに気持ちを乗せてね」

「なるほど…! 解ったわ。 皆、やるわよ」

『はい!』


 一斉に頷く魔導軍。九十九にも同様にそのラインに繋がれているので、魔導軍と同時に頷いていた。


「…ふ、シラユキ。 お前はこの状況をどう思う? 不安か、恐怖か、絶望か、それとも希望か」

「私達は、これは希望だと思ってるわ。 だから、シラユキ。 後悔の無い様、全てを出し切って!!」

『この想い、届いて(くれ)!!』


 魔導軍と九十九に繋がったラインから輝く光が走り抜けて行った。


- - - - - - - 


 周囲の無数の学院生達からも強い気持ちが輝く光となって雪に集められる。

ラインを駆け抜けた輝く光は雪へと流れ込み、雪はそれを紫音に流す。紫音は雪に信頼を返す。


「さて、と…。 紫音、大丈夫?」

「ん、とっても暖かくて、安心できる」


 にこり、と笑みを浮かべて魔導書を開く紫音。そこに集まる皆の強い思いと、魔導書の膨大な生命力。それらを紫音は制御し、収束させていく。

 上空にいるネガティブシャドウは更に魔法陣を大きくする。


 そして--上空から町を、下手すれば世界を壊す一撃が落ちてくる。


「生命力収束完了。 行って、『希望の一撃(ホープストライク)』…!!」


 上空からは絶望の一撃が、大地からは希望の一撃が放たれる。


『いっけええええぇぇぇっ!!』

「うぅ、うぅぅ…!!」


 直接魔力の本流をぶつけ合った紫音は自分が押されている事にいち早く気づいた。魔導書の魔力を注ぎ込み、更には自分の分まで注ぎ込むが、それでも押されるのを感じる。


「紫音…!」

「く、うぅ…! も、もう…!」

「くっ…! 僕は、諦めないからな…。 この町の為に、生きる事を諦めないからな!」


 雪の想いが増す。それが、全てのラインを伝って繋がれた全員に届く。それは、少し離れた瑠夏達魔導会の元まで届いた。


「…っ。 白石君の、想いが…!」

「これは、押されてるってことか!?」

「諦めるな、頑張れ!」

『俺(私)たちは、お前(君)たちを信じてるんだから…っ!!』


 魔導会に繋がれたラインからは更に強い輝きが発せられ、雪の元へと向かっていく。


「シラユキ…!?」

「…む、押されているのか。 ならば、俺たちに出来る事は--」

「応援しようじゃないか。 さっきよりも更に強い想いを込めて…!」

「なんかデジャブが…」

「はっはっは。 まぁ、ボケはここまでにして…」

『俺(私)達も、諦めてなんてないからね(な)!!』


 魔導軍と九十九を繋ぐラインが輝きを増し、それもまた雪の所へ向かっていった。

 全てのラインを通して更なる想いが雪に流れ込んで、それを紫音に送る。


「…っ! これでも、まだ駄目なのか…!」

「ぅぅうう…」


 紫音が苦しそうに『希望の一撃(ホープストライク)』を保つ。それでも、さっきよりはましになっているのが目で見えて理解できた。


「………?」


 その時、一つのラインが輝きを放っていない事に気が付いた。そして、そのラインの延びている方向に目を向けた。

 その目を向けた先には、雪の家があった。


- - - - - - -


『ふぅ…。 兄さんってば、ようやく私の最後に言った言葉を思い出したみたいですね。 …いや、思い出したというか、そう言う気持ちを持ったって感じかな…?』


 雪の自宅に置いてあるオルゴール。そこにもラインが繋がっていた。そのオルゴールの上には霞んでいるものの、確かに乃亜の姿があった。


『さて、兄さん。 聞こえていないとは思いますが、言っておきます。 オルゴールを大切にしてくれて、ありがとうございます』


 誰もいない部屋から外に出て、自宅の屋根に座る乃亜。霞んでいるとはいえ、座る事くらいは出来る様だ。


『折角その気持を持ってくれた事ですし、私も全力でお手伝いをさせていただきますね』


 乃亜はにっこりと微笑むと、雪に向かって手を伸ばした。


『さぁ、私の想いを、全ての想いを収束させて紫音さんに渡してあげてください…!!』


- - - - - - - -


「…っ!?」


 急に輝きだした最後のライン。そこから伝わってくる思いは、紛れも無く乃亜のものだった。

 慌ててもう一度自宅を見ると、屋根に腰かけて此方に手を伸ばしている乃亜の姿があった。それを見た雪は--不敵に笑った。視線の先で、乃亜が笑う。

 雪は全ての想いをただ紫音に流すだけではなく、全てを収束させてそれを紫音へと流す。


「っ! これ、なら…!」

「行ける? 紫音」

「まか、せて! 雪は、皆と応援よろしく…!」

「言われなくても。 よっし、『皆! 最後だ、全力で想いを伝えろぉぉぉ!!!!』」

 

 拡声魔法を使用し、雪は大声を張り上げた。そしてその大声に返って来たのは--


『ううおおおぉぉぉぉっ!!』


 全員が叫び、生命力を魔法陣に注ぎ込みながらも全ての想いを更に一段階上げる。


「行ける…! 撃ち抜け、絶望を壊せ…! 『希望の一撃(ホープストライク)』!!」


 全てを収束した希望の奔流が絶望の奔流を撃ち砕き、その先にいるネガティブシャドウに向けて一直線に進む。


『なん、だとぉぉぉぉ!?』


 かなりの負の力を取りこんだのにも拘らず、その取りこんだ相手の光の…希望の奔流に押し負けたネガティブシャドウは信じられない思いでその一撃を受けるしかなかった。



『よっしゃああぁぁぁぁぁぁっ!!!!』


 大歓声が上がる。空に存在した黒い魔法陣は消滅し、そこには晴れ空が広がっていた。


「は、ぁ…。 終わった…」

「紫音、お疲れ様」

「ん、お疲れ…。 ちょっと、疲れ、た…」

「お、おい…!」


 その場に倒れそうになったのをなんとか雪が受け止める。極度の集中でかなり消耗したのだろう。小さな紫音の身体を背負って、そこで魔導書に目が行った。

 紫音が使った、膨大な生命力の入った魔導書はその役目を果たし、その姿を塵に変えて消えて行った。


「…お疲れ様、魔導書」


 雪は小さく呟いて振り向く。そこには、喜びを分かち合うクラスメイトの姿があった。

 だが、雪はその中には入らずに、下で待っているであろう皆の所へと歩き出した。


「白石君!」

「シラユキ!」

「どーも。 なんとかなりましたよ」

「強がらなくて良いから。 本当は今にも倒れそうなんでしょ?」

「ははは。 流石にばれますか…」

「当たり前だよ。 家まで運んであげるから、もう休んでも良いんだよ…」

「そう、ですか…? なら、お願いします、ね…」


 紫音を背負ったまま雪が倒れそうになるので、瑠夏が雪を支えて、湯野が紫音を背負う。

 実は対して瑠夏と雪の身長は変わらないので瑠夏が雪を背負い、家まで運んだ。


「…本当に、お疲れ様。 この町の英雄君」


* * *


 1週間が経った。あれからというものの、1年5組のクラスメイトともよくしゃべるようになってきた。

 いつもの様に授業を受けて、いつもの様に魔導会に顔をだす。魔導会で変わった事と言えば、正式に紫音が魔導審判補佐になった事くらいだろうか。

 だが、一番変わったのは--。


「雪、起きて。 朝ごはんの時間。 遅れたらまた瑠夏に怒られる」

「うぅ…。 眠たい…」

「…起きないなら--」

「ごめんなさい起きました」


 殺気を感じた雪は飛び起きて起こした主、紫音を見やる。

 そう、この家を学院に売りこそはしなかったが学生のシェアハウスにする事に賛成したのだ。その結果集まってきたのが魔導会のメンバーという訳だった。


ゆき君。 何時も起きてくるのが遅いよ?」

「だから僕はせつですってば」

「でもセツはは紫音ちゃんが呼んでるから被っちゃう」

「そこ関係ありますかねー…」


 げっそりした様子で雪が呟く。それを見ていた魔導会のメンバーは笑う。皆、食卓に座って朝ごはんを食べていた。


「まぁ、おはようございます。 皆さん」


 そう言うと、各々挨拶を返してくれる。

 雪は食卓に座り、置いてあった朝ごはんを頂いた。やはり、瑠夏が作るご飯は美味しい、というのが全員の感想だった。

 紫音が作った時の暗黒物質ダークマター事件以来、料理は雪、瑠夏の担当になっていた。そして、今週が瑠夏の作る日だ。


「おっと、もうこんな時間か。 それじゃ、皆行くよー?」

『はーい』


 それぞれがリビングに置いていた鞄と魔装を持って1人ずつ玄関から出て行く。


 こうして、いつもと変わらない日々が、また始まった。

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