赤口
何事も避けたほうが無難だとされている日が、赤口。
本当なら、正午からプラスマイナス1時間程度が吉で、それ以外は、凶だとされる日だ。
とはいうものの、ここ最近は仏滅の方が凶日だとされることの方が多い。
だから、仏滅よりは悪い日といったところだろうか。
「ということで、今日は何もしないよ」
双子の姉、ちょうど高校2年生の井野嶽桜は、弟の幌にそう言って、ソファに座っていた。
「いつもしてないじゃんか」
「いつもじゃないよ。いつもは、テレビゲームとかブログとかネットサーフィンとかをしてるけど、今は幌のご飯待つだけだもん」
「いつもそんな感じじゃんか」
そう言いながらも、ビーフシチューのブラウンルーを作るために、鍋や小麦粉などを用意していた。
「まあまあ。それで、今日は何?」
「晩飯、山門達が来るんだろ。だったら、いいのを作らないとな」
「じゃあ、ゆっくり待ってるね」
桜は、テレビを付け、ゲームの準備をし始めた。
「しないんじゃなかったのか」
それを音で判断した幌が桜にすかさず聞く。
「それはそれ、これはこれ。日常生活を崩すつもりはないからね」
はっきりと、そういった桜に、幌はため息をついた。